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日本ビジネス中国語学会
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中国映画のコラム 第3回 .

 中国の映画館を楽しむ
井上 俊彦

   
   

■隆盛の中で映画館も変化

望京エリアの巨大シネコン「華誼兄弟影院望京店」ロビーの様子 中国では映画人気がとどまるところを知らない。2006年には30億元(2014年11月末時点で1元は約19円)に満たなかった全国年間興行収入が2010年に100億元を突破し、2014年には11月末時点で250億元を上回っており、最終的には280億元程度になると予想されている。昨今の3D人気もあって映画館で映画を見る楽しみが多くの人に理解され、市民の間にレジャーとしての映画鑑賞が定着してきたことが大きい。海外作品上映枠も拡大、今では年間34作の海外映画が公開され、全興行収入の半分近くを稼ぎ出す人気ぶりだ。一方、国内作品もバラエティーに富み、爆発的ヒットも生まれている。不振で上映本数も少なかった時代とは大きく様変わりしているのだ。それを受けて、映画館の観客層も広がり、受け入れる映画館の設備やサービスも改善されている。

 中国の映画館システムは基本的には日本と同じで、チケットカウンターでチケットを購入して各ホールで作品を見る形だ。チケット購入時には、モニターで席を指定する。料金は映画館や作品によって異なる場合があり、普通作品でおよそ70~90元、3D作品は120~140元だ。昨今の円安を考えずとも、大卒初任給が3100元程度(北京・2014年/趕集ネット調査)の社会にあって意外に高い。ただし、会員制度や共同購入、ネット予約サイトなどさまざまな割り引が利用でき、実際には半額程度で見られる。高齢者や軍人、学生割引のほか、地域の住民に鑑賞券が配布されることもある。

ロビーに置かれた各社のチケット発券機 こうした中で、スマホの普及に伴ってチケット購入スタイルに大きな変化が見られる。ここ数年人気だったネット共同購入に変わり、猫眼ネットや時光ネットといった割引付き予約システムが注目されているのだ。数年前には大ヒット作がある時期には映画館のロビーに長蛇の列ができ、チケットを買うために40分も並んだことがあるが、半年ほど前から長い列を見なくなった。ネットで予約し券売機で取り出すためだ。すでにチケット売上高の10~15%がネット予約になっており、2015年には3割にまで増えると予測するメディアもある。

 好調な映画産業にあって、映画館には問題もある。全国のスクリーン数は2006年には3000程度しかなかったが、現在は2万2000を数えるまでになっている。以前は大都市にしかなかった映画館だが、現在は副省都級以下の都市で次々に開業されている。そのぶん、1スクリーンごとの観客数や興行収入はむしろ低下している。零細な映画館も多く、全国の過半数の映画館が収入が年間200万元以下だという調査もあった。
  

■中国的特色多い上映方式

「博納国際影城朝陽門旗艦店」ロビーに掲示された上映中の作品ポスター 中国では日本のように「○○系で全国ロードショー」ということがなく、基本的にどの映画館でも同じ時期に同じ映画が見られる。また、映画館の売上の大部分をチケットが占めている。日本ではチケットとその他の売上が半々とも言われるが、こちらでは売店での売上は映画館全体の5~20%程度に過ぎないという。日本のような映画パンフレットも制作されていない。

 作品上映では、エンドロールの途中で客電がつき、観客がどんどん帰るのも日本との違い。出口には清掃スタッフが待っていて、帰らないと悪いような気がしてくる。上映される作品は、現在では国産映画でも字幕が基本になっている。一昔前までは、登場人物が地方の農民であろうが少数民族であろうがきれいな「普通話」(中国語標準語)で話すのが当たり前で、そのぶん字幕がないことが多かった。それが最近では、字幕なしは八一電影製作所などの一部作品でたまに見かける程度だ。字幕を前提に方言や民族特有の言葉が使われることも増え、リアリティーがアップしている。漢字と英語の2列の字幕が出るものも多い。

 上映前のコマーシャルは一般に日本より少なめ。人気シネコンでは15分ほどコマーシャルを流していることもあるが、小さな映画館ではまったくコマーシャルなしにいきなり「龍標」(公映許可を意味する竜のマーク)が登場するところもある。コマーシャルの内容は映画の予告以外に乗用車、化粧品、飲料水などが定番。ネットゲームの広告が多いところが現在の中国らしさか。一方、上映中のコマーシャルは多い。何のことかと思われるかもしれないが、実は最近の中国映画には「植入広告」(プロダクトプレースメント)が相当に多いのだ。ここにはネットのポータルサイト、ネットショッピングサイト、お見合いサイトなど、若者をターゲットにした広告が目立つ。
  

■変わる北京の映画館

 北京での生活も4年半、行ったことのある映画館は70カ所近くになった。実はこれでも市内にある映画館の半分強に過ぎない。人口2100万人強(2013年末)の都市に百数十の映画館があるわけだが、実はここ数年の間に開業したところがかなり多い。地下鉄の開業や延伸に合わせて郊外の駅近くにショッピングモールが誕生し、そこにシネコンが入居するというのが典型的な開業パターンだ。周辺にマンションを購入した中間層の家族をメーンターゲットにしている。

「華誼兄弟影院望京店」外観 北京で最大級のシネコンといえば五棵松の耀莱成龍国際影城で、17ホールで3500人収容可能という巨大さだ。東部の望京には華誼兄弟影城望京店のように20ホール(収容は2000人)を有するところもある。集客力のある映画館としてはこれらのほか、首都電影院(西単)、UME国際影城双井店(双井)と同華星店(人民大学)、万達電影城CBD店(永安里)のほか、郊外型の万達電影城石景山店(八宝山)、星美国際影城金源店(長春橋)、金逸国際電影城朝陽大悦城(青年路)などがある。これら人気シネコンに共通しているのは、顧客サービスに力を入れていることで、特に情報発信と会員制度が充実している。

大柵欄にある「大観楼影城」。入口には中国映画誕生の地を誇る額が 北京では、上海の国泰電影院黄浦劇場新衡山電影院などのように独立した建物の映画館らしい映画館がほとんどなく、劇場や音楽ホールとして建設されたところを除くと、歴史ある映画館でも今はみなビルのフロアーに入っている。ほとんどが3ホール以上を持つシネコン・スタイルになっており、それだけに突出した個性を持つ映画館は少ない。

 そんな中でも一つ取り上げるなら、前門の大柵欄にある大観楼電影院だろう。ここは1905年に中国初のストーリー映画(京劇俳優が『定軍山』を演じた)が上映された場所にある映画館。1階にある小型の第1ホールは独特で、古い映画館を模したインテリアに紅木(マホガニー)製の椅子と机が配置され、レトロな雰囲気が楽しめる。もう一つのオススメは首都空港に近い南影路にある中国電影博物館。ここは中国映画に関する見応えのある展示だけでなく、3つのホールで最新映画を見ることもできる。過去の名作上映もあり、料金も40元程度と一般の映画館よりかなり安い設定。さらに、UME華星店や百老匯電影中心当代MOMA店(東直門)は映画関係の書籍が充実した書店や、雰囲気のいい喫茶店が併設されており、熱心な映画ファンに支持されている。
  

■驚きの体験も数々
 
王府井にある「横店電影城」のチケットカウンター 映画館では、さまざまな驚きの体験をしてきた。最もがっかりさせられたのは、ネットの映画情報サイトでスケジュールを確認して出かけたのに、映画館に行ってみたら上映していなかったというもの。観客が自分1人ということも1度や2度ではない。上映開始時間に観客がゼロの場合は上映が取り消されるため、観客が少なそうな作品では遅刻はできない。逆に観客が多い時にも意外なことに遭遇する。ある有名シネコンで人気作品を見た際、満員のためか最前列に追加されたパイプ椅子に座らされたことがあった。また、人気の大型シネコンで鑑賞中に上映装置が故障して帰された(もちろん、チケットは払い戻されたが)こともある。

 一緒に見ている観客にも最初は驚かされた。思ったことをすぐに口に出す人が多く、オープニングで出演者の名前が出たら、普通に音読し始めたおじさんがいた。金融サスペンスを見ていて、専門用語が出るたびに隣の夫に解説を要求する奥さんがいた。改革開放初期の物語の中で給料の話が出てきたら、「当時、わしはいくらだった」と公開しているおじいさんがいた……。映画そっちのけでいちゃいちゃしているカップルなどは可愛いところだが、映画を見ないでずっと微信(中国版LINE)でチャットしている若者も見かける。まぶしく気になるが、注意する人はいない。一方、電話を受けて大声で延々と話す人はさすがに少なくなった。日本では映画は“静かに鑑賞”するものだが、こちらでは“存分に楽しむ”ものという感覚で、総じてにぎやかだ。それを不愉快に感じるか、それも含めての映画鑑賞と考えるかだろう。
 

■効率的鑑賞のヒント

 さて、そうした経験から得た、こちらでの映画鑑賞について役立ちそうな情報をとりまとめてみたい。まず、会員制度やネット割引が使いにくい外国人旅行者でも、多くの映画館で採用されている火曜日半額や午前中半額のサービスを利用することで安く見られる。そして、複数の映画を効率よく見たい旅行者にとって、映画館が集中するエリアを知っておくことは、突然の変更や満員といったリスクへの対応も含めて役立つと思われる。まずは王府井。王府井百貨店8階の横店影視電影城、新東安市場6階の百老匯影城apm店、東方新天地の百老匯影城東方広場店、少し離れるが金宝街の百麗宮電影院と、いずれも一定の規模を持つ清潔なシネコンが集まっている。もう一つは、地下鉄東大橋駅からの徒歩圏内。駅前には伝統を誇る紫光電影院があり、世界城には設備の整った星美国際影城世界城店、新しいショッピングセンター芳草地には高級感ある廬米埃国際電影城、朝陽門方向に行くと悠唐広場に規模の大きい博納国際影城朝陽門旗艦店と、個性豊かなシネコンが集まっている。市内バス停の広告で最も多いのが映画の予告

 注意したいのは公開期間。大ヒットの作品になると2カ月くらい上映されることもあるが、普通は1カ月程度。客の入らないものは容赦なく下ろされるため、公開数日で1、2館を残して上映されていないことも珍しくない。こうした作品は「一日遊(デートリップ)電影」などと呼ばれる。1年間で上映許可を得る作品が600本前後もあるため、こうしたことも起こってくるわけだ。「公開からそんなに経過していないから見られるだろう」と高をくくっていると、次の作品に切り替わっていることはよくある。まだ上映中だとしても、市の中心から遠い映画館数館で、しかも午前中や夜9時台のみの上映になっている場合が多い。大ヒットしそうもないが興味のある作品は、上映されたその週末に朝から出かけまとめ見するというのが、最近の私の鑑賞パターンになっている。

 というわけで、北京を中心に中国の基本的な映画館事情を紹介した。中国映画をDVDではなく中国の映画館で見る楽しみを知っていただければと思う。

(いのうえ・としひこ 記者)

   
 
   
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