中国・本の情報館~東方書店~
サイト内検索
カートを見る
ログイン ヘルプ お問い合わせ
トップページ 輸入書 国内書 輸入雑誌  
本を探す 検索 ≫詳細検索
東方書店楽天市場店「東方書店plus」
楽天市場店 東方書店plus
 
各種SNS
X東方書店東方書店
X東京店東京店
X楽天市場店楽天市場店
Instagram東方書店東方書店
Facebook東京店東京店
 
Knowledge Worker
個人向け電子書籍販売
 
BOOK TOWN じんぼう
神保町の書店在庫を横断検索
 
日本ビジネス中国語学会
bei_title  
 
 
 
   
中国映画のコラム 第2回 .

 ここがみどころ! 2014東京・中国映画週間
加藤 浩志

   
   

  今年も映画祭の秋がやってきた。東京国際映画祭(10月23日~31日)、東京フィルメックス(11月22日~30日)の二大映画祭、近隣では釜山国際映画祭(10月2日~11日)、ハワイ国際映画祭(10月30日~11月9日、11月13日~16日)、台北金馬国際影展(11月6日~27日)と、映画ファンにはまさに席の暖まる暇もない。こうした映画祭の陰で、いささかひっそりと、しかし毎年開催されていて、中国映画ファンには重要なイベントが中国映画週間である。
  中国映画週間では10本前後の最新作あるいは近作が上映され、そのラインナップは雑多な感じはするものの、中国映画のいまを如実に表していると言えよう。
  これまでの上映作品で言えば、オールスター出演の大作映画『建国大業』(09年)や『赤い星の生まれ(原題:建党偉業)』(11年)、ピーター・チャン監督が北京の青年達の夢と挫折を描いた『アメリカン・ドリーム・イン・チャイナ(原題:中国合夥人)』(13年)、深夜のコンビニを舞台にしたスラップスティックコメディ『ワンナイト・イン・スーパーマーケット(原題:夜店)』(09年)などなど、中国国内で話題になりながら、日本では眼にする機会のない作品が多い。(……といいながら、すでに上映・公開された作品もときどき混ざったりしているのだが……)

ジャッジ・アーチャー
ジャッジ・アーチャー
  さて、今年も、昨年から今年にかけて中国で公開・製作された作品10本が上映される。今回も実にバラエティに富んだラインナップとなっている。
  ここではその見所を紹介しよう。
 
  今回、メイン作品として選ばれたのは、徐皓峰監督①『ジャッジ・アーチャー〔箭士柳白猿〕』(14年)。作家でもあり、武術家でもある(今野敏先生みたい)監督の、『ソード・アイデンティティ〔倭寇的踪迹〕』(12年)に続く2作目。中国国内での公開は今年だが、すでに海外の映画祭に出品されており、日本でも、昨年の京都ヒストリカ国際映画祭で上映された。時は民国初期、武林の揉め事仲裁人として名を馳せた弓の達人・劉白猿が、軍閥の抗争に巻き込まれていく。江湖のルールが失われていく時代、己を通そうとする最後の俠客たちを描く作品だ。
ブラザーフッド-繍春刀-
ブラザーフッド-繍春刀-
徐皓峰は、王家衛監督の『グランド・マスター〔一代宗師〕』(12年)にも脚本家として参加、見事香港電影金像奨脚本賞を射止めた。今作も、色調を抑えた画面作りや、リアルで静謐な闘いなど、『グランド・マスター』に通じるものが感じられる。
  武俠アクションはもう1作ある。それが、おなじみ明代の秘密警察・錦衣衛を主人公とした路陽監督②『ブラザーフッド-繍春刀-』(14年)である。視覚障害者のための映画館を開く老館主を主人公としたヒューマンドラマ『盲人電影院』(10年)でデビューした路陽監督が、長年暖めてきた時代劇。崇禎帝の命を受け、悪徳宦官討伐に乗り出した錦衣衛の義兄弟3人。無事宦官を討ち果たすものの、大きな陰謀に巻き込まれていく……。主演は、楊徳昌監督『牯嶺街少年殺人事件』(1991年)でデビューした台湾の張震と、ヒロインに大ヒットテレビドラマ『宮廷女官若曦』の劉詩詩。さらに強大な権力を握る宦官に、台湾で舞台劇『最後14堂星期二的課(モリー先生との火曜日)』が目下ロングラン中の金士傑(前述の『盲人電影院』主演も彼だった)。
ソング・オブ・フェニックス
ソング・オブ・フェニックス
これまで胡金銓監督、徐克監督はじめ非常に多くの傑作ひしめく錦衣衛モノだけに、中国の若き監督の健闘に注目したい。
  今年3月、75歳で急逝した呉天明監督の遺作③『ソング・オブ・フェニックス〔百鳥朝鳳〕』(13年)も注目作だ。呉天明監督といえば、文化大革命以降の80年代を支えた重要な監督のひとりであると同時に、1983年から89年まで西安電影製片廠廠長を務め、内部改革を断行、若手監督の映画を次々世に送り出した、言わば第五世代の育ての親である。本作の主人公は、嗩吶(チャルメラ)吹きの老芸人(演ずるは名優・陶澤如!)とその弟子。伝統芸能映画は呉天明監督の得意分野なだけに(『変臉 この櫂に手をそえて』には泣かされた!)、大いに期待できるところだ。
黄河に唄うアリア
黄河に唄うアリア
  その呉天明監督に師事し、西北映画の継承者と目されているのが高峰監督だ。④『黄河に唄うアリア〔老腔〕』は、陝西省に古くから伝わる「皮影戯(影絵劇)」が題材である。黄河のほとりで拾われた赤子が、皮影戯の魅力にとりつかれ、やがて劇団を継ぐまでになっていく。しかし、彼には出生の秘密があった……。戯迷の人は、タイトルにもなった老腔をたっぷりと聞かせてくれることを期待しよう。
  新疆ウイグル自治区を舞台の、実話を元にした感動作が⑤『真愛』(14年)である。新疆で6つの民族の19人の子供を育てあげ、先頃「十人の傑出した母親」や「感動中国人物」、全国道徳模範等に選出されたアニパ・アリマホン氏を主人公とするヒューマンドラマ。というといかにもプロパガンダ映画くさいが、ウイグル族のシアザティ・ヤホフ監督は、アルタイ山脈にほど近い新疆の自然や事物を織り込みながら、心暖まる作品に仕上げている。同時に、文化大革命中の事物(ソビエトの革命詩や民族語で書かれたスローガン、毛沢東が推奨したラジオ体操等々)を織り込んだり、漢族との距離を暗示したりと、批判的精神をなにげなく忍ばせている。全篇に流れるカザフ族歌手タシケンやバグダディの、郷愁に満ち、また憂いを含んだ歌声も胸に迫るものがある。
真愛
真愛

  同じ新疆を舞台にした作品が、『クレイジー・ストーン 翡翠狂騒曲〔瘋狂的石頭〕』で一挙に有名になった寧浩監督によるロードムーヴィー⑥『無人区』(13年)である。都会の有名な弁護士が、野生動物密猟犯の弁護に西部に赴く。裁判には勝訴したものの、密猟団と費用をめぐってもめごととなり、ボスの車を取り上げて帰る道すがら、さらなるトラブルが次々に弁護士を襲う……実はこの作品、09年にはクランクアップしており、その年末に公開予定されていたが、審査を通らず、その後も幾度か公開情報は流れたものの、結局公開までに4年が経過した。「悪人ばかりで英雄が出てこない」「監督は芸術家の社会的責任を失っている」といった批判があったらしい。ただ、09年といったらウルムチで大規模な争乱が起きた年であり(ロケ終了後まもなくのことであった)、そうした状況下で、このような「反社会的」題材の映画が上映されるのは好ましくないと考えられたのではなかろうか。
無人区
無人区
4年にわたる「宣伝」が効いたのか、本作は中国で公開されるとたちまち大ヒットを記録した。主演は、筆者はテレビドラマ『春光燦爛猪八戒』の猪八戒役が印象深いのだが、やはり『帰省男、辛いよ〔人在囧途〕』(10年)、『ロスト・イン・タイランド〔人再囧途之泰囧〕』(12年)が記憶に新しい徐峥、周星馳監督の感涙作『西遊記 はじまりのはじまり〔西遊 降魔篇〕』公開が迫っているおなじみ黄渤、陸川監督『ココシリ〔可可西里〕』(04年)では密猟パトロール隊長だったのに今回は密猟団ボスの多布杰、そしてヒロインに『トゥヤーの結婚』(06年)『スピードレーサー』(08年)の余男。
  さて、一番の問題作が⑦『藍い骨〔藍色骨頭〕』(14年)である。何しろ監督はあの崔健! 『新長征路上的揺滾』『一無所有』『不是我不明白』『最後一槍』『一塊紅布』『紅旗下的蛋』(タイトル書いてるときりがない……)等の名曲で知られるロックスター、崔健の初監督作品なのである(と書いたけれど、その前に陳果と共同監督した『成都,我愛你』(09年)があった)。
藍い骨
藍い骨
崔健と映画というと、張元監督『北京バスターズ〔北京雑種〕』(1993年)で北京の街を漂流するロック歌手の役が印象的だったが、兪鐘監督の“催涙弾”映画『再見のあとで〔我的兄弟姐妹〕』(01年)では子供思いの物静かな音楽教師という役で、崔健がこんな映画に出るなんて、と観客を驚かせた。姜文監督の『陽もまた昇る〔太陽常在升起〕』(07年)での怪しげな役も忘れがたい。というわけで、映画には以前から深く関わってきた崔健、今回は本格長篇作品である。予告編を見た限りでは、現代と文化大革命の時代を繋ぐ、ロックンロールを愛する若者たちの物語。映像が素晴らしい、と思ったら、撮影はクリストファー・ドイル! 天に舞う青い凧の映像があるのだが、もちろんこれは田壮壮監督『青い凧〔藍風箏〕』(1993年)のオマージュに違いない。崔健自身も来日、舞台挨拶もあるという。大いに期待したい。
  このほか、昨年の『アメリカン・ドリーム・イン・チャイナ』の主人公のひとりを演じた鄧超が監督・主演したラブコメ⑧『失恋の達人~上手に愛を手放す方法〔分手大師〕』(兪白眉と共同監督、14年)、
失恋の達人~上手に愛を手放す方法  息もできないほど  北京ファミリーへようこそ 
失恋の達人~上手に愛を手放す方法 息もできないほど 北京ファミリーへようこそ
李蔚然監督のラブストーリー⑨『息もできないほど〔我想和你好好的〕』(13年)、徐帆、孫紅雷ら実力派俳優が集結、娘の英語教育のため外国人をホームステイさせた一家を描く爆笑喜劇⑩『北京ファミリーへようこそ〔洋妞到我家〕』(陳剛監督、14年)など、今年の中国映画週間はかなりの粒ぞろいになっている。ゲスト来場の回もあるので、足を運んでみてはいかがだろうか。ちなみに今年の会場は品川プリンスシネマ。席数があまり多くないので、ぜひお早めに。

  >>> 2014東京・中国映画週間公式WEBサイト  http://cjiff.net/index.html
 
  なお、同時期開催の東京国際映画祭でもっとも注目している作品は、許鞍華監督の『黄金時代』。香港でつい先週公開されたばかりのほやほやの新作である。『呼蘭河伝』『生死場』などで知られる女性作家・蕭紅の生涯を、3時間近くの長尺で描く。演ずるは、アン・リー監督『ラスト、コーション』の湯唯。彼女をめぐる二人の男、蕭軍にテレビドラマ『蘭陵王』の馮紹峰、端木蕻良にテレビドラマ『孫子兵法』の朱亜文というイケメン対決。さらに、魯迅(王志文)のほか、丁玲、駱賓基、白朗、梅志(胡風の妻)、舒群と、そうそうたる顔ぶれが並ぶ一大中国現代文学絵巻になっている。湯唯のお下げを含め、期待が膨らむところだ。ところで、『山の郵便配達』で知られる霍建起監督にも『蕭紅』(12年)があるが、見比べて見るのも一興だろう。

(かとう・ひろし 編集者)

   
 
   
  b_u_yajirusi
 
 
     
 
中国・本の情報館~東方書店 東方書店トップページへ
会社案内 - ご注文の方法 - ユーザ規約 - 個人情報について - 著作権について