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東京便り―中国図書情報 第38回 .

 中国人に広がる“漢字健忘症”にマッタ!
  「漢字デー」創設の声上がる――中国図書関連ニュース

   
   

インターネット時代のいま、パソコンやスマートホン(スマホ)の普及によって、漢字の国・中国の人々の間でうっかり漢字を忘れたり、漢字が書けなくなったりする“失書症”“漢字健忘症”を自覚する人が増えている。

今年3月に北京で開かれた中国の政策決定の重要会議「両会」(国会に相当する全国人民代表大会=全人代と、国政助言機関の中国人民政治協商会議=政協)でも、多くの代表や委員から、これに「マッタ」をかけようとするさまざまな提言があった。
なかには「国家レベルの『漢字節』(漢字デー)創設を」、また「全国各地に漢字文化教育センターの設立を」などという斬新なアイデアもあった。裏を返せば、中国の人々とりわけ若者たちの間で、漢字健忘症の進行が危機的状況にあるらしいのだ――。
  

   
 

■「文字を書くのはまれ」が42%

そもそも中国人の漢字健忘症は、パソコンやスマホが普及し出した何年も前から問題視されていた。
パソコンのキーボードか、またはスマホの文字盤に「拼音」(ピンイン、中国語のローマ字表記)を打ち込むことで簡単に文字入力ができるようになり、「文字(漢字)を書くことが、多くの人の弱点になってしまった」(中国新聞網)のである。若者たちの間では「キーボードへの打ち込みが速ければ速いほど、文字を書くのが遅くなる」(同)という“箴言”がはやるほどだ。

中国の大手ポータルサイト・新浪網が運営するミニブログ「新浪微博」(中国版ツイッター、ウェイボー)の調査によれば、調査対象の規模や背景などの詳細は定かではないが、「ネットユーザーの約30%が『執筆しようとして文字を忘れたことがある』、約42%が『文字を書くことはたまにしかない』と答えたという。
なかには「学校を卒業して10年になるが、この間、一度も筆やペンを持ったことがない」という漢字の国にあるまじき(!?)ツワモノまでいた。

ちなみに漢字大国だけに、中国の人々には覚えなければならない漢字が多い、という苦労もある。
日本の常用漢字は2136字(2010年)だが、中国の常用漢字である「通用規範漢字」は8105字(2013年)だ。うち中国では、小中学校の基礎教育に必要な漢字だけでも3500字とされているので、小さいころからいかに膨大な数の漢字を覚えなければならないか、わかろうというものだ。その大変さには同情すら覚えるし、「漢字を忘れる」のも仕方がないか、とも思えてくる。

  

■漢字健忘症の実態伝える歌も

漢字健忘症が疑われる症状も、ネット上を検索すれば、いろいろなレベルがあることがわかる。

○ 多くの学生たちが、「针灸」(針灸)の「」字の「久」を、「夕」と書き間違える
○「锻炼」(鍛錬)の「」(煉)の字を、「」(練)と書き間違える
……という一部書き間違えのレベルから、
○「龋齿」(虫歯)、「尴尬」(気まずい)などの複雑な漢字が全く書けない
……といった全滅レベルまで、症状はさまざま。

そのため学生の作文が誤字だらけになるばかりか、書けない漢字をピンインで書こうとするため、わかりづらく見苦しい作文になってしまう。

ネット上では、漢字健忘症の実態を伝える動画とともに、こんなユーモラスなオリジナルソングまで流れている。
「文字を忘れる、どうしよう……
文字が書けずに、脳が退化している……
文化の危機を救い、漢字の精粋を伝承しよう」
――土豆網「提笔忘字」より( http://www.tudou.com/programs/view/GsCXFE4PRIc/ )

中国のインターネット人口は2016年12月時点で7億3100万人、ネット普及率は53.2%。世界第2位のインド(約4億人)を大幅に上回り、世界最大のネット大国となっている(中国インターネット情報センター:CNNIC)。
さらに同時点で、スマホなどのモバイル端末でネットを利用する人は6億9500万人で、前年比7550万人(5ポイント)増。ネットユーザー全体の95.1%を占めている。
またネットユーザーの職業別では、学生が25%と最も多い。
そこからわかるのは、ネットユーザーのほとんどがスマホを使ってネット接続を楽しむ、デジタル世代の若者たちであることだ。それだけにスマホに慣れれば慣れるほど漢字健忘症になりやすいと、危機を唱える声が高まっているのだろう。

  

■漢字の美しさと知識を学んで

こうしたなか、今年3月の全国政協で「国家レベルの『漢字節』を創設し、各地に漢字文化教育センターの設立を」と訴えたのが、同政協委員で中国書法家協会顧問でもある言恭達氏だ。
「パソコンやスマホへの依存症により、ネット上には粗野な表現のネットスラングが出回るばかりか、人々の漢字健忘症が深刻化している。漢字節やセンターの創設により、漢字の美しさや漢字についての知識を学ぶ、中国文化の精神的なとりでを築きたい」(成都商報)

同様に「全国漢字書写日」(漢字を書く日)の創設を提言したのが、全国政協委員で中国書法家協会主席の蘇士澍氏だ。
2016年に調査グループで中国各地の100カ所以上におよぶ学校を訪れて驚いたのは、書道教育のアンバランスと書道教師の不足という教育現場の深刻な現状だった。13億の人口大国でもあり、受験競争が過酷な中国では、書道教育をほとんど行わない学校もあるようなのだ。
「私たちは日常的に、漢字を書く機会を増やさなければなりません。教師の養成に力を入れて、書道教育を充実させたい。社会全体でムードを盛り上げるためにも『全国漢字書写日』を創設したい」(同)

全人代代表で中国美術学院(大学)院長の許江氏は、毎年9月に新入生が入学すると、1人ひとりに書道の手本とされる『真草千字文』(隋代の智永が真書〈楷書〉と草書の2つの書体で書いたもの)と毛筆2本、書道用紙をプレゼントして「中国文化の精神を伝えている」(中国新聞網)という。

また「中国のいまの子どもたちは、漢字を“形”としてではなくアルファベットとして覚えている」と危機感を募らせる陳振濂氏(全人代代表、中国書法家協会副主席)は、「小学校の国語の授業では、まずは1、2年生に漢字の書き方を教え、3、4年生に初めてピンインを教えるべき。そうやって、子どもたちは漢字の書き方をキッカケとして、中国伝統文化の大きな扉を開くのだ」(同)と主張する。

漢字を忘れることがあるのは、同じ漢字文化圏にいる日本人でも同じだ。しかし、漢字を主たる表記文字とする中国で“書き方”を忘れてしまえば、確かに大きな問題だろう。

近い将来、中国に「漢字文化デー」が設けられるかどうか? 漢字健忘症という“現代病”への先進的な取り組みを、日本人としても静かに見守りたいところである。


  

モバイル読書の主力世代、「90後」以下の青少年層に――中国図書関連ニュース

中国のモバイル読書を牽引するのが、現在26歳以下の青少年層で、彼らがユーザー全体の7割以上を占める――。

中国人の読書スタイルについて、スマホなどのモバイル端末を利用する世代が、ますます若年化している傾向がこのほど、中国の電子書籍事業大手「閲文集団」(China Reading Limited)が発表したレポートで、明らかになった(中国新聞網)。

振り返れば、前年同時期に発表されたレポートでは、モバイル読書の主力世代として「8~25歳までの青少年層がユーザー全体の63%を占める」(電子書籍事業大手「掌閲社」)とされていた。調査機関や分析方法の違いはあるだろうが、ざっと比べてみても、モバイル読書に親しむ若年層の割合が年々増えていることがうかがえる。
※ 参照:東京便り26「モバイル読書スタイルをリードする青少年層」

ちなみに、ここで「現在26歳以下」と限定しているのは、それが中国で「90後」(ジュウリンホウ、1990年代生まれ)といわれる今年18~27歳になる若い世代と、それ以下の青少年世代にあたるからだ。中国ではジェネレーションの特性などに言及する際に、しばしば「90後」「80後」(パーリンホウ、80年代生まれ)、そして「00後」(リンリンホウ、2000年代生まれ)などとして区分している。

レポートを発表した「閲文集団」は、中国のインターネットサービス大手「騰訊」(テンセント)の傘下にある電子書籍事業の子会社。
「世界最大の中国語の正規版デジタル図書館」を標榜し、約1000万タイトルを所蔵、ユーザーは約6億人を数えるという。

それによれば「90後」ユーザーの読書量は、1人あたり年13冊(2016年)。「80後」の読書量を大幅に上回っており、その理由として「社会の中堅層となった“80後”に比べ、(学生世代の)“90後”は時間的に余裕があるから」(同レポート)だと見られている。
さらに「モバイル読書アプリの使用頻度もニーズも高く、モバイル読書推進の原動力になるだろう」と「90後」にかける期待は、他の世代よりもはるかに大きい。

2016年に、有料ユーザーのうち「90後」は43%で、平均支出は80元(1元は約17円)。世代別では、その割合も支払額ももっとも高かったという。

これについてレポートは、中国の「90後」は「物質的、精神的に恵まれた環境に育ち、“リアルタイム消費力”に秀でている」と、ここでもデジタル読書産業をリードする中心的存在であると強調。
ユーザーの変化とともにネット作家の若年化も進んでおり、「閲文集団」が抱える作家は25歳以下が42.6%を占めている。ネット作家の世界では、「90後」がすでに中堅のリーダー格になっていると分析している。

 
 

 
     

 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。北京に約13年間滞在し、2013年に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)、
『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)などがある。

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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