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東京便り―中国図書情報 第26回 .

 

モバイル読書スタイルをリードする青少年層――
中国の「2015年掌閲モバイル閲覧レポート」が公開
     



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モバイル読書スタイルをリードする青少年層――
中国の「2015年掌閲モバイル閲覧レポート」が公開

中国政府系機関の中国インターネット情報センター(CNNIC)がこのほど明らかにしたところによると、中国のネット利用者は昨年末時点で6億8800万人に達し、中国人の約半数がネットユーザーになったことがわかった。
年間で3900万人の増加で、ネット普及率は50.3%。このうち携帯電話でネットを使っている人は9割の6億2000万人に上るという。

もはや中国人のライフスタイルにネットは切り離せないものになっているが、そうしたなかで、彼らの読書スタイルも紙メディアから電子メディアに移りつつある。
2015年に発表された2014年統計によれば、紙メディアによる読書率が58.0%(前年比0.2ポイント増)だったのに対し、電子メディアによる読書(閲覧)率は58.1%(同8.0ポイント増)だった。そのころがちょうど紙から電子へ、中国人の読書スタイルが逆転した時期になったと見られている(中国の「第12次全国国民閲読調査」より。2015年「東京便り18」参照)。

さらに2015年は、中国メディアが「モバイル読書が活況を呈した」(捜狐ニュース)と評している通り、電子メディアによる読書――携帯電話やスマートフォン、電子書籍リーダーなどのモバイルを利用した読書――がいっそう普及した年となったようだ。

では、中国の人々はモバイルを使って、どんな読書をしているのか? モバイル読書を楽しむのはどのような世代で、どんなジャンルが好まれるのか?

 そんな素朴な疑問に答える報告が、このほど中国で明らかになった。
中国の電子書籍事業最大手である掌閲科技股份有限公司(本社・北京、以下「掌閲社」と略)が公開した「2015年掌閲移動閲読報告(モバイル閲覧レポート)」である。

それによると、電子書籍業界で国内トップの約5億人のユーザーをほこる掌閲社が2015年のユーザー解析をしたところ、モバイル読書の主力世代は「90後」(1990年代生まれ)と「00後」(2000年代生まれ)。
とくに8~25歳までの青少年層がユーザー全体の63%を占めることがわかったという。

>>データ集

     
     
     

 

■ モバイル読書量は1人あたり年12冊と急増

掌閲社は2008年に創立し、電子書籍リーダーの人気ブランド「掌閲iReader」をはじめ、電子書籍ストア「掌閲書城」、アプリ・ツールなどを展開する電子書籍事業では中国最大手の会社。
電子書籍(書籍・雑誌・漫画など)のデジタル版権を45万冊分持ち、業界では国内トップの約5億人のユーザーをほこる。「手機看書 用掌閲」(ケータイで読書するなら掌閲)という印象的なキャッチフレーズでも知られている。

その掌閲社の「2015年掌閲モバイル閲覧レポート」は、同社データマイニングセンターの統計分析によるもの。
それによると、2015年の同社アクティブユーザーの読書量は1人あたり12冊。前年の8冊を大きく上回り、モバイル利用の電子書籍の読書量が急増していることがわかった。

ちなみに中国の国家レベルの研究機関、中国新聞出版研究院(北京)が行った、前述の「第12次全国国民閲読調査」によれば、2014年の中国人の図書(紙メディア)の読書量は1人あたり4.56冊(前年比0.21冊減)、電子書籍の読書量は3.22冊(0.74冊増)。
統計機関と統計年度が異なるが、いずれも近年、中国人のデジタル読書量が確実に増えていることを裏付けている。

また『国際出版青書』の統計によれば、近年、中国人の図書の読書量は1人あたり年4冊台を推移し、韓国(11冊)、フランス(8.4冊)、日本(8.4~8.5冊)、アメリカ(7冊)に比べて大きく下回ることが示されていたが、そこに電子書籍を加えれば、読書量もぐんと上がる。今後は、電子書籍を加えた読書量の国際比較も待たれるところだ。

 

 

■ 「90後」が仕事のスキル、「00後」が漫画などに関心

モバイル読書の主力世代は「90後」と「00後」。なかでも8~25歳までの青少年層がユーザー全体の63%を占めたことは前述した通りだ。彼らが中国人のモバイル読書スタイルをリードしているといえるだろう。

  では、その青少年層にどんな書籍がよく読まれたのか? (以下、外国書籍の翻訳版を含め、中国語題を表記)
レポートによれば「90後」(今年17~26歳)に好まれたのは、米スタンフォード大学起業講義録の『従0到1:開啓商業与未来的秘密』(日本語題『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』)、ビッグデータの謎と未来に大胆に迫る世界的ベストセラー『大数据時代』(日本語題『ビッグデータの正体』)、そしてアメリカの刑務所内の囚人が行っているトレーニングメソッド『囚徒健身』(囚人コンディショニング=日本未訳)などだった。
これに対して中国メディアは「90後は社会人になったばかり。インターネットや仕事のスキル、時事問題に関する知識欲が高いほか、余暇に楽しむスポーツや健康面にも気を配っている」(捜狐ニュース)と分析している。

 一方、「00後」(今年7~16歳)は小中学生、高校生。この世代に人気の書籍が、長編歴史テレビドラマの原作であり同名小説の『大秦帝国』、アメリカの作家マリオ・プーゾの小説で、それを原作とした映画でも知られる『教父』(『ゴッドファーザー』)、そして中国で大人気の学園ギャグ漫画でアニメ化もされた『阿衰online』など。
勉強につながるということなのか、歴史物のほか、ベストセラーやネット小説、漫画作品が多くダウンロードされたようだ。

このほか1人あたりの消費額で見ると、当然のことだろうが、世代別では開きがあった。電子書籍の購読では、中高年層(40~70歳)の4割が年100元(1元は約17円)以上を消費していたが、青少年層(15~18歳)は年50元以下が82%と、ほとんどの割合を占めた。親からの小遣いでやりくりする多くの子どもたちには、致し方ないことだろう。
それに対して「金持ち」層は40代で、年間500元以上を消費する人も10%に上っていた。

また2015年はライフスタイルの多元化に拍車がかかり、ユーザーの多くに「夜更かしする」傾向が見られたという。
電子書籍を読む時間帯は、午後8時~午前0時がもっとも多く32%。深夜の午前0~5時にも7%が読書していた。手軽なモバイル読書にはまり、ついつい夜更かしをしてしまうのもわからないでもないが……。「静かな夜更けは読書にぴったりの時間帯だが、健康のため早く休もう」と中国メディアは呼びかけている。

 

     

 

■ 男女の好みの違いと地域性も明らかに

レポートではまた、男女の好みの違いと地域性にも一定の傾向があったことが示された。
男子学生によく読まれたジャンルが、冒険アクション・ファンタジー小説。
ネット連載の人気“仙侠”小説(仙人や神、妖魔などが登場する神秘的な武侠小説)で、杜燦著の『逆天仙尊』、武道を極める若い鋳剣家を描いたネット小説で、携帯ゲーム化された独悠著『武器大師』などの作品が人気を集めた。

女子学生によく読まれたジャンルは、恋愛小説。
大学時代の初恋から7年後の大人の恋までを描く長編純愛ラブストーリーで、テレビドラマ化、映画化された顧漫著の『何以笙簫黙』、五代十国時代の中国を舞台にした“仙侠”純愛ラブストーリーで、テレビドラマ化されたfresh果果著『花千骨』などの作品が好まれたようだ。

 地域性の違いでは、中国南部の広東省のユーザーがフランスの経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀資本論』(日本語題『21世紀の資本論』)などビジネス書に関心が高かったのに対し、北部の黒竜江省ハルビン市のユーザーは2015年第73回ヒューゴー賞を受賞した劉慈欣のSF小説『三体』や、アンディ・ウィアーの小説で、これを原作として2015年にアメリカでマット・デイモン主演で映画化された『火星救援』(原題:『火星の人』)といったSF物に傾倒。
急速に発展する沿海地方に比べて、生活リズムがゆったりしているといわれる内陸の重慶市のユーザーは東野圭吾のベストセラー『解憂雑貨店』(原題『ナミヤ雑貨店の奇蹟』)など、生活・趣味ジャンルに魅力を感じていることがわかった。

このほか掌閲社にはパブリックドメインの著作物が110冊あり、ダウンロード数は累計2500万回。
『孫子兵法』『論語』『道徳経』『山海経』『百家姓』『心経』『聊斎志異』『中庸』『紅楼夢』『大学』などの古典名著が、ユーザーによく読まれていることが明らかになった。

モバイル読書の解析からうかがえる、今どきの中国人の読書スタイル。今後、どう変わっていくのか、そこから見えることは何か――。これからも注視したい。

     
     
 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。北京に約13年間滞在し、2013年に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)、 『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)などがある。

Blog: http://pekin-media.jugem.jp/

     

 

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