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日本ビジネス中国語学会
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東京便り―中国図書情報 第11回 .

 標準中国語辞典『現代漢語規範詞典』第3版がお目見え
   「微信」「正能量」など新語100語余りが追加される

   
   

新語を100余語を追加した『現代漢語規範詞典』「規範性」「権威性」「実用性」をテーマに掲げた、現代中国語の標準辞典『現代漢語規範詞典』(外語教学与研究出版社)の改訂第3版がこのほど、中国で発売された。
昨年、国務院(政府)に認可され、公表された常用規範漢字のリスト『通用規範漢字表』を国内で初めて全面的に導入した中型中国語辞典だ。

同漢字表から、人名・地名・科学技術名詞などに使われる漢字約400字を追加したほか、「微信」(ウェイシン、WeChat、中国で人気のチャットアプリ)、「正能量」(プラスエネルギー、ポジティブエネルギー)といった時代を表す新語・流行語100語余りを新たに収録。
その狙いは、「辞典をメディアとして(国が定めた)標準中国語の普及を促進させる」ことだという。

※ ご参照: 「東京便り」(第1回)――「中国の常用漢字表『通用規範漢字表』が公開 計8105字に増加」
  http://www.toho-shoten.co.jp/beijing/t201309.html

   
 

■漢字400字、新語100語を追加

このたび刊行された『現代漢語規範詞典』第3版『現代漢語規範詞典』は、2004年の初版刊行が累計200万部に及んだというベストセラー辞書。
中国を代表する言語学者の1人、李行健氏(教育部国家語言文字工作委員会・諮詢委員)を主編に迎えて制作され、「全国優秀暢銷工具(ベストセラー・ツール)書賞」をはじめとする数々の賞を受賞。伝統ある『現代漢語詞典』(商務印書館)と並ぶ定番辞書として、その評価を短期間で確立している。

本書は、2010年の第2版を経て、約4年ぶりとなる改訂版。
中国政府が2013年に認定し、「(出版印刷、辞書編纂、情報処理など)社会一般で使われる漢字はこれを基準とすること」と通達した『通用規範漢字表』を全面的に導入したことが、その大きな特徴だ。

第2版までは「地名・国名・人名・機関名などの固有名詞は、原則として未収録」であったのに対し、第3版では『通用規範漢字表』の導入により、人名・地名・科学技術名詞などに使われる漢字約400字を追加。
また、同漢字表に即して、繁体字、異体字の増減や、異体字の字形・筆順の変更など、約300カ所に及ぶ調整が行われた。
さらに、時代を表す新語・流行語100語余りが新たに収録されている。

トータルでは、親文字約1万2000字(繁体字・異体字含む)、見出し語約7万2000語、例文約8万例に及び、『現代漢語詞典』(見出し語約6万9000語)を上回る語数を収録。
学習者が誤用・混同しやすい用法・語義・字音・字形などを整理した「小手提示」(注意参照)を約5500項目設けていることも本書の特徴の1つで、小中高校生をはじめ、教師、一般読者らの学習や教育の役に立つ、実用的かつスタンダードな中国語辞典となっている。
  

■時代を反映した「失联」「正能量」「吐槽」など
 
前述した通り、改訂版の目玉の1つが、時代を表す新語・流行語100語余りを新たに収録したことだ。
追加された新語をいくつか見てみると――(語義は本書などを参考に、筆者が整理)。

微信……ウェイシン、WeChat、中国で人気のチャットアプリ(ユーザーは6億超、アクティブユーザーは約4億3800万といわれる)。

失联……「失去联系,失去联络」(連絡を失う)の省略形。もとは台湾地域のみの常用語。先ごろ発生した「马航失联事件」(マレーシア航空機失踪事件)により、この言葉が中国大陸の新名詞となった。

正能量……「积极的能量、正向能量」(ポジティブエネルギー、プラスエネルギー)。

吐槽……突っ込む。突っ込むこと。もとになったのは日本語の「ツッコミ」で、台湾での流行語から大陸に流入した。ネット流行語の1つ。

拍砖……「砖」とはレンガのこと。それを武器として攻撃する(拍砖)ことから、「反論する、反対意見を出す」という意味に。ネット流行語の1つ。

接地气……大衆に受け入れられる。本来の意味は、大地の力を吸収すること。そこから転じて、大衆に受け入れられること(人)を指すように。ネット流行語の1つ。

细颗粒物……微小粒子状物質、PM2.5のこと。

――などがある。採用されたのは、いずれも社会・経済・文化・科学技術・インターネットといった各分野にわたる、時代を反映した新語・流行語だ。

「土豪」の意味にも変化が…このほか、一部語句に新しい語義や用法が加えられたほか、語義はより正確なものへと変更された。
たとえば、「土豪」はもともと「旧時の地方ボス、農村でカネと勢力を持つ悪徳地主」という語義が配されていた。しかし近年は、ネット上で新しい意味が加わり広まったため、その新釈である「金持ちにして、文化と正しい価値観に欠ける人」(≒田舎の成金)という一文が加えられた。

また「网购」は「ネットショッピング」という単なる言葉の意味だけでなく、「网上购物(ネットショッピング)。すなわち買い手がネットを通じて商品情報をチェックし、注文票を送信する。商品はストア(出品者)が郵送や宅配便などの方法で届けるか、または買い手が指定場所へ行き、自ら引き取る。取引は先払い・後払いなどの方法がある」という解釈が追加された。
読者に対して、ネットショッピングに必要な情報を提示し、辞書の「実用性と時代性を高めた」(新華悦読)という。
 

■採用されなかった「剩男剩女」

採否が分かれた新語一方、採用された新語があれば、採用されなかったものもある。
例えば、ネット流行語から広まった「剩男剩女」(独身のまま結婚適齢期を過ぎた男女。剩男=婚期を逃した男性、剩女=婚期を逃した女性)。
「屌丝」(負け組、ダメ人間。自嘲やユーモア、皮肉の意味を込めて使う)。
「白富美」(色白で、裕福、美人と、三拍子そろった理想的な女性のこと)。
「高富帥」(背が高く、裕福、イケメンと、三拍子そろった理想的な男性のこと)。
「喜大普奔」(“喜闻乐见、大快人心、普天同庆、奔走相告”の頭の文字から取った言葉。みんなと喜び合う時に使われるが、時には「人の不幸を喜ぶ」といった意味合いも含む)。
――などである。

すでにテレビドラマや映画のタイトル(剩男剩女、屌丝)にも使われるような、人口に膾炙した言葉なのに、なぜ採用されなかったのか?
第3版で追加された新語に対して多くのネットユーザーは肯定的に見ているが、当然、中にはその選択や語義に対して異論を唱える向きもある。

「『屌丝』は上品なところには出せないから、締め出されたんだ」(注1)
「『土豪』の解釈が正しいかどうか、非常に疑問だ」
「みんなが日常的に使う『土豪』は、ちょっとからかったり、ふざけたりする行為で、文化レベルとは関係ない。辞典の解釈では“貶義詞”(貶す意味を帯びた単語)になってしまい、これからは勝手気ままに使えないよ」
「『土豪』の解釈としては、『家境富裕且出手阔绰的人』(暮らしが豊かで、羽振りのよさを見せる人)ほどでいいんじゃないか?」
 ――などである。

(注1)「屌丝」はもともと男性性器の陰毛のことを指しており、中国南部の広東省辺りでは人をののしったり、嘲笑したり、またはジョークをいったりする時に使われる俗語だった。それが転じて近年では、ネットユーザーらが自嘲やユーモア、皮肉の意味を込めて使う流行語となった。

新語の採用については、疑問を呈する専門家もいる。
湖南省の長沙理工大学文法学院の寧淑華教授(古文学)は、「新版『規範詞典』で追加された流行語が、一定の権威性を備えたのは確か。しかし長い目で見れば、急に出現した新語というのは“一陣の風”のようで、サッと吹いては通り過ぎる。そこに慣例性や普遍性は見られないのでは……」(紅網)と手厳しい。

こうして、さまざまな異論や疑問が出ているが、初版から『規範詞典』の主編を務める李行健氏は、新語の採用についてこう語る。
「収録語句の基準は2つあり、1つは、その語句が流布して定着したものであるか、2つは、大衆の世論・生活に入り込み、一定の品位があるかどうかだ。そのため用法が不安定な一部新語は、未収録となった」
「毎年、一定数の新語が生まれているが、2年目にはわずかしか残らない。新語の“生存率、生命力”はたいてい低く、それで私たちは比較的安定した語句の収録を堅持している」

「剩男剩女」「屌丝」「白富美」などの流行語は、いささか“品位”と“生命力”に欠けると判断されたようだ。
いずれにせよ、中国の学校や社会一般で、広く使われる中国語辞典。
最新第3版で、国家認定の“標準”中国語に触れるのも、また意義深いことだろう。
 

   
     

 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。12年余り北京に滞在し、2013年7月に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)。
取材編集に携わった『在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由』(阪急コミュニケーションズ)も好評発売中!

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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