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東京便り―中国図書情報 第1回 .   

 中国の常用漢字表『通用規範漢字表』が公開
  計8105字に増加

   
   

『通用規範漢字表』を布告した中央政府の公式サイト中国で、約10年がかりで制作された常用規範漢字のリスト『通用規範漢字表』がこのほど、中国政府の公式サイト、中国政府網で公開された。
 http://www.gov.cn/zwgk/2013-08/19/content_2469793.htm

教育省と国家語言文字工作委員会のチームが研究、制作し、国務院(政府)が認可したもので、「中国50余年来の漢字の規範整合化の最新成果。常用する言葉や文字の規範化、基準化のレベルアップと、情報化時代の社会、生活の需要を満たすため」(同サイト)などとうたわれている。

『通用規範漢字表』に収録されたのは、中国で規範的な常用漢字とみなされた計8105字。1988年に制定された常用漢字表『現代漢語通用字表』よりも1000字余り追加された。
その中には、これまで稀にしか使わない字とされた「闫」(yan2)など226の類推簡化字(類推簡体字、簡化されたへんやつくりから類推される簡体字)や「淼」(miao3)など45の異体字(正体字と字音も字義も同じだが、字体が異なる字)があり、こうした珍しい漢字の一部が、今回の制定で晴れて“常用漢字”への仲間入りを果たしたことに……。
この漢字表の公布後、社会一般で使われる漢字は同表を基準とし、「従来の関係字表は使用を停止する」(新華網)とされたため、一定の注意が必要だ。

   
 

■政府お墨付きの“常用漢字表”

追加された簡化字・異体字の例全8105字からなる『通用規範漢字表』。そこに収録された漢字は、使用頻度や重要度によって3つのランクに分けられている。
最上ランクの「1級」の字表には、常用漢字を中心として3500字を収録。主に、基礎教育と文化普及のための基本的な用字が収められている。
「2級字表」には、使用度が1級字に次ぐ3000字を収録。
1、2級字表の計6500字は、主に出版印刷、辞書編纂、情報処理などの分野の一般用字の需要を満たす。
「3級字表」には、1605字を収録。主に、姓名や地名、科学技術用語、小中学校の国語テキスト(文語文)の用字において1、2級字表では未収録で、なおかつ比較的常用される文字を集める。とくに情報化時代にあって、一般の人々の生活に密接にかかわる専門分野の用字を収める――という。

この漢字表は、中華人民共和国建国後に公布された『第1回異体字整理表』(1955年)、『簡化字総表』(1986年)、『現代漢語通用字表』(1988年)など、いくつかの主要字表を整合させた上で制定された。
中国の言語生活の変化と社会のニーズに基づいて調整された、政府お墨付きの最新“常用漢字表”というわけだ。
 

■「王?」さんの入力問題が解決へ

新たに追加された45の異体字漢字表で注目されるのが、これまで稀にしか使わない字とされながらも、実際には社会生活の中で広く使用されていた「闫」など226の類推簡化字や、「皙」(xi1)、「昇」(sheng1)、「喆」(zhe2)、「淼」、「邨」(cun1)、など45の異体字が新たに追加されたこと(45の異体字は図を参照)。

実はこれらの文字は、中国の「全国人口普査」(国勢調査、1982年)によるサンプル統計や、公安省提供の一部人名用字なども参考にして加えられた。つまりその多くが、人名、地名用字として使われているものだ。
「稀な字」ゆえに、さまざまな混乱もあったようだ。
例えば、名前に「喆」(zhe2、「哲」の異体字)という文字を持つ王さんは、「小さいころから周りの人に本名ではなく『吉吉』(ji2ji2)という愛称で呼ばれ、いつしか自分も慣れてしまった。空港でチェックインする時にも、コンピューター上にこの字が出ないことが多く、書類に署名捺印して搭乗したこともある」(「北京青年報」)と、その煩雑な手間を振り返る。
また、名前に「淼」の文字を持つある女性は、初対面の人の場合、この漢字の読みを知らないことが多く、そのたびに「三水」と誤読されてイヤな思いをしたという。

これまで空港などでよく見られたやりとり中国では空港や銀行などでの登記の際に、コンピューターの入力システムによっては、こうした稀な字が打ち込めないことがある。仕方なく「吉吉」のように文字を分解したり、漢字をピンイン(中国語の表音のローマ字表記)に直したり、あるいは「王?」のようにクエスチョンマークで示すなどして、本名用字に代えたケースが少なからずあったという。

今回の『通用規範漢字表』の制定でこうした問題の解決が期待できるとして、ネット上などでは「名前がついに本採用された!」「支持する」といった歓迎の意見が多く見られる。
ネットリサーチを導入して制定にかかわってきた教育省語信局の王翠葉処長は、「情報化のめざましい発展により、各業種でデータの蓄積と交換が求められていた。一部の『稀な字』がデータバンクになかったため、多くの問題が発生していた。情報化がもたらした新たな問題を、規範漢字の上でも解決しなければならなかった」(「北京青年報」)と語る。
中国の各界、各分野における漢字の需要が、今回の『通用規範漢字表』を生み出した――といえそうだ。
  

■実用性には疑問視する声も

「1級字表」の例一方で、この規範漢字表の実用性については疑問視する声もある。
中国では2008年までに、国民の身分証(「居民身份証」)をICチップ導入型の「第2代身分証」にほとんど移行させている。この新型の身分証を使えば、銀行などでは識別機とコンピューターの連結で、データの読み込みが正しくできる。その場合は、もはやキーボードを使って人名、地名の稀な字を打ち込む必要はないのである。

ネットの掲示板には「今回、追加されたのは、多くは人名用字でしょう。だったら(『通用規範漢字表』というより)日本のように『人名用漢字表』を整理すればいいだけのこと。(制定のための)こんなに面倒な手間を省くことができるよ」という、なんとも皮肉で冷静な意見も書き込まれている。

近年、中国のネットユーザーに人気で、広く知られるようになったものの漢字表からは外された文字もある。
古代字の「囧」(jiong3)は、もともと「光明、明るい」という意味を表す漢字だが、その形が困った顔を表した顔文字のようでもある。そこで「悲しい、どうしようもない」という意味の新語として、ネット上からリアルな社会生活にまで広く使われるようになった。映画や書籍のタイトルにも使用されたことがあるが、今回の漢字表では明らかに不採用だ。

「規範字・繁体字・異体字対照表」これに対して、中国農業大学人文学院の葉敬中副院長は「ネット流行語は、規範漢字の基準に対して一定の影響力がある。だが、それは短命すぎる。時代を反映することはできても、深い文化的内容には欠けるだろう。完全に排除できないものの、ネット流行語とは一定の距離を保つことが必要だ」(同)と語る。
ネット用語と規範漢字の間には、学問や教育の上で、なおいくらかの隔たりがあるのだろう。

このほか規範漢字表には、中国大陸と香港、マカオ、台湾の人たち、さらには海外華僑、華人との交流の便宜を図るため、『規範字と繁体字、異体字の対照表』『筆画(字画)検字表』の2表が末尾に付いている。
個人的に欲をいえば、漢字表に今回追加された226の類推簡化字と、45の異体字の別表が付いていれば、常用漢字の変化が一層わかりやすかっただろうと思う。

『通用規範漢字表』は、中国政府網で一覧が公開されている。
 ご興味のある方は、中国の最新常用漢字をぜひお確かめいただきたい。

※ 『通用規範漢字表』(中華人民共和国中央人民政府網、2013年8月19日付)
 http://www.gov.cn/zwgk/2013-08/19/content_2469793.htm 

※[関連書籍]
  李行健 编 『通用规范汉字表使用手册』 (人民出版社、2013年08月)
  王宁 主编 『通用规范汉字字典』 (商务印书馆、2013年07月)
  王宁 主编 『《通用规范汉字表》解读』 (商务印书馆、2013年07月)

東方書店ウェブサイトで長年ご愛読いただいた「北京便り」は、今月号から「東京便り―中国図書情報」として再スタートいたします。東京を拠点に、日本から見る中国の出版事情や、日本における中国関連図書事情などを追っていきます。引き続き、よろしくお願いいたします。
 

 
   
     

 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。12年余り北京に滞在し、2013年7月に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)。
取材編集に携わった『在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由』(阪急コミュニケーションズ)も好評発売中!

 

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