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東京便り―中国図書情報 2013年12月

 作家富豪ランキング
 ――ファンタジーの江南、ノーベル賞の莫言が上位に

   
   

年末恒例の2013年第8回「中国作家富豪ランキング」(作家長者番付)がこのほど中国で発表され、国内メディアやファンらの注目を集めている。
主に印税収入を予測計算してランク付けしたもの。今年は冒険ファンタジー『龍族』シリーズがロングセラーとなった江南が、昨年5位から首位に躍進。またノーベル文学賞受賞作家の莫言が昨年同様2位を維持し、根強い人気を誇っている。

一方、中国の「80後」(バーリンホウ、1980年代生まれ)を代表する作家でマルチプロデューサーの郭敬明は、昨年4位から8位に転落。今年は自身の初監督映画「小時代」が大ヒットしたものの、小説では目立った新作が生まれなかったためと見られる(ランキングの「印税」は主要作品の印税収入に限られ、派生的収入は含まれないため)。

さらに今年は、従来の「作家」「ネット作家」「漫画家」「外国作家」の各ランキングに加え「脚本家」部門が新設された。20世紀初頭ごろの貧しい山東移民たちの大移動を感動的に描いたテレビドラマ「闖関東」(山海関の東へ進出する)のシナリオを担当した高満堂が初の王座に輝いた。
外国作家ランキングでは、日本の村上春樹が新作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の翻訳本のヒットで、昨年5位から2位に急浮上。東野圭吾、黒柳徹子といった常連作家に加えて「くまくん」絵本シリーズの佐々木洋子(絵)もトップ10にランクインするなど、日本勢の意外な強さを見せつけた――(一部敬称略)。

   
 

■ファンタジーが大衆文学の主流に
「中国作家富豪ランキング」は06年から毎年1回、ジャーナリストで同ランキングの創始者である呉懐堯氏が調査し、発表しているもの。四川省成都市の大手都市報(大衆紙)「華西都市報」の編集協力のもと、今年は12月2日から6日まで同紙で独占報道された(のちメディア多数が転載)。
中国系作家たち(香港、マカオ、台湾を含む)の大陸での所得変化を追うとともに、中国人の読書傾向を知ることが狙い。
従来と同じように、北京、上海、武漢、成都、天津など都市部の出版社、出版取次、印刷会社、ネット書店、実店舗、さらには一部作家を取材して、印税収入の上位作家をランク付けした。

【2013年 第8回中国作家富豪ランキング】(トップ10)  
順位 作家 印税(人民元) ベストセラー代表作
龙族 1 火之晨曦蛙皮皮鲁送你100条命 查理九世 20 黑雾侏罗纪 绿狗山庄杨红樱作品精选导读(品藏版) - 笑猫日记系列小时代2.5锋银时代 4 [漫画] 小时代2.5锋银时代 3 [漫画]小时代1.0折纸时代 我所理解的生活
1 江南 2550万元 『龍族』シリーズ
2 莫言 2400万元 『蛙』
3 鄭淵潔 1800万元 『皮皮鲁送你100条命』(ピピルが100の命を送る)
4 雷欧幻像 1780万元 『査理九世』(チャーリー9世)シリーズ
5 楊紅桜 1750万元 『笑猫日記』(笑う猫の日記)シリーズ
6 張小嫻(香港) 1400万元 『謝謝你離開我』(別れてくれてありがとう)
7 沈石渓 1350万元 『狼王夢』(狼王の夢)
8 郭敬明 1300万元 『小時代』シリーズ
9 韓寒 1200万元 『我所理解的生活』(私が理解する生活)
10 柴静 1150万元 『看見』(見える)
  ※ 印税の統計期間は2012年11月~2013年11月。
※ このランキングの印税は、中国作家(香港、マカオ、台湾を含む)の大陸での主要作品の印税収入に限られる。ドラマや映画の原作料など派生的収入は含まれない。
※ 印税の計算方法は、発行部数×定価×印税率。予測を含む(以下同)。1元は約17円。

今年の発表では、従来の「作家富豪ランキング」上位30人が60人に拡大された(参照)。
昨年のトップで「児童文学の大王」といわれる鄭淵潔が3位に後退したかわりに、首位の栄冠に輝いたのは、ファンタジー作家の江南。長編ファンタジー『龍族』のシリーズ(2010年~)は、神秘的なパワーを秘めた「屠龍家族」(龍を屠殺する家系)の一員であることがわかった主人公の青年が、仲間とともに龍王との熾烈な戦いに挑むアドベンチャー・ストーリー。発売以来コミックの原作にもなり、相乗効果でロングセラーとなっている。

今年のランキングで特徴的だったのが、この江南をはじめとするファンタジー作家が多くランクインしたこと。4位の雷欧幻像、21位の裟欏双樹、28位の劉慈欣など……。
こうした傾向について華西都市報は「中国文壇に現れた重要なサイン。中国のファンタジー文学がすでに欧米の『ハリー・ポッター』や『指輪物語』(ロード・オブ・ザ・リング)と同様、大衆文学の主流になったことを表している」と分析している。

もっとも中国には古くから、中国最古の空想的地理書といわれる『山海経』や明代に大成した伝奇小説でおなじみの『西遊記』、清代の怪異譚『聊斎志異』など伝統的なファンタジー文学がある。
これに対して今年の覇者となった作家・江南は「(中国の)ファンタジー小説の成功は、この国の素晴らしい神話や伝統をいかに理解し、再生させるかにかかっていると思う。ただ今の時点では(私たち作家の)効果的な分析や理解、再生産は足りていないようだ」(同紙)と控えめな態度で語っている。

 

■ 日本文学が意外な人気を維持
このほか恒例の作家、ネット作家、漫画家、外国作家の各ランキングに加えて、今年は「脚本家」部門が新設された。
トップ10には、日本のBSテレビでも放送された人気ドラマ「五星大飯店」(ファイブスターホテル)の脚本家・海岩や、大ヒットドラマ「蝸居」や新作「宝貝」の脚本家である六六など、日本でも知られる名前が挙がっている。

外国作家ランキングでは、村上春樹が新作のヒットで昨年5位から2位に急上昇。
さらに『白夜行』の東野圭吾、『窓ぎわのトットちゃん』の黒柳徹子といった常連作家に加えて「くまくん」絵本シリーズの佐々木洋子(絵)もトップ10に初ランクインした。児童文学の人気は、一人っ子政策をとる中国で年々ヒートアップする教育熱を裏付けるものだろう。
また外国作家のうち日本勢はトップ10に4人もランクインするなど、近年同様に高い人気を誇っている。尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題をめぐって日中関係は低迷しているが、ランキングを見る限り、日本文化への関心は意外と衰えていないことが見て取れる。

 

■ 「作家を時代のアイドルに」
こうして、1年間を代表する作家や作品がざっくりと見渡せる作家富豪ランキングだが、その是非については引き続き論争が巻き起こっている。
今年59位になった作家の蘇童は、2006年第1回のランキングで第4位と上位につけたが「実数より1ケタ多くて、印税90万元のところ900万元と計算されていたんだよ」とそのアバウトな順位付けに憤慨している。

その上で「ランキングは話題作りのためだけで、実際の意義は何もない。(少なくとも自分の場合と同様)作家本人の裏づけもないから、事実証明も難しいだろう。富豪ランキングは、賢明な読者の作品選びにも、作家の創作にも何ら影響しないと信じている」(江蘇省南京市の都市報「揚子晩報」)と声高に反論している。
また、評論家の白燁は「印税収入で順位付けしたこれは『ベストセラー作家ランキング』だといえる。しかもこのランキングはマーケットを基準にしていて、純文学(の優劣)とはあまり関係がない」(河北省石家荘市の都市報「燕趙晩報」)と異論を唱える。

 こうした批判に対し、創始者の呉氏は「ランキングの初志は、全国民の読書時代の到来と、文化産業の発展を促進すること。作家たちを(貧しい文人のイメージから)時代のアイドルにしたかったんだ」(大河網)
「書籍の定価から計算すれば、ランクインした60人の作家だけで年間30億元余りの富を生み出していることになる。多くの読者の精神的ライフを豊かにするとともに、社会に対しても多大な就業チャンスを作り出しているんだ」(華西都市報)などと反駁している。

 いずれにしても、今年第8回を迎えた作家富豪ランキングは「社会のコンセンサスを得つつある」(大河網)という恒例のイベントになっている。
一方、このランキングの影響を受けたのか? 中国では近年、図書ランキングが百花繚乱の様相だ。
年末になると通販サイト・中国アマゾンが「図書ランキング」(金羊網)を、また国営通信社・新華社の電子版「新華網」などが「中国で影響力のあった図書」のコンクールを、華人向けポータルサイトの鳳凰網が「鳳凰読書コンクール」をそれぞれ開催していて多種多様だ。 

結果は来年の発表となるものもあるが、中国のホットな図書事情を知るのであれば「作家富豪ランキング」だけでなく、各種ランキングの結果を比べてみるのも良いだろう。
  

 
【2013年 中国ネット作家富豪ランキング】(トップ10)  
順位 作家 印税(人民元) 代表作  
1 唐家三少 2650万元 『闘羅大陸Ⅱ』
2 天蚕土豆 2000万元 『大主宰』
3 血紅 1450万元 『光明紀元』
4 我喫西紅柿 1300万元 『莽荒紀』
5 夢入神機 1200万元 『聖王』
6 辰東 1000万元 『完美世界』
7 骷髏精霊 890万元 『聖堂』
8 打眼 800万元 『宝鑑』
9 柳下揮 600万元 『火爆天王』
10 跳舞 550万元 『天驕無双』
  ※ 印税の統計期間は2012年11月~2013年11月。
※ 中国ネット作家の稿料をはじめそこから派生した本の出版など、主に紙媒体における印税収入の合計。

 

【2013年 中国漫画家富豪ランキング】(トップ10)  
順位 作家 印税(人民元) ベストセラー代表作
向左走·向右走幾米袖珍本(2000-2002)(共5册)(附绘图册) 幾米袖珍本(2002-2003)(共5册)(附绘图册)疯了!桂宝 9 喜悦卷 疯了!桂宝大全集(全7册) 长歌行 1 [漫画]哥斯拉不说话 [漫画] 子不语 3 [漫画]
1 周洪浜 2300万元 『偸星九月天』(Star-Stealing Girl)
2 朱斌 1200万元 『爆笑校園』(爆笑キャンパス)
3 穆逢春 770万元 『闘羅大陸』
4 幾米(台湾) 370万元 『如果我可以許一個願望 』(1つ願いをかけられたら)
5 阿桂 360万元 『瘋了!桂宝』(クレイジー!桂宝)
6 猫小楽 350万元 『阿衰 on line』
7 米二 265万元 『九九八十一』
8 夏達 230万元 『長歌行』
9 極楽鳥 215万元 『暴走隣家』
10 韓露 210万元 『艶勢番』
  ※ 印税の統計期間は2012年11月~2013年11月。
※ 2009年に日本で本格デビューを果たし、現在は月刊「ウルトラジャンプ」で『長歌行』を連載する美人漫画家の夏達が、昨年の10位から8位にランクアップ。着実に上昇している。

 

【2013年 外国作家富豪ランキング】(トップ10)  
順位 作家 印税(人民元) ベストセラー代表作
哈利·波特与阿兹卡班囚徒哈利·波特与“混血王子”(邦題:謎のプリンス)没有色彩的多崎作和他的巡礼之年海邊的卡夫卡 上我去刷牙 (原題:はみがきよ~いどん)白夜行 上、下 麒麟之翼侦探俱乐部小时候就在想的事
1 J.K.ローリング(英) 850万元 『ハリー・ポッター』シリーズ
2 村上春樹(日) 600万元 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
3 G.ガルシア=マルケス(哥) 400万元 『百年の孤独』
4 ジョアンナ・コール(米) 350万元 『フリズル先生のマジック・スクールバス』
5 カーレド・ホッセイニ(米) 315万元 『そして山が鳴った』
6 ジョージ・R・R・マーティン(米) 300万元 『氷と炎の歌』シリーズ
7 佐々木洋子(日) 260万元 「くまくん」絵本シリーズ
8 東野圭吾(日) 250万元 『白夜行』
9 リチャード・ワイズマン(英) 230万元 『プラスエネルギー』
10 黒柳徹子(日) 220万元 『窓ぎわのトットちゃん』
  ※ 統計期間は2012年11月~2013年11月。中国大陸での主要作品の印税収入を算出。

 

【2013年 中国脚本家富豪ランキング】(トップ10)  
順位 作家 印税(人民元) 代表作
闯关东 五星大饭店 长安盗独家披露·黑卷拿什么拯救你,我的爱人 男人的天堂 父亲进城 宝贝
1 高満堂 3000万元 ドラマ「闖関東」(山海関の東へ進出する)
2 林和平 2700万元 ドラマ「勛章」(勲章)
3 于正 2400万元 ドラマ「宮」
4 海岩 2300万元 ドラマ「五星大飯店」(ファイブスターホテル)
5 趙冬苓 2200万元 ドラマ「我的父親母親的婚姻」(私の両親の結婚)
6 石鐘山 2100万元 ドラマ「石光栄和他的兒女們」(石光栄とその子どもたち)
7 王宛平 2000万元 ドラマ「金婚」
8 王麗萍 1900万元 ドラマ「媳婦的美好時代」(嫁の素晴らしい時代)
9 六六 1700万元 ドラマ「宝貝」
10 朱蘇進 1400万元 ドラマ「三国」
  ※ 中国脚本家富豪ランキングは今年初めて。2008年から今年までの5年間、中国脚本家の主要映像(テレビ、映画など)作品のシナリオ稿料と、そこから派生した印税収入の合計。

 

   
     

 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。12年余り北京に滞在し、2013年7月に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)。
取材編集に携わった『在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由』(阪急コミュニケーションズ)も好評発売中!

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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