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2013年02月

 中国人気ブロガー、李承鵬氏の新著がヒット
  南方週末を支持

   
   

発売直後より異例の大ヒットとなった『全世界人民都知道』中国の有力紙「南方週末」の新年社説が当局に改ざんされた問題(※注)をめぐり、同紙支持を明らかにしている人気ブロガー、李承鵬氏(44)の新著が1月の発売直後から驚くべきヒットを飛ばしている。
『全世界人民都知道』(世界の人はみな知っている)と題して北京の新星出版社から刊行された、李氏の最新エッセイ集だ。
1月上旬の正式発売後、北京のベストセラーランキング(「新京報」同月11~17日)では、初登場で堂々の第1位を獲得。オンラインショップの中国アマゾンでは、中旬時点で売り切れとなり「入荷待ち」の表示が続いた。
 
自由や人権を唱えて、時に厳しい体制批判を繰り広げている李承鵬氏。
このほど北京で開いたサイン会では暴徒にいきなり顔を殴られ、その後に予定された各地でのサイン会は、会場側から「一時中止」にされたままだ。だが、こうした不幸な事件がきっかけとなり、李氏への支持と注目度がアップして「新著が売り上げを伸ばしている」と見る向きもある。
15日のミニブログ「微博」では不安な気持ちをのぞかせながらも「前進することで心の恐怖に打ち勝ちたい」と作家としての強い決意を述べている。

   
 

■リベラル発言に保守層が反発?

李承鵬氏は1968年、新疆ウイグル自治区生まれの漢民族。「李大眼」(大きな目の李)というニックネームの通り、鋭い観察眼と筆鋒によるコラムやエッセイ、小説に定評がある。微博のフォロワーは約670万人に上り、支持層も厚い(1月下旬時点)。

四川師範大学を卒業後、地方紙「成都商報」やサッカー紙「足球報」などで記者として活躍したが、サッカー界の汚職を勇敢にあばき、数度にわたり当局から“封殺”(記事差し止めや停職)の処分を受けた。
現在は四川省を拠点に、作家、評論家、人気ブロガーとして活躍の場を広げている。主な著書に、サッカー界の醜聞に迫った『中国足球内幕』(共著)、地方政府とデベロッパーが結託した土地の強制収用問題を小説化した『李可楽抗訴記』(李可楽の立ち退き抵抗記)など骨太の社会派作品があり、いずれもベストセラーになった。

サイン会での発言を禁じられ、黒いマスクで無言の抵抗を示す李承鵬氏南方週末の改ざん問題に対しては、微博を通じて「(今の中国には)高層ビルは必要ないが、真実を語る新聞がいる」(1月7日)として、同紙への支持を表明していた。

こうしたリベラルな思想や発言が、李氏を批判する保守層の反発を招いたのだろう。
13日に北京の大型書店、中関村図書大厦で開いたサイン会では、並んでいた50歳前後の男にこめかみを殴られ、「漢奸」(裏切り者)とののしられた。さらに別の男からは包丁を投げつけられたが、李氏はとっさにこれをかわして大事には至らなかった。2人の暴徒はその場で取り押さえられ、警察に連行されたという(中国メディア)。
 http://cul.sohu.com/s2013/zuojia/ 

その後、李氏は17日付のブログで「何らかの原因で、一部地方でのサイン会は中止された」と謝罪。その上で、暴徒に対しても「提訴するつもりはない。どんな動機があるにせよ、みなが反対意見を述べる権利があるからだ」と、多様な意見や思想を認める姿勢を示している。
 

■「広大な領土よりも尊厳を」

書店で平積みされる『全世界人民都知道』不幸中の幸い、または怪我の功名といおうか、殴打事件で同情や注目を集めた李氏の新著は、かえって驚異的なヒットを飛ばしているようだ。
前述した通り、北京のベストセラーランキングでは初登場で第1位。中国アマゾンでは1月下旬時点の「ベストセラー商品ランキング」書籍カテゴリーの全体で、堂々の第2位を記録した。
李氏のフォロワーだという北京の50代男性職員は、こうした人気の高まり対し「その辛口批評に定評があるのはもちろん、殴打事件で関心を持った新しいファンが多いからだろう」と分析する。
さらに李氏の魅力については「みんなが(保身のため)遠慮することも大胆に発言するところ。そして嘘をつかない姿勢。サッカー界の八百長など、彼の暴露後に事実だったことがわかったからだ」と高く評価する。

さて、注目の『全世界人民都知道』は、著者がここ数年に書きためたブログ記事など60本余りをまとめたもの。
愛国主義から釣魚島(日本名:尖閣諸島)、食の安全、土地の強制収用まで、中国が抱える矛盾や問題について積極的に切り込んでいる。

例えば、「写在5.12的愛国帖」(5月12日の愛国帖に書く)と題したエッセイだ。
2008年5月12日の四川大地震の直後に「愛国青年として国に報いたい」と被災地の同省北川県に入った李氏は、壊滅状態となった現地を目のあたりにしてこう語る。
「北川学校の廃墟の前に立って、非常に困惑した。私は愛国者ではあるが、しだいにわかった。おから建築の鉄筋は帝国主義が抜き去ったものではないし、子どもたちも侵略者の魔の爪で死んだわけじゃない。中国人の汚れた手によって死んだのだ。私はさらに困惑した。なぜ9.11の犠牲者には名前があるのに、この子どもたちにはないのかと……」(46ページ)

四川大地震の被害拡大の一因に、公共施設への手抜き工事があったことを、怒りを込めて指摘している。
さらに愛国心について、独自の見解を強調する。
「私が考える愛国主義(愛国心)とは: 重要なのは広大な領土を持つことではなく、1人ひとりが生活の尊厳を持つことだ。愛国主義は国家の独裁機構を愛することではなく、共同の価値観を愛することだ……」(51ページ)
 

■新著が再審査を受ける!?

この「尊厳」への希求は、序文にもハッキリと記されている。
古代の歴史注釈書『左伝』に記されている、自らの命を犠牲にしてまでも史書の改ざんに抵抗した斉国の史官(史実の記録官)兄弟の故事を引いた上で、こう述べている。

「私の創作は、尊厳のためにすぎない。知力の尊厳、記憶の尊厳、情の尊厳、表現の尊厳、出産の尊厳……(を守るためにすぎない)」(7ページ)
「尊厳はこのように不思議で値打ちもないが、私たちにはそれしかない。……尊厳そのものは作品ではないが、それは肉体を通して光を放ち、両目を明るくして、自らを最高の作品にすることができる。こうした道理は、世界がみな知っていることだ」(8ページ)

憲法に「言論、出版の自由」がうたわれていても、実際にはあの手この手の厳しい統制がある“一党支配体制”の中国。
そうした中で、李承鵬氏はわが身を斉国史官になぞらえ、ギリギリの境界線に立って尊厳(人権)や自由を唱えている。その読者の広まりは、南方週末事件に代表されるような“言論の自由”をめぐる新たなうねりに結びつくか?

だが、懸念される要素もある。
李氏は15日の微博で、「この本を再審査するとの通知を受け取った」と明らかにしている。当局の言論統制強化によっては、『全世界人民都知道』が発禁処分を受ける可能性も出てきたのだ。
陰に陽に圧力がかけられているようだが、「妨害されても歩き続ける」とキッパリと語る李承鵬氏。2013年、注目の言論人となりそうだ。


※ 注 「南方週末事件」
リベラルな報道姿勢で、知識人層に支持される広東省の週刊紙「南方週末」の1月3日号新年社説が、同省共産党委員会宣伝部の検閲で改ざんされたことが発端となった。
「中国の夢、憲政の夢」と題して、憲政や自由の実現を訴えた社説が大幅に書き換えられ、タイトルも「我々はいかなる時よりも夢に近づいている」と現状を肯定するものに変更された。この改ざんに抗議して「宣伝部トップの辞任」などを求めた記者たちに対し、愛読者ら数百人が新聞社前で“応援”の抗議活動を行い、著名人らがエールを送った。

こうした反発を抑え込もうとした党中央宣伝部は7日、主要紙に対し、党の言論統制を正当化する「人民日報」系紙の社説を転載するよう要求した。これに対し、北京紙「新京報」は9日付で転載を小さく扱うなど抵抗。さらに同日付グルメ欄で、南方週末を暗に支援したコラム「南方的粥」(南方の粥、南方週末と発音が似ている)を掲載した。
事態の収拾を図るため、広東省当局は同省宣伝部トップの更迭を示唆。さらに今後は事前検閲を行わないが、発行後の検閲を強化することで南方週末と合意した(22日付香港紙)。“両成敗”の形で、同紙は編集長の異動を決めたという。

※ 李承鵬氏
 ブログ: http://blog.sina.com.cn/u/1189591617
 微博: http://weibo.com/lichengpeng
  

 
   
   
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★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2013年1月11日~1月17日

     
第4位:『我所理解的生活』

第5位:『只有医生知道!』

第6位:『暁説』

第10位:『鄧超明創業筆記』


                                                                
 

1.『全世界人民都知道』(世界の人はみな知っている)
李承鵬・著 新星出版社 2013年1月初版


人気作家でブロガーの李承鵬氏最新エッセイ集。
愛国主義から食の安全、土地の強制収用まで、率直な辛口エッセイ60本余りをまとめる。。 


2.『看見』(見る)
柴静・著 広西師範大学出版社 2012年12月初


3.『正能量』(原題『Rip It Up: The Radically New Approach to Changing Your Life』)
リチャード・ワイズマン著(英)/李磊・訳 湖南文芸出版社 2012年7月初


4.『我所理解的生活』(私が理解する生活)
韓寒・著 浙江文芸出版社 2013年1月初版


中国の若手人気作家でオピニオンリーダー、さらにはレーシングドライバーやモデルとしての顔もあわせ持つ才人、韓寒。2011年末から12年初めにかけて、中国の革命、民主、自由をテーマにした独自の考察をブログで発表し、中国のネット世論を騒がせる問題となった。
この「韓三篇(編)」と呼ばれる3本の文章では、「現在の中国では国民の素養が低いから革命は起こらない」などと主張。「急進派が保守派に転向した」と指摘されるほどの変節ぶりで、これがもとで彼への支持をやめた人も多かったようだ。
本書では「30歳の韓寒、初めての自己分析」をキャッチコピーに、作家が近年発表したエッセイなどをまとめる。問題の「韓三篇」(「談革命、説民主、要自由」)も収録される。 


5.『只有医生知道!』(医者だけが知っている!)
張羽・著 江蘇人民出版社 2012年12月初


妊娠、出産をめぐる女性の体と病気を知る“百科全書”。
「どんなインテリ女性でも、自分の体の理解度は5%に満たない」と表紙にある。そこで本書は、中国の有名病院、北京協和病院の張羽産婦人科副教授が「医者だけが知る」専門知識をわかりやすく教える。
「絶対安全な安全期はない」「子宮外妊娠は不定時爆弾」「出産後の“黄金の5分間”」「子宮:子どもを産まないと筋腫を生む」「中国式の医者と患者の関係:相互不信」など、とくに女性が知っておきたい大切な健康知識が詰まっている。 


6.『暁説』(はっきり言う)
高暁松・著 北京聯合出版公司 2012年11月初


中国の有名な音楽プロデューサーで映画監督、ミュージシャン、作家……とマルチな才能を発揮する高暁松。
中国の動画サイト「優酷」で、2012年3月から毎週土曜朝に約20分のトーク番組「暁説」を配信している。本書はその番組を記録したもの。
内容は「史上最強の宦官、鄭和の大航海時代」から自身が直面した「米国社会のがん」、さらに「サッカー欧州リーグの陰謀論」まで歴史や世界、ホットな話題と多岐にわたり、痛烈トークが評判に。
動画配信35回までの総再生数は、のべ8300万回。中国の高速鉄道、飛行機、高速バス、浙江衛星テレビなどでも配信されて注目された。本書の刊行で「暁説ファン」がさらに増えるか? 


7.『誰的青春不迷茫』(迷わない青春はない)
劉同・著 中信出版社 2012年12月初


8.『你若安好 便是晴天:林徽因伝』(あなたが無事なら晴天に:林徽因伝)
白落梅・著 中国華僑出版社 2011年9月初


9.『好媽媽勝過好老師』(よい母はよい教師に勝る)
尹建莉・著 作家出版社


10.『鄧超明創業筆記』(鄧超明の創業メモ)
鄧超明・著 新世界出版社 2012年10月初


「現代中国の傑出した広告人」「中国で最も影響力のある10大広告エージェント」などに選出された、互通国際広告公司の鄧超明董事長(代表取締役)兼CEO。
「10年前は、都市の蟻族(高学歴ワーキングプア)。10年後は、広告会社の董事長兼CEO」とある通り、その半生40年余りの紆余曲折と、起業10年余りの挫折と栄光をつぶさに伝える。
「どんな逆境に遭っても(鄧氏は)人生の方向性を見失わなかった」「企業の苦境脱出経験が記された第1級資料」とビジネス界の評価も高く、現在と未来の起業家に贈るすぐれた起業バイブルとされる。 


 
     

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)
訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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