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2012年12月

 7年ぶり改訂『現代漢語詞典』に学者らが異議

   
   

北京の書店に平積みされる『現代漢語詞典』第6版現代中国語の中型辞典としては最も権威的であり、幅広い読者層を持つ『現代漢語詞典』(中国社会科学院語言研究所詞典編輯室編、商務印書館)。
その7年ぶりとなる改訂の第6版がこの夏に出版され、収録語彙の大幅増などが話題となっているが、一方で「漢字のローマ字化に反対する」「言葉の純潔さを守ろう」として内容に異議を唱える声が出ている。

翻訳家の江楓氏ら100人余りの有識者たちが先ごろ連名で、中国当局(国家新聞出版総署、国家語言文字委員会)に宛てて意見書を送ったもの。当局の明解な答えはまだ出ていない模様だが、1978年の刊行から34年、改訂を重ねた権威的辞典にどんな“欠陥”があったというのか?

   
 

■語彙は6万9000余りに増加

第6版の目玉の1つが、親文字や語彙の大幅な追加収録。第5版に比べ新たに600余りの親文字と3000余りの語彙が加えられ、親文字は計1万3000余りに、語彙は計6万9000余りにそれぞれ増加した。
第5版より辞典のサイズも一回り大きくなり、携帯するには不向きだが、文字がより引きやすくなったようだ(縦22×横15.5センチ。ページ数は、80ページ減の1790ページ=索引を除く辞典部分のみ)。

旧版よりも一回り大きくなった第6版追加語彙は、「闪婚」(電撃結婚)、「北漂」(北京に上京し奮闘する若者のこと)、「草根」(草の根)、「蚁族」(蟻族、大卒以上の学歴を持つワーキングプアの若者たち)、「月光族」 (給料を1カ月で使い果たしてしまう若者たち)などインターネットの流行語をはじめ、「刺身」、「定食」、「寿司」、「天妇罗」(てんぷら)、「榻榻米」(たたみ)、「通勤」、「手账」(手帳)、「数独」、「新人类」(新人類)、「宅急送」(宅配便)といった日本からの外来語「日語外来詞」も多数収録。
これだけとってみても改訂作業の7年間に、ネットの普及で若者言葉が常用語化したこと、また日中間の往来などの拡大で、日本食やビジネスに関する言葉がさらに広まったことがうかがえる。
 

■「iPhone」は漢字の破壊!?

そんな利用者の日常により近づいた、より使いやすくなった感のある第6版だが、これに異議を唱える動きが出てきた。
前述の江楓氏をはじめ、キーボードの筆画・字形コード入力である「五筆字型」を発明した王永民氏、中国共産党機関紙『人民日報』高級記者の傅振国氏ら100人余りの有識者たちが連名で当局宛てに意見書を送ったのだ。

その名も長く、「商務印書館『現代漢語詞典』第6版収録の“NBA”など239の西洋文字に始まる語句に反対する」というもの。
辞典の1750~1755ページに収録された239の「西文字母開頭的詞語」(西洋文字に始まる語句)を指しており、例えばNBA(米プロバスケットボール協会)、B超(Bモードの超音波検査、エコー)、CPI(消費者物価指数)、GDP(国内総生産)、WTO(世界貿易機関)などの語句がある。そのほとんどが英略語と中国語式の英略語だ。
意見書はこれが「中国国家通用語言(言語)文字法」と、国務院(政府)の「出版管理条例」などの法規に抵触するというのである。

中国紙『文学報』なども取り上げた、反対派の意見を拾ってみると――。

○李敏生氏(中国社会科学院研究員)
漢語辞典というのは(中国語の)文字や言葉の規範的意義があるものだ。それなのに英語の語句や英文をそのまま漢字の代わりにするのは、漢字のローマ字(表記)化100年の歴史においても最も深刻な漢字の破壊だ。

○傅振国氏(『人民日報』高級記者)
(西洋文字に始まる語句に)新たな基準を設けなければ、中国語の中に英語がますます増えてしまう。
中国語はこれまでも外来語を吸収し、時代とともに発展してきた。だがそれは外来語を翻訳するなどして再使用してきたものだ。例えば日本語から来た「党」「階級」「階級闘争」のほか、西洋からの「徳甲」(ブンデスリーガ)、「英超」(プレミアリーグ)、「可口可楽」(コカコーラ)もそう。
ならば「諾基亜」(ノキア)、「摩托羅拉」(モトローラ)は中国語訳できたのに「NBA」はできないのか? 「iPhone」や「iPad」は翻訳不可能なのか?
逆にいえば、英語が中国語の語彙を取り入れてもそれはピンイン(中国語のローマ字表記)であり、ローマ字だ。英語が漢字を取り入れたわけではないのに、なぜ中国語が英語をそのまま吸収するのだ?

○江楓氏(翻訳家)
「西洋文字に始まる語句」は、当初はわずか39語だったのが、第5版で4.5倍の182語、第6版では239語に増えた。しかし実際に『現代漢語詞典』で英略語を調べる人がいるのだろうか?
同「語句」は辞典の中で、まるで膨張を続ける植民地のようだ。編者の目的が「漢字のローマ字化」「ローマ字化した漢字(普及)」であることが露呈したのだ。
中国語や漢字の純潔性を守ることは、いずれも理論的根拠のある言語構成や「以形表意」(表意文字)という漢字の特性を守ることにつながる。
「聚会」(集まり)があるのに「派対」(パーティー)、「三点式」があるのに「比基尼」(ビキニ)、「狂歓節」があるのに「嘉年華」(カーニバル)など、同じ意味の意訳語、音訳語がダブって収録されていることにも異議を唱える。

○王永民氏(「五筆字型」発明者)
(中国では)1980年代にパソコンが出現して以来、(入力法などで)ピンインが漢字に取って代わりつつある。「漢字の保護」は論争の絶えない問題となっている。中国語の規範となる権威的辞典が239の「西洋文字に始まる語句」を収録するのは、ピンインが漢字に取って代わることは正しく、規範的なことだ、という意味であろう。
それは著しく漢字の安全を脅かし、中華文化の安全を脅かすものだ。
 

■NBAファン不在の言語環境

英略語の例(『北京青年週刊』より)古くから漢字かな交じり文が定着し、外来語はカタカナやローマ字などで表記できる日本語の場合は、文中に「NBA」と出てきたところで、さほど深刻な問題にはならないだろう。しかし、中国大陸部では「西洋文字の侵略」と「中華文化の保護」という大問題に発展しているようである。
2010年4月には、中国国営の中央テレビ(CCTV)が「NBA」「GDP」「WTO」といった英略語の使用をやめ、いずれも中国語の正式名称に切り換える方針を明らかにした。中国の放送メディアを管理・統括する「国家ラジオ・映画・テレビ総局」(広電総局)の新しい規定によったものだ。しかしCCTVでは最近、規定が強制的なものではないこと、『現代漢語詞典』に収録されていることを理由に、英略語を中国語名とあわせて復活させ始めている。

有識者たちの意見書に対し、中国辞書学会会長で『現代漢語詞典』第6版改訂の主管者である江藍生氏(女性)は、こう否定する。
「(抵触するとされた)『国家通用語言文字法』には、“中国語の出版物で外国の言語・文字使用が必要な場合は、国家通用言語・文字により、必要な注釈をつけなければならない”と明記されている。つまり法律は『西洋文字に始まる語句』の使用を禁じておらず、注釈をつければ使用可能としているのです」
「いかなる文化も、表現力を豊かにし生き生きとした生命力を維持したいなら、ほかの地域や民族の文化を栄養にして吸収しなければ。言葉も例外ではありません」

版元の商務印書館の于殿利総経理はこう語る。
「以前、国営メディアがNBAを“美職籃”(美国男子籃球職業聯賽)と言い表したが、NBAファン不在の言語環境にあるようだ。なんたるおかしさだろうか! 辞典にNBAを収録してから言語従事者の便宜を図ることができたのだ」

こうして漢語辞典の「規範派」と「表現派」の学術論争は激しさを増すばかりだ。当局はこれまでに、意見書への明らかな回答を示していない様子だが……。
中国の新聞や雑誌を見れば、連日のように英略語が使われている。街に出れば、時には「IP卡」(IP電話カード)を求めるし、「KTV」(カラオケボックス)へ行くこともあるだろう。病院ではエコーは「B型超声診断」とはいわず「B超」、CTスキャンは「計算機層析成像」(コンピューター断層撮影)とはいわず「CT」と言い慣わされている。

中国の成語に「約定俗成」(慣わしがしだいに定まり、広く一般に認められる)とある。その言葉の通り、「西洋文字に始まる語句」もおしきせではなく「便利だから」「使いやすいから」自然に浸透したものだろう。
ただし、これから何かのキッカケで「規範派」が巻き返し、英略語が消えた場合……。
情報伝達、文化、教育、生活など中国社会のあらゆる面で、ややこしいことになりそうだ。
  

 
   
   
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総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2012年11月16日~11月22日

     
第1位:『蛙』(作家出版社)

第2位:『豊乳肥臀』

第3位:『爸媽太過分』

第5位:『蛙』(上海文芸出版社)

第8位:『賽爾号大電影2』

第9位:『中国共産党如何治理国家?』
                                                                
 

1.『蛙』
莫言・著 作家出版社 2012年10月版


農村の女性産科医の人生を通して、中国の一人っ子政策の矛盾とタブーに挑んだ傑作。小説のモデルは、主人公の劇作家が莫言氏、産科医が莫氏の伯母、書簡を送る日本人男性が交流のあった大江健三郎氏……と見られるところも興味深い。
日本では『蛙鳴』(あめい)として中央公論新社から翻訳出版されている。 


2.『豊乳肥臀』
莫言・著 作家出版社 2012年10月版


激動の現代中国史を背景に、偏執的な乳房愛好癖を持つ主人公とその母、さらに8人の姉たちの劇的な運命を描いている。台湾国民党をめぐる表現や赤裸々な性的描写、改革開放後の腐敗の暴露などが問題視され、中国では一時期、発禁処分を受けた。
日本では同名タイトル『豊乳肥臀』(上下巻)で平凡社から翻訳出版されている。 


3.『爸媽太過分』(両親はひどすぎる)
ピート・ジョンソン著(英)/梅子涵・主編/李宇美・訳 安徽少年児童出版社 2011年7月初版


親子で楽しめる児童文学小説。新しい学校にやってきたルーイが、よぼよぼの校長やイタチみたいな担任の先生、ガリ勉のクラスメート、いろいろ干渉してくる両親らに囲まれながら、ひそかな夢である“お笑いタレント”を目指してオーディションを受ける。はたしてルーイは成功するのか?
日本では『両親をしつけよう!』として文研出版から翻訳出版されている。 


4.『正能量』(原題『Rip It Up: The Radically New Approach to Changing Your Life』)
リチャード・ワイズマン著(英)/李磊・訳 湖南文芸出版社 2012年7月初


5.『蛙』
莫言・著 上海文芸出版社 2012年10月版


6.『自控力』(自制力)
ケリー・マクゴニガル著(米)/王岑卉・訳 印刷工業出版社 2012年8月初


7.『你若安好 便是晴天:林徽因伝』(あなたが無事なら晴天に:林徽因伝)
白落梅・著 中国華僑出版社 2011年9月初


8.『賽爾号大電影2』(シーア号の大映画2)
田思源・原著 安徽少年児童出版社 2012年7月初版


「シーア号」は、上海のIT関連会社、上海淘米網絡科技有限公司が制作した小中学生向けのオンラインゲームであり、ゲームに登場する、地球にふさわしい新エネルギーを探すための宇宙船のこと。
ゲーム参加者は、任務遂行のためにロボットや各種装備を駆使するほか、宇宙の精霊・神獣などを研究、訓練して味方につける。
この人気ゲームをもとに今年夏、映画化された「シーア号の大映画2『レイとマイルズ』」が中国全土で公開されて子どもたちの人気を博した。本書はそのノベライズ版。
シーア号の宇宙精霊レイとマイルズが宇宙海賊と勇敢に戦い、大活躍する。 


9.『中国共産党如何治理国家?』(中国共産党はいかに国家を治めるか?)
莫言・謝春濤・主編 新世界出版社 2012年10月初版


2011年のベストセラー『歴年的軌跡:中国共産党為什麼能?』(歴年の軌跡:中国共産党はなぜできるか?)の姉妹編。「共産党執政成功の12の秘密を解析する」として、「いかに幹部を選抜するか」「いかに中央と地方が協調するか」「いかに参政党との関係を処理するか」「いかに経済を発展させ、文化を繁栄させるか」「いかに社会を管理するか」などの素朴な疑問に答える。
その目的は、国内外の読者に「共産党の執政と、中国の独特な制度を理解してもらう」こと。編者は、中国共産党中央党校の教授で党史考研部副主任、博士課程の指導教官。 


10.『百年孤独』(百年の孤独)
G.ガルシア=マルケス著(コロンビア)/范曄・訳 南海出版公司 2011年6月初


 
     

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)
訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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