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2012年01月

 宋詞をコード化した
 「自動作詞機」、ネットで話題に

   
   

「宋詞コード」を公開したyixuanさんのブログ中国の宋詞総集『全宋詞』に出てくる言葉を、使用頻度順にコード化した一覧がネット上で話題になっている。
作成したのは、中国の理数系学生でブロガーのハンドルネーム「yixuan」(イーシュアン)さん。
自身のブログ「怡然軒」で宋詞コードを公開したところ評判を呼び、その内容が中国の科学系ファンサイトに転載されて、読者の中には「自動作詞機」だとして詩作を楽しむ人まで現れた。
「理系オタクが、文系学生を滅ぼす日がやってきた!」と理数マニアは意気揚々。
文学の専門家たちは「(機械的創作は)単なる文字ゲームであって、非文学的な創作だ」と批評する一方で、「こうした気楽な遊びから、古典文学への理解を深めるのも良いことだ」と寛大なコメントを寄せている。

   
 

■宋詞の常用語をコード化

中国古典詩の最高峰として並び称される唐詩と宋詞。唐代(618~907年)に作られた詩の集大成は『全唐詩』として、また宋代(960~1279年)に詠まれた詞の集大成は『全宋詞』として後世にそれぞれ編纂されており、中国文学の双璧ともいわれている。
(詞は、唐代に起こり宋代に盛んになった詩体の一つ。もとは伴奏に合わせて歌われた)

中華人民共和国創立(1949年)後に編まれた新版『全宋詞』(唐圭璋・編、中華書局)には、両宋(北宋、南宋)の詩人1330人余りの詩作約2万首が収められており、これまでに多数再版されている。
代表的詩人には、欧陽修、王安石、蘇軾(蘇東坡)、陸游らがおり、宋詞の詞風は、欧陽修らが得意とした叙情的な「婉約詞」と、蘇軾らに代表されるダイナミックな「豪放詞」とに大きく分かれる。

この『全宋詞』に理数系らしい興味を抱いたのが、yixuanさんだ。
「短絡的な思考だが、宋詞を読むうちふと思った。宋詞にはどんなイメージが一番よく使われるのか、それを頻度分析できないかと……」
yixuanさんによれば、宋詞の一句は(長短句さまざまだが)短いものが多数で、可能な文字の組み合わせもそう多くない。ましてや最もよく見られる言葉はふつう2、3字の組み合わせであるという。

例えば「猶解嫁東風」(なお解る 春風に嫁ぐを)という一句は、可能な2字の組み合わせが「猶解」「解嫁」「嫁東」「東風」であり、3字の組み合わせが「猶解嫁」「解嫁東」「嫁東風」である。このように言葉の字数が多ければ多いほど、使用頻度は少なくなる。
そこで、yixuanさんは「可能な文字の組み合わせを列挙できれば、全体の使用頻度が統計できる」と考え、独自のコンピュータープログラミングで『全宋詞』の常用語を頻度順に並べることに成功。
結果、次のような「『全宋詞』コード」が完成した。

    (1485) (無効コード) 11 相思
東風 (1382) 12 梅花

何処 (1230)

13

千里

人間 (1202) この世、世間 

14

回首

風流 (857)

15

明月

帰去 (812)

16

多少

春風 (802)

17

如今

西風 (779)

18

闌干

帰来 (771)

19

年年

10

江南 (765)

20

万里(以下100位まで公表)
※ カッコ内は、使用回数
 

■円周率でも作詞できる!?

こちらは書店に並ぶ“本家”の宋詞関連書この結果は、今年3月2日にyixuanさんが自身のブログエントリー「東風何处是人間」で発表した。コメント欄には「よくやった!これぞ中華文化の文字コードだ」「全唐詩も同じように分析してほしい」などという賞賛が数多く書き込まれた。
その後、最近になってこのコードが科学技術系ファンサイト「果殼網」に転載されて、再びブレイク。
読者のハンドルネーム「達芬奇的鶏蛋」(ダビンチの卵)さんが円周率を使って「清平楽・円周率」を作詞したところ大反響を呼び、『華西都市報』『新民晩報』、新華通信社電子版「新華網」など多くの国内メディアに掲載され、転載された。

※「東風何处是人間」
http://yixuan.cos.name/cn/2011/03/text-mining-of-song-poems/
※「果殼網」
http://www.guokr.com/post/74433 

ダビンチの卵さん作の「清平楽・円周率」はこうだ。 (※ 青字は作者の注釈の和訳)
14 15     回首明月   (一看就是抒情詩)  すぐに抒情詩とわかるな
92 65     悠悠心事空  (果然,貌似失恋了)  思ったとおり失恋したようだ
35 89 79  西湖何事寂寞中(触景生情)  情景に接して感動が湧く
32 38 46  風吹斜陽匆匆 (回憶那天下午的艶遇)  あの日午後のデートを思い出すよ
26 43 38  芳草平生斜陽 (平生見過最美的太陽和芳草,都是因為那里有你的身影)  いつも見ていた美しい太陽と芳草に、みんな君の面影がある
32 79 50  風吹寂寞今日 (到現在就剩我自己)  今は自分だけ残されてしまったんだ
28 84 19  一枝富貴年年 (好花美丽年年开,好景宜人不常在)  美しい花は年々開くが、いつもいい事ばかりではない
71 69 39  断腸長安不知(我的思念遠方的你可知道?)  僕の思いが遠方の君にわかるだろうか?

それは思いがけない、素晴らしい出来だった。
ダビンチの卵さんの創意に多くのネットユーザーが触発され、自分の誕生日やQQ(インスタントメッセンジャー)、物理定数などをこの「『全宋詞』コード」に照らして、詩(詞)を詠み始めた。
「私の誕生日は、“年年江上,江南春風”。ケータイ番号は、“明月芳草去年,江南闌干帰去”。なんて読みやすいの!私も詩人になれるわね、ハハ!」。そんな即興詩人たちが巷にあふれた。
詩作を苦手とする理数マニアも意気軒昂だ。
ネット上には「理系オタクが文系学生を滅ぼす日がやってきた! 君らのコンピューターで、文学青年を滅ぼすのだ」「人類は理系学生を阻止することはできない!」と豪語するマニアのコメントも書き込まれた。

一方、文学青年も黙ってはいなかった。
「中国語を学ぶ者には堪えられない」「宋詞ファンが見たら、偶像を破壊された思いになるのでは?」
「自動作詞は一見すると、婉約派の詞のようだ。だが豪放派の“大江東去,浪淘尽,千古風流人物”(蘇軾の「念奴橋 赤壁懐古」)のような勢いは、コンピューターでは作れないよ」

ちなみに中国の大手検索サイト「百度」(Baidu)で「宋詞密碼(コード)」を検索すると、12月20日時点で約96万件が、また「東風何处是人間」では約485万件がヒットした。もちろん無関係のページも含まれてはいるが、それにしても「宋詞コード」がネット上で流布したことがうかがえる。
当の本人yixuanさんは「皆さんの関心の高さに感激し、感謝します。僕の専門は、統計と計理。学んだ専門知識で興味ある問題を分析してみようと思った。(中略)ただ僕は“自動作詞機”を作ったわけではなく、そういうつもりもなかった……」などと、予想外の反響に当惑するようすを自身のブログに綴っている。
 

■文字ゲームで理解を寄せて

『全宋詞』コードトップ100(クリックで拡大)文学の専門家たちも、この現象に注目している。
上海作家協会の趙麗宏副主席は「これは単なる文字ゲームであり、非文学的な創作だ。こうした方法で名作を詠むのは不可能で、そこにはロジックもなければ人を感動させるような情感もない」と苦言を呈する一方で、「ゲームを通して、今まで唐詩、宋詞が苦手の向きにも、好奇心と理解を寄せてもらえるのでは……」(『新民晩報』)と語る。

唐詩の形式には五言と七言の絶句、律詩、排律があり、その種類はせいぜい十数種だが、宋詞の形式には長短句が入り混じるさらに複雑な制約があり、その種類は少なくとも800種余りに上るとされている。
詩作が容易でないだけに、現代人にも真似をして作りたいという憧れが募るのかもしれない。2010年にはアモイ大学理工学部系の教授らが、詞の常用語や平仄(漢字の声調)のプログラミングで宋詞の自動作成を試みたレポート「一種宋詞自動生成的遺伝算法及其機器実現」を発表している。
http://wenku.baidu.com/view/bf7c8a00b52acfc789ebc9be.html 

古典詩詞解読本の著者である安意如氏は、話題になった「自動作詞機」についてそれほど目を吊り上げて批判する必要はなく「ネットユーザーの遊びの一種で、一時の流行でしかない」(同)と見る。
「古典文学にはさまざまな触れ方があるが、“宋詞コード”もその中の1つ。こうした気楽な遊びから、文学はそんなに“高嶺の花”でもないとわかってもらえれば……」
そう、ネット上に現れた自動作詞機を、楽しげに眺めている。
 

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2011年12月9日~12月15日

     
第1位:『小時代3.0:刺金時代(TINY TIMES)』

第2位:『理想豊満』

第5位:『侯衛東官場筆記8』
                                         第6位:『皮皮魯送你100条命』

第8位:『貨幣戦争4 戦国時代』

第10位:『随遇而安』
 

1.『小時代3.0:刺金時代』(TINY TIMES)
郭敬明・著 長江文芸出版社 2011年12月初版


2011年の中国作家富豪ランキングで堂々の1位を獲得した“80後”(1980年代生まれ)のイケメン作家、郭敬明(グオ・ジンミン)。
同世代の若者をフィーチャーした青春小説『小時代』のシリーズ完結編の登場だ。
大都市・上海を舞台に、幼なじみの4人のヒロインが仕事や友情、恋愛や別れに苦悩しながらも成長していく姿を軽妙なタッチで描く。
シリーズは2007年11月から、郭敬明が編集長を務めるムック系文芸誌『最小説』に連載されて、人気を呼んだ。完結編は初版160万部。映画・ドラマ化の契約に郭敬明がサインしたとのニュースも話題になっている。 


2.『史蒂夫・喬布斯伝』(スティーブ・ジョブズ)
ウォルター・アイザックソン(米)著/管延圻など訳 中信出版社 2011年10月初


3.『青春』
韓寒・著 湖南人民出版社 2011年9月初


4.『理想豊満』(理想が満ちる)
馮侖・著 文化芸術出版社 2011年11月初


中国最大級のデベロッパー「万通地産」の会長などの要職を務め、企業家にして思想家の馮侖氏が、ビジネスの成功や人生の幸せをつかむためのヒントと知恵を伝授。
急速な経済発展に伴って、従来の価値観を見失い、貧富の格差に不満を覚える現代人が増えている。
そんな迷えるビジネスパーソンらに向けて、民営企業のリスクヘッジや発展する企業の法則、理想と妥協の考え方など、豊かな経験に基づいた成功への秘訣を述べる。 


5.『侯衛東官場筆記8』(侯衛東の官界メモ8)
小橋老樹・著 鳳凰出版社 2011年12月初


村から鎮(町)、県、市、そして省の政府へ。主人公の公務員・侯衛東の10年にわたる栄転ドラマを描くとともに、ベールに覆われた官界の実情と秘密に迫る。 


6.『皮皮魯送你100条命』(ピピルが君に送る100の命)
鄭淵潔・著 二十一世紀出版社 2011年11月初


鄭淵潔氏の代表的作品で、人気児童小説『皮皮鲁総動員』(ピピル総動員)の主人公、ピピルが、子どもたちに危険防止の100の注意を与える。
相次ぐ通学バス事故や誘拐事件など、子どもたちが危険にさらされている昨今、「誘惑にのらない」「自動車に警戒する」「口は災いのもと」など具体的な危険防止法を紹介。子どもに必要な安全知識を教える優良クリスマスプレゼントとして、人気を博しているようだ。
鄭淵潔氏は、2011年中国作家富豪ランキングで3位に輝いた児童文学作家。
本書はもともと作家が息子のために書き、雑誌などで発表した家庭用安全テキスト『再送你100条命』の改編版。 


7.『好媽媽勝過好老師』(よい母はよい教師に勝る)
尹建莉・著 作家出版


8.『貨幣戦争4 戦国時代』
宋鴻兵・著 長江文芸出版社 2011年12月初版


2007年の『貨幣戦争』(中信出版社)、09年の『貨幣戦争2 金権天下』(中華工商連合出版社)、11年初頭の『貨幣戦争3 金融高辺疆』(中華工商連合出版社)に続く、シリーズ第4弾。
著者は、米ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)と、米フレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)のハイレベル・コンサルタントなどを歴任し、現在は国際金融学者として知られている。
シリーズ前3作では、アメリカと欧州の金融史をはじめ、アヘン戦争を起点とする中国の金融発展史を解読。
本書では、アメリカ・欧州・アジアを中心とする世界経済の歴史と今を読み解いた上で、中国はアジアに立脚してこそ世界に向かうことができ、アジアに「統一貨幣」が作られてこそ米ドル、ユーロと対等な「三足鼎立」で戦える貨幣の戦国時代がやってくる――と主張する。 


9.『失恋33天』(失恋33日)
鮑鯨鯨・著 中信出版社 2010年1月初


10.『随遇而安』(境遇に安んずる)
尹建莉・著 作家出版社


テレビの名司会者、孟非氏の初の自叙伝。
1971年重慶に生まれ、南京で育ち、南京師範大学卒業後は、印刷工からテレビカメラマン、記者、演出家までさまざまな職業を経験。その後、若者向けバラエティー番組の司会者として才覚を表し、2003年にはネット投票の「中国で最も好ましい司会者」の第2位に選ばれるなど、全国的な人気者に。
キャリアアップとともに辛酸もなめてきたが、その都度、「随遇而安」(どこでもうまくやっていく)という大らかな心境でいたという。
孟非氏の日常や仕事上のスナップ、撮影写真なども多数掲載。 


 
     

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)
訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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