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2011年06月

 本を売るための奇策!?
 「トイレで耽読」CM動画が話題に

   
   

ネットで話題の『藏地密碼』第10巻TVCMの一コマ若い美女たちがトイレにこもり読みふけるのは、中国のベストセラー長編『藏地密碼』(チベット・コード)の最終巻だった――。

そんなドッキリするようなお笑い動画がこのほど、中国の動画共有サイト「優酷網」(ヨウクー)で公開されて、ネットユーザーらの話題を呼んでいる。人気の冒険小説『藏地密碼10』の4月末の発売に合わせ、同書の出版プロデュース会社がCMを自主制作して公開したもの。
人目を引くCM動画は「エロおもしろくて、笑える」「親しみやすい」などとして、人気のマイクロブログ「微博」(中国版ツイッター)やブログを通じ、中国のネット上でたちまち広まっていった。紙メディアの宣伝に電子メディアが駆使されたのも“イマ風だ”と、多くの国内メディアに取り上げられた。

一方、こうしたウケ狙いの動画については、本が売れない時代にあって「ブーム作りの小細工にすぎない」という厳しい見方も……。
本を売るための奇策となったCMと、ここ数年厳しさを増す中国の出版事情とは――。

   
 

■独創的なギャグ広告が評判に

TVCM「美女蹲馬桶看《藏地密碼》」 *クリックで動画サイトを開きます動画の画面に現れるのは、トイレの個室に引きこもり『藏地密碼10』(何馬・著、重慶出版社)に読みふける若い男女。それぞれがトイレに陣取り、ドアが叩かれるのもお構いなしで読書に熱中しているというコミカルな場景だ。
流れるテロップは「10扇敲不開的厠所門,9個躱在里面看藏地密碼」(ノックしても開かない10のトイレのドアのうち、9つは人が隠れて『藏地密碼』を読んでいる)というもの。続いて同書シリーズの最終第10巻の発売が、声高らかにアナウンスされるのである。

「美女蹲馬桶看《藏地密碼》」(美女が便器に座って『藏地密碼』を読む)と名付けられた30秒のミニ動画。
じつは、これは同書の出版プロデュース会社「北京読客図書有限公司」が董事長(取締役会長)からスタッフまでを総動員して、自主制作した本のCMなのだった。

ちなみに小説『藏地密碼』は08年4月に第1巻初版が刊行されてから、今年4月で10巻を重ねる大長編シリーズだ。
在米チベット人の考古学者や生物学者、特殊兵、修行僧らからなる探検隊がチベットの秘境に分け入り、1000年の仏教秘史を明かそうとする“百科全書”的なアドベンチャー・ストーリー。シリーズの総販売部数は、これまでに300万冊を超えるという大ミリオンセラーでもある。

ネット上で発表されていたころから4年におよぶ連載で、その大団円にはファンの期待が高まっていた。
折しもキャッチーな“美女動画”が公開され、さらに「微博」を通じて宣伝されると「ちょっとエッチでおもしろい」「庶民的で親しみやすい」などとして瞬く間に拡散された。
各種サイトやブログに転載されたほか、「優酷網」で現在(2011年5月末時点)視聴できる1本は、公開半月余りでおよそ10万回ものビューを数える。

※ 【優酷網】――「美女蹲馬桶看《藏地密碼》」
  http://v.youku.com/v_show/id_XMjYzNzg1NjYw.html 

紙メディアの本の宣伝に、電子メディアのインターネットが駆使されたのも「今っぽい」「独創的なギャグ広告」などとして、多くの国内メディアに取り上げられた。

中国語に「脱褲子」(トゥオ・クーズ、ズボンを脱ぐ意から転じて、問題点をさらけだし内面をあらわにすること)とあるが、その喩えにも引っかけたウケ狙いだったのか?
いずれにせよCM動画は、関連会社が自ら“一肌脱いだ”意欲作として評判になったのだった。
 

■販売1万部超えればベストセラー

こうして自作自演の低コストCMとしては一定の成果を収めたが、制作側の代表、北京読客図書有限公司の華楠董事長は厳しい舞台裏をこう語る。
「実のところ、中国の出版業界のマーケティングは遅れている。このCM動画が業界に活力を与えてくれれば……」(『斉魯晩報』―新華網、5月6日付)

確かに、奇を衒うような動画に対しては「ブーム作りのための単なる小細工だ」とする酷評もある。しかしそのウラには自作CMという“奇策”を講じなければならない出版ビジネスの厳しい現状があるようだ。

中国メディアによれば、かつてベストセラーといえば販売部数が5~10万部以上のクラスを指したが、出版マーケットの縮小で今では1万部を超えればいいほう。
近年では07年に易中天の解説書『品三国』が上下巻で500万部、于丹の『于丹<論語>心得』が同年発売半年で230万部、08年に余華の小説『兄弟』が上下巻で100万部をそれぞれ売り上げた。ところがこの3、4年で、ベストセラーとされる本の販売部数は100万部クラスから20万、はては1万部へと激減している。
とりわけ今年2011年の上半期は、大ベストセラーといわれる本が出ていない。販売1万部を超えた新刊がないわけではないが、多くは地図類なのだという。
 

■「iPad」「百度文庫」が紙メディアを圧迫か

急成長を続ける中国の電子書籍市場中国の出版(紙本)ビジネスは、どうして下降気味なのか?
指摘される原因の1つが、昨年中国に上陸した米アップル社のタブレット端末「iPad」(アイパッド)の影響だ。ポータブルメディアプレーヤーや携帯電話、さらには電子書籍が購読できる各種機能が搭載されていて、流行に敏感な若者たちの心をつかんだ。
また、3G携帯の普及や「漢王」「智器」「愛国者」といった国産メーカーの電子書籍リーダーも気を吐いている。
中国でこのほど発表された「2010-2011年度 中国電子図書発展趨勢報告」(中国図書商報社などが実施)によると、中国の電子書籍のユーザーは06年に4300万人だったのが2010年には1億2119万人と、5年間で約3倍の増加。
電子書籍マーケットの総収入は2010年、前年比で203%増と急成長したという。
(中国の電子書籍売上額には、オンラインゲームなど日本ではカウントされない
ジャンルのものまで含まれている)

中国のネットユーザーが今年3月末で4億7700万人に達し、右肩上がりに伸びていることからすれば、電子書籍ユーザーもさらなる増加が見込まれる。
それと相反するかのように、紙メディアの読者が減りつつあるのかもしれない。

※ 「2010-2011年度 中国電子図書発展趨勢発布会」 http://bit.ly/jES0Dh 
※ 「2010-2011年度 中国電子図書発展趨勢報告」 http://bit.ly/kVQXWK 

約2000万件の書籍・文献を無料で提供する百度文庫原因の2つめは、中国の最大手検索エンジン「百度」(バイドゥ)の電子書籍共有サービス「百度文庫」の影響だ。
百度文庫は09年から電子書籍のアップロード・閲読の無料サービスを開始。提供されている文献・書籍は現在、1963万件余りを数える。
著作権侵害行為が国内外でしばしば問題になっているが、同社・百度公司(Baidu, Inc.)は「著作権許可を得ていないファイルを3日以内に削除する」として厳正にこれに対処するという一定の構えを見せている。
05年に米ナスダックに上場し、06年に日本法人を設立した百度は、世界の検索エンジン市場でトップのシェアを誇るという。その電子書籍サービスが紙メディアに与えるプレッシャーは計り知れないというわけだ。
  

■スピード消費財と“浅読”傾向

原因の3つめは、中国の出版マーケットの変化とコンテンツの質の問題。
ある業界関係者はいう。
「かつては于丹、易中天らの人気テレビ講座を書籍化すれば、国民的ヒットになった。しかし今では青春小説、育児教育、健康養生……と読者の興味が分散化され、ベストセラーが生まれにくい時代に。また中国では『ハリー・ポッター』や『ダ・ヴィンチ・コード』のような国や地域、民族、文化を超えて広く受け入れられるようなファンタジーや推理小説が生まれていない」
「昔は丹精こめて1冊の本を作ったものだが、今では出版スピードが加速された。ベストセラーはまるで“スピード消費財”のようであり、読者も“浅読”傾向にある。これでは本のテーマを深く掘り下げ、豊かな内容を練り込むのは難しい……」

ここ中国でも、大きな曲がり角を迎えている出版ビジネス。
そういえば最近は、北京の地下鉄などでも電子化の波に押されて紙メディアを開いている人が少なくなった。
「トイレで耽読」のCM動画が、紙メディアの勢力巻き返しにつながるかどうか?
いずれにせよ中国でも現代が、紙とデジタルの“競合と共生の時代”であることは間違いがない。

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2011年5月13日~5月19日

     
第1位:『一問一世界』

第2位:『超越2012:世界危機与人類的選択』

第4位:『苦難輝煌』
                                         第5位:『大家都有病』

第6位:『藏地密碼10』

第7位:『那些不能告訴大人的事』

第8位:『坼裂』

第9位:『女人財富非常道』

第10位:『歴史的軌跡:中国共産党為什麼能』

            
 

1.『一問一世界』
楊瀾、朱氷・著 江蘇人民出版社 2011年5月初版


中国中央テレビ(CCTV)、香港・鳳凰衛星テレビの人気キャスターを経て、中国人民政治協商会議(政協)第10回全国委員などを歴任。さらには四川大地震の震災孤児支援のための基金を立ち上げるなど、多方面で活躍する中国人女性・楊瀾(43)。
その社会経験20年の精華をつづる。
キッシンジャー、クリントン、ブッシュ(父)、リー・クアンユー、ジャック・ウェルチといった世界の要人との交際秘話から、彼女が見たメディアの世界、人生の転機におけるステップアップ、「勝利」や「成功」への新理解まで。
「幸福力」を得るために必要なのは、夢見る力、創造力、感受性、人と分かち合うことであり、むやみに成功を追い求める「成功総合症」にならないで……と奥深いメッセージを伝えている。 


2.『超越2012:世界危機与人類的選択』(2012年を越える:世界危機と人類の選択)
李華平・著 当代中国出版社 2011年3月初版


古代マヤ族が予言したという2012年の人類最後の日。
地球温暖化や複雑な地域紛争、そして今年3月11日の東日本大震災とそれに伴う福島第一原発の事故、リビアへのNATO空爆……。
近年地球で起きている大事件や災害は、来たる2012年の前ぶれなのか? 人類への天罰なのか――?
新華通信社に勤めたジャーナリストで中国法学会会員の著者が、天文学、物理学、生物学、哲学、文学といった学術的な視点と、人類の発展史、社会進化史といった多角的な観点から、近年頻発する天災や人災の根源を探る。
その上で、明代の儒学者・王陽明の「知行合一」の思想で、末日のきざしを覚える己を救おうと主張する。 


3.『中国震撼』
張維為・著 上海人民出版社 2011年1月初版


4.『苦難輝煌』(苦難輝く)
金一南・著(米) 華芸出版社 2009年1月初版


中国共産党の早期の歴史を、国際的観点から解読した歴史書。「我々はかつて奴隷だった。さもなくば1840年から1949年までの中華民族100年の零落はなかった。我々も英雄を擁した。さもなくば1949年から2050年までの中華民族の100年の復興はなかった」と本書。
中国メディアには「戦略的意識をもって歴史を評価し、なおかつ随筆のような深い味わいがある」と評されている。中国共産党中央宣伝部が全党員、役員幹部に推薦した「重点図書」。
2009年1月初版、その後2010年8月にベストテンに入るなどした息の長い書で、今回は今年7月1日の建党90周年を前に返り咲いたようだ。 


5.『大家都有病』(みな病あり)
朱徳庸・著 現代出版社 2011年5月初版


台湾の人気漫画家・朱徳庸の最新作。
どうやっても自殺できない自殺願望のある3兄弟、毎日いらだっている夫婦、買い物依存症の女性……。クレイジーともいえる現代社会の人々を、ユーモアあふれる独特な視点とタッチで描写する。
朱徳庸の代表作といわれる『双響炮』シリーズは、若い男女のドタバタ生活コメディー。「世界の華人、最愛の4コマ漫画」と評され、大陸では人気俳優・胡兵の主演でドラマ化されて人気を博した。
また漫画作品は、大陸でも『双響炮』をはじめ『什麼事都在発生』(なんだって起こる、04年)、『絶対小孩』(ぜったい子ども、07年)などが出版されて評判となった。 


6.『藏地密碼10』(チベット・コード10)
何馬・著 重慶出版社 2011年4月初版


7.『那些不能告訴大人的事』(大人に話せないあれらのこと)
饒雪漫・著 訳林出版社 2011年4月初版


青春小説作家、饒雪漫が、思春期の子どもを持つ親たちに送る55通の手紙。
「17歳の道の入り口に(ともに)立ち、どうやってその扉を開けて、閉めてやるか」「(子どもに)一番寄り添うべきことは、また離れるべきことは」……など難しい思春期の教育を、子どもの気持ちをふまえて解説。
「親子で読んでもらいたい」成長のためのガイドブック。 


8.『坼裂』(割れる)
歌兌・著 解放軍文芸出版社 2011年1月初


2008年5月12日の四川大地震を背景に、救援隊員・林絮と卿爽が見た被災者たちの恐怖と希望、美と醜、善と悪、崇高さと卑しさ……。
大地の崩壊は、まるで鏡を割るかのように、それぞれの内心にヒビを入れてしまったのか?
複雑な社会と人を、時に鋭く、時にユーモアを交えて活写。中国でも近年は珍しいというヒューマニズム文学の大作だ。 


9.『女人財富非常道』(女性の財テクは大正解)
李南・著 広西師範大学出版社 2011年5月初版


話題となった前作の『我最想要的理財書』(私が一番欲しいと思う財テク書、2010年5月初版)の姉妹編。
中国テレビ各局の経済番組を受け持つ「女性経済キャスター、ナンバーワン」といわれる著者が「お金を稼ぐのは技術、使うのは芸術」「財テクは一生の勉強」として保険、不動産、株券、ファンド、宝石・貴金属などへの投資方法をわかりやすく解説。
不動産の帰属や婚礼費用、子どもへの財産分与、子どもの財テク学習法などを理解して、生活をより豊かにしましょうと呼びかけている。 


10.『歴史的軌跡:中国共産党為什麼能』(歴史の軌跡:中国共産党はなぜ成し得たか)
謝春濤・主編 新世界出版社 2011年3月初版


中国国務院(政府)主管の新聞出版総署が推薦する、建党90周年の「重点図書」。
中国共産党がなぜ成し得たか……なぜ「新中国を建国できたか」「世界第2の経済体に発展させ得たか」「社会主義と市場経済の結合を実現させ得たか」「震災を克服し、北京五輪を成功させたか」「約8000万党員の管理ができる大政党なのか」といった13の謎に答える。
大規模党員から一般読者まで、幅広く楽しめるという「通俗的党史読み物」。 


 
     

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)
訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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