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2009年8月   発禁本『廃都』再版に、どんな意味が?
   
   

再版された『廃都』の表紙大胆な性描写が問題だとして、中国で発禁処分を受けていた社会派小説『廃都』がこのほど16年ぶりに国内で再版されたことが、注目を集めている。
中国の現代作家・賈平凹(チア・ピンワァ)氏の代表作の1つ。日本をはじめ、フランス、ロシア、韓国などでも翻訳本が出版されており、仏5大文学賞の1つ「フェミナ賞」を受賞するなど海外での評価も高い。
中国・作家出版社からこのほど正式出版されたことに対して、国内メディアは「なぜ今、再版されたのか」などとこぞって取り上げている。だが、実際には削除された箇所はそのまま、文字数もページ数も従来とほぼ同じで「真の解禁とはいえない」(『南方日報』)とのシビアな見方もある。
 ましてやインターネットが普及した現在、中国当局が検閲を強化しているとはいえ、ネット上には際どい性描写が氾濫している。かつては一大センセーションを巻き起こした『廃都』だが、もはや当時のようなインパクトはないと見る向きもある。
21世紀の現代中国によみがえった小説『廃都』と、その復活が意味するものとは――。 

   
 

■現代版『紅楼夢』と評判に

長編小説『廃都』は1993年、雑誌『十月』での連載を経て、北京出版社から出版された。初版10万部で、1カ月後には印刷部数が120万部に達したという。さらに別の出版社から同時に出版されるという「租版」(半正規版)や、違法にコピーされる「盗版」までも合わせると、出版2年で印刷部数は1200万部を超えたとも見られている。
それだけのセンセーションを巻き起こしたのは当時、本書が「現代版の『紅楼夢』であり、『金瓶梅』だ」といわれ、その大胆な性描写に注目が集まったことから。「これは奇書か、悪書か」といった賛否両論が渦巻いたことも、ブームに拍車をかけたようだ。

物語は古都・西安をモデルにした「西京」を舞台に、何人もの女性と不倫を重ねる主人公や権力に取り入る画家など、文化人たちの退廃的な暮らしを描いている。「80年代の中国社会の風俗史である」(『南方日報』7月31日付)とも評されている。
しかし本書は、いろいろと目立ちすぎたのだろうか? 
「色情描写が入り混じり、格調が低下している」として93年、中国国家新聞出版総署から発禁処分を受けたのである。
海外では日本語(吉田富夫訳、中央公論社、1996年)、英語、フランス語、ロシア語など各国語に翻訳され、仏5大文学賞の1つ「フェミナ賞」を受賞するなど高い評価を受けていたが、中国国内では“黙殺”された。そのため発禁以降、いわば必然的にコピー版が世にはばかることになったのである。

■「□□□」から「……」へ

削除箇所は「・・・・・・」に今年7月、作家出版社から“初版”として出された新版の『廃都』は、ショッキングピンクの鮮やかな表紙が目を引く。
同社では、賈平凹氏の代表作である『浮躁』と茅盾文学賞受賞作の『秦腔』と合わせて、「賈平凹三部作」としてセットでも売り出している。8月8日には、三部作発売の記念イベントが西安の「賈平凹文学芸術館」で開かれたようだ。

16年ぶりの発禁解除について、国内メディアはこのところ「なぜ今、再版?」「(性描写は)解禁されたか?」などとこぞって取り上げている。
ところが大方の期待に反して、北京出版社の旧版と作家出版社の新版とでは、内容から文字数、ページ数にいたるまで「ほぼ同じ」(『新京報』7月30日付など)。
旧版で「□□□」と示された作家自らの削除箇所が、新版では「……」という記号に変更されたくらいだった。これは新版に序言を寄せている文学評論家・李敬沢氏の提案で、「“□□□”は書き損ないで、タブーを犯したことを意味するから」だという。見た目を重視したものだろう。
一方、これでは「出版社側も改訂を認めるが、真の解禁とはいえない。依然、言葉については慎重な態度のままだ」(『南方日報』同)という至ってシビアな見方もある。
さらには「□□□」の伏せ字がかえって読者の想像力をかきたてたことは事実で、違法業者の中には、独自に穴埋めして印刷するものまでいたという(『北京晩報』8月7日付など)。新版での改訂は、違法コピー対策も兼ねていたのかもしれない。。

■20年後に光り輝く

書店に並べられるようになった『廃都』国家新聞出版総署の審査を経て『廃都』が再版されたことについて、賈平凹氏はこう語る。「まず、社会の進歩を示すものだ。社会環境にゆとりが出てきたし、(私の)文壇との関係も回復された」(『華商報』―『新京報』同)
『廃都』は作家の半生にとって、最も暗い影を落とした、災難の多い作品でもあった。
当代きってのベストセラー作家が「一夜にしてチンピラ作家、反動作家、退廃作家といったレッテルを貼られたんです」(『南方日報』同)

しかし当時、国学大師の季羡林氏(2009年7月11日死去)が「『廃都』は20年後に光り輝くであろう」と語ったことが、賈平凹氏を支えたとも。
「中国現代小説の性描写には、すでに『廃都』を超えているものもある。『廃都』が今の時代に生まれていれば、それほど反感を買わなかったはず。ある高名な評論家に『(出版は)時宜にかなっていなかった』といわれたが、まったくそれは図星だった」

中国のインターネットユーザーが現在3億3800万人を超え、際どい性描写や画像などが氾濫しているご時世である。かつては一大センセーションを巻き起こした『廃都』だが、もはや当時のようなインパクトはないと見る向きもある。
しかし、現代作家の馬原氏は、前述の『南方日報』のインタビューでこう語る。
「『廃都』は、現代文化人(知識分子)の退廃した状態を書きつくした。現代文学では前例のなかったこと」
「しかも先見性があった。30年前の文化人は“武士は食わねど高楊枝”だったが、今ではどうだ。多くの作家が、権力とカネを前に、媚びへつらっているではないか。『廃都』は今でも文化人の鏡。自分が文化人だと思うなら、これをよく読み返すがいいだろう」

文学評論家の謝有順氏は「『廃都』の再版は、中国出版界がいっそう開かれた状態で歴史に向き合い、読者の興味に向き合おうとする現れ。疑いなく中国文化の重要なできごとだ」とこれを高く評価している。

発禁処分から16年にして再版へ――。
希有なプロセスをたどった『廃都』だが、それはやはり時代を超えて読み継がれる名作の証なのかもしれない。

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2009年8月5日~8月12日

     
第1位:『蒼黄』

第2位:『貨幣戦争2 金権天下』

第4位:『無条件信任的力量』

第6位:『季羡林読書与做人』

第7位:『山西煤老板』

第9位:『全世愛Ⅱ・絲婚四年』
 

1.『蒼黄』
王躍文・著 江蘇人民出版社 2009年8月初版


現代作家・王躍文の官界小説。タイトルの「蒼黄」とは「青に染まれば青く、黄に染まれば黄色になる」という墨子の言葉から取られており、大きな変化を意味するという。
中国・烏柚県の県幹部には、2人の劉星明という人物がいた。1人は中国共産党・県委員会の書記、1人は常務委員。
この2人をとりまき、陳情が原因で精神病院に送られた県の元物価局長、元財政局副局長、商売がらみの陳情があいついだ民営企業家の県知事助役など“官界”にかかわるさまざまな人間関係が描かれる。
「王躍文の文字には、深い憂いと鋭い批判精神がしみこんでいる」「官界小説の第一人者が、蟄居10年にして剣を磨いた」などと評判になっている。 


2.『貨幣戦争2 金権天下』
宋鴻兵・編著 中華工商連合出版社 2009年8月初版


2007年のベストセラー『貨幣戦争』(中信出版社)の第2弾。著者は、米ファニーメイ(連邦住宅抵当公庫=住宅安定供給を目的に設立された特殊銀行)と、米フレディマック(連邦住宅金融抵当金庫)のハイレベル・コンサルタントなどを歴任し、現在は国際金融学者として知られている。
本書は、欧米を中心とする国際金融勢力の歴史や発展、その秘められた情報網をひもとき、新世代の中国戦略家たちの参考に、とまとめられた。
世界統一通貨は2024年に実現するか? 中国が保有する巨額のドルはどうなる? といった関心事についても、渾身のレポートを寄せている。。 


3.『明朝那些事儿(大結局)』(明朝それらのこと 完結編)
当年明月・著 中国海関出版社 2009年4月初版


4.『無条件信任的力量』(無条件の信用の力)
朴鐘夏・著(韓) 千太陽・訳 中国友誼出版公司 2009年7月初版


その昔、アフリカのある青年が「9頭の雌牛」を結納にすると約束して、意中の女性だった酋長の娘との結婚を成し遂げたという。
本書はアフリカに伝わるこの「9頭の雌牛」の物語をベースに、無条件で相手を信用すること、互いに信頼しあうことの大切さと、そこから生まれる不思議なパワーについて述べている。
中国の不動産デベロッパーの第一人者・潘石屹氏(SOHO中国会長)をはじめ、ビジネス界、教育界など各方面から賞賛の声が寄せられている。


 5.『盗墓筆記(伍)』(墓盗掘ノート5)
南派三叔・著 中国友誼出版公司 2009年7月初


6.『季羡林読書与做人』
季羡林・著 国際文化出版公司 2009年7月初版


今年7月11日に北京で死去した、現代中国を代表する言語学者で文学者の季羡林氏(享年98歳)。中国では「国学大師」と敬称されている。
本書は、季羡林氏が最後に版権契約をしたという1冊であり、その学問の生涯や人生、師友をテーマにした散文、随筆など60本あまりを収めている。
帯には、かつて温家宝首相が氏の94歳の誕生日に寄せた「先生の人品を深く敬慕する」という祝辞が記されている。。 


7.『山西煤老板』
王進・著 作家出版社 2009年7月第4刷


“山西煤老板”(山西省石炭企業オーナー)という特殊なポストに焦点をあて、それを利用して展開される官界と企業との共謀をあばく。官界の腐敗といった現代中国が直面する問題にメスを入れた“反腐敗小説”だ。
中国のめざましい経済発展を追い風に、一夜にして成金になった“山西煤老板”たち。官界と結託し、地位と名誉まで手に入れていくのだが……。正義と悪の戦い、人間性への問いかけなど、中国暗部の暴露にとどまらない社会派のヒューマンストーリーとなっている。


 8.『暮光之城:破暁』(トワイライト:Breaking Dawn)
ステファニー・メイヤー著(米) 張雅琳ほか訳 接力出版社 2009年5月初版


 9.『全世愛Ⅱ・絲婚四年』(SO IN LOVEⅡ 絹婚4年)
蘇小懶・著 長江文芸出版社 2009年7月初版


2008年6月に出版されたラブストーリー『全世愛』(全世界所有的愛)の第2弾。
南方出身の典型的なこがらな男性・木木と、北方出身の典型的な大がらな女性・小懶の結婚4年の生活を描く。“80後”(1980年代生まれ)の女性ライター・蘇小懶のコメディタッチの私小説で「爆笑小夫妻日記」とも。
「独身族必見の恋愛宝典」「恋人を誤らないための恋愛結婚指南」などとコピーにある。


10.『好媽媽勝過好老師』
尹建莉・著 作家出版社 2009年5月第5刷


 

 
     

■北京便り――おわりに
 
後海とハスの花この夏は、降水量が少なかったといわれる北京ですが、8月中旬のここ数日は、曇りや雨といった、しのぎやすい天候が続いています。
暑い盛りの「三伏」も過ぎようとしています。本格的な秋の到来ももうすぐでしょう。

北京市の中心部、什刹海公園の人工湖(前海・後海・西海)のほとりは今や、おしゃれなバーやレストランが立ち並ぶ北京のホットスポットの1つ。馮小剛監督の大ヒット中国映画「非誠勿擾」で、ロケ地となったことでも注目を集めました。
 6月末ごろから咲き始めたハスの花も、もうそろそろ終わりの季節。週末のこの日、後海(ホウハイ)の湖には、最後の花を楽しもうとする人々のボートがカラフルに浮かんでいました。

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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