中国・本の情報館~東方書店~
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2009年6月   オンライン書店の隆盛、業界も四苦八苦
   
   

老舗の王府井書店でも8折のディスカウントセールここ数年、中国大陸でシェアを伸ばすオンライン書店だが、これに対する一般書店や出版業者が本の販売競争に苦心している。
インターネットの急速な普及でオンライン書店の影響力が増したこと、さらには過当競争によって、オンライン書店を中心に本の定価が値崩れを起こしたことが、その主な原因だ。
中国では日本のような「再販制度」(再販売価格維持制度)が設けられていないため、業界からは法の整備を求める声も上がっている。出版大手がスクラムを組み、小売に対して「定価制度」を呼びかけようとする動きもある。
かつてない市場経済の荒波にもまれる、中国の出版・販売業の現状とは――。 

   
 

■オンライン書店、シェア10%超に

Amazonでは今月のベストテン書籍も3割引きに中国の民間の出版・販売業者らが組織する「非国有書業工作委員会」はこのほど、当地で「中国にはどんな出版価格制度が必要か」をテーマとするフォーラムを開催した(『中国新聞出版報』)。
席上、同委員会が明らかにしたところによると今年の第1四半期、オンライン書店の販売総額は、全国の小売市場における10%超を記録。さらにオンライン書店による大規模な価格戦は、中小出版業者に対して平均マイナス5%、金額にして15億元(1元は約14円)の損失をもたらしたと試算されるという。同委員会が今年1月、全国の国有・民営企業合わせて約50社に電話・訪問調査をした結果である。

オンライン書店の隆盛という結果が示すとおり、中国のネットユーザーは2005年に1億人の大台に乗り、08年末には約3億人と急増中。
ユーザー(顧客)の拡大に加えて、オンライン書店の魅力は、一般書店に比べて商品が格安であることだ。大手の中国アマゾン「卓越亜馬遜」や「当当網」などでは、一般書籍が7.5~8掛けのディスカウント価格で売られているのが普通である。
中国の出版・販売市場は現在、「(中国出版集団に加盟する)新華書店40%、(民営の)一般書店40%、オンライン書店20%という三者鼎立の状態だ」(同委員会)といわれるが、ネットの普及で、オンライン書店のシェア拡大は目に見えている。
これに対して「(大幅ディスカウントをする)強気な販売戦略は、業界の利益水準を下げるばかりか、人々が本の適正価格に疑いを抱いてしまう」と危機感をつのらせる業者もいる。

■日本の再販制度にも関心

出版・販売業を襲うかつてない市場経済の大波に、どう立ち向うべきなのか――。
フォーラムでは、西側諸国の書籍販売システムとして、イギリス、アメリカに代表される「自由価格システム」と、ドイツ、フランスに代表される「固定価格(定価)販売システム」(時限再販)、それに日本の「再販制度」がそれぞれ紹介されたという。(注)

日本で採用されている再販制度とは、文化の普及と発展のために「新聞、書籍、雑誌、レコード、音楽用テープ、音楽用CDの6品目は、メーカーが小売価格(定価)を決めて、販売業者で定価販売することができる制度」のこと。
つまりは文化をひとしく普及させ、著作権を保護するために、全国一律で価格を維持する――というのがその趣旨である(古書や時限販売のCD、ブックフェアでの割引等をのぞく)。
この制度のメリットは、業者が安定供給を行えることであるが、デメリットは、自由競争がなく、値引きがなく、販売サービスが向上しないことである。

(注)イギリスには1995年まで再販制度があったが、廃止された。アイルランド、スウェーデン、フィンランド、オーストラリアなどにも、もともと再販制度や取引慣行法があったが、廃止された。

■中国でも「定価制」が実現?

当コラム筆者の書籍も約25%OFFで販売・・・フォーラムの席上、出席者の中からは「現在、出版は容易になったが、販売はますます厳しくなった。各社が価格を抑えるばかりか、書店が割引を率先する。結果、利益率が下がるので(どれだけ売っても)販売部数に大きな意味がなくなってしまう」「ルール化された一定の販売制度を求めたい。将来の販売のあり方としては、ディスカウント争いではなく、本の質とサービスのよしあしで競争するべき」などという声もあった。

再販制度が確立されていない中国では現在、出版大手がスクラムを組み、小売に対して「定価制」を呼びかけようとする動きもある。科学技術系出版社の連合体がこれまでに、大手オンライン書店2社においては7.9掛け以下で書籍を販売しないとする「限定価格販売」を始めている。
同委員会の陳定方副主任は「目下の対策としては、出版大手が共同で書店に対して定価販売しなければ本を卸さない、とする方法。それに中小の書店が取次会社に対して、オンライン書店への“適正価格卸売”をしなければ(取次の)本を売らない、とする方法もある」といくつかの対策案を示した。

フォーラムでは議論の結果、出席各社のほとんどが「定価制」採用に同意したと伝えられる。
今後は業界多数の賛同を得たうえで、明瞭なシステム化が図れるかどうかが焦点になりそう。法制化にはなお時間がかかるだろうが、同委員会の張守礼顧問研究員は「業者組織の“自律”と政府による立法化は(目標の)最終ゴールだ」と呼びかけたという。

中国が「社会主義市場経済」のいしずえとなる改革・開放政策をスタートして31年。
特色ある市場経済を導入する中国でも、模索の末にやがては本の定価制を実現させる日がくるのかもしれない。

※関連レポート「北京に激震か? 壮絶な価格競争」(北京便り2006年6月号)

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2009年6月4日~6月10日

     
第2位:『暮光之城:破暁』

第3位:『孟子的智慧』

第5位:『許我向你看(終結篇)』

第8位:『好媽媽勝過好老師』

第9位:『千山暮雪』

第10位:『我執』
 

1.『明朝那些事儿(大結局)』(明朝それらのこと 完結編)
当年明月・著 中国海関出版社 2009年4月初版


2.『暮光之城:破暁』(トワイライト:Breaking Dawn)
ステファニー・メイヤー著(米) 張雅琳ほか訳 接力出版社 2009年5月初版版


アメリカのティーン向けベストセラー小説の完結編となる第4巻。
霧の町フォークスに引っ越してきた、おとなしい高校生ベラと、そこで彼女が出会う美青年のヴァンパイア・エドワードとのロマンスを描く。アメリカではこれを原作にした映画が2008年11月に公開され、記録的な大ヒットに。日本では今年4月に公開された。
小説の日本語版は『トワイライト』全13巻がヴィレッジブックスから刊行されている。


3.『孟子的智慧』(孟子の知恵)
傅佩栄・著 中華書局 2009年6月初版


大人気のレクチャー番組、中国中央テレビ(CCTV)「百家講壇」の講座をまとめた。著者は、米エール大学哲学博士で、台湾大学哲学科教授。
本書では、中国戦国時代の儒学者・孟子の生涯にはじまり、その教えとなすところの「孝順」(親孝行)、「仁政」(思いやりある政治)、「性善」(人の天性は善なり)の重要性について、わかりやすくレクチャーする。
なかでも孟子がとなえる人生最大の快楽とは、「万物皆備于我矣」(万物みな我に備われり)という心境であり、内面の充実をはかることだという。
中国では近年、「孔孟の教え」などの国学ブームが起きているが、拝金主義がはびこる現在、改めて自分の精神世界を見直そうとする人が増えているのかもしれない。


4.『小団円』
張愛玲・著 北京十月文芸出版社 2009年4月第2刷


5.『許我向你看(終結篇)』(君を見るのを許して)
辛夷塢・著 江蘇文芸出版社 2009年6月初版


「80後」(80年代生まれ)の若手女流作家が描く、甘く切ない青春物語。天涯孤独の少女・謝橘年は、幼なじみの韓述、巫雨との間で心がゆれ動いていた。なぜなら一人は殺人犯の息子であり、一人は検察官の息子であったから。やがて物語は、感情のもつれの末に韓述が巫雨を死に至らしめる……といった衝撃の展開となっている。
中国では、若い女性を中心に人気を集めた小説で、シリーズを原作にしたテレビドラマ化も進められている。


6.『不抱怨的世界』(A Complaint Free World)
ウィル・ボウエン・著(米) 陳敬旻・訳 陝西師範大学出版社 2009年4月初版


7.『老子的帮助』(老子の助け)
王蒙・著 華夏出版社 2009年1月初版


 8.『好媽媽勝過好老師』(よい母はよい教師に勝る)
尹建莉・著 作家出版社 2009年5月第5刷


サブタイトルに「教育専門家、16年の子ども教育手記」とある。著者の尹建莉さんは教育学の専門家。
尹さんには優秀な一人娘がいる。彼女は高校卒業までに2回飛び級をしたばかりか、16歳で受験した中国の大学センター試験で、理工系トップの大学・清華大学の合格点をはるかに超えたという実力の持ち主だ。
現代版の家庭教育法を示した本書は、子どもの成績アップをいかに図るかだけでなく、子どもをいかに正しく育てるかについて、理論と実践の両側面から述べている。
「幸せな家庭は5ツ星ホテルと同じ」「話を聞く親になる」「構わないのが最良の管理」など、著者自身の子育ての経験をふまえた教育法はわかりやすく、しかもきわめて説得力を持っている。中国に数多ある教育書のなかでも、本書がとくに受け入れられた理由だろう。


9.『千山暮雪』
匪我思存・著 新世界出版社 2009年5月初版


孤独でひたむきな女性・童雪の前に現れる3人の男性たち。初恋の相手・蕭山と素性の知れない慕振飛、そして傍若無人の野獣のような莫紹謙。三者三様の愛がそれぞれにもつれあい、絡みあっていく。「究極のもつれあい恋愛小説」とは編集サイドのキャッチコピー。
 作者の匪我思存は、この4年余りに『佳期如夢』『景年知幾時』など16冊の青春小説を上梓した、今をときめく若手女流作家。


10.『我執』(私が執る)
梁文道・著 広西師範大学出版社 2009年5月第2刷


1970年生まれの香港の文化・時事評論家であり、コラムニストの梁文道の作品集だ。そのほとんどが2006年から2007年にかけて書かれたコラム。
ふだんの著者は「泰山のように堂々とした、理性と叡智を持つ著名人」だが、本書には「重々しい、沈うつな弱さや焦り」といった著者の内面世界も描かれているという(評者まえがき)。
「禁欲」「真理」「暗恋(片思い)」「回帰」「私の病歴」など、珠玉のコラム約130本が収められている。 


 

 
     

■北京便り――おわりに
 
21世紀版『新青年』表紙案中華民国時代の1915年に陳独秀によって雑誌『新青年』が創刊されてから80年余り。この『新青年』を中国の若手人気作家たちで復刊しようとする動きがあります。
編集主幹は、「80後」作家の呉懐堯。
読者対象は、大学生や社会人など18~38歳の若いインテリ層。
内容は、インタビューや文学作品が中心となりますが「今はやりのライトノベルでもなければ、娯楽小説でもない」(出版元の中国人民大学出版社)。
「独立思想、自由精神」といった陳独秀の理想主義を継承しながら、新青年の問題――就職、教育、人生の成功などについて考える場を提供するのが創刊の趣旨なのだそうです(『中国新聞』『新京報』電子版より)。

陳独秀の『新青年』は、旧習を打破して口語体による文学改革を起こした新スタイルのオピニオン雑誌でした。
中国の愛国運動の原点となった「五四運動」から90周年となる今年、21世紀版の『新青年』が見事に花開くのかどうか、注目されています。

※写真は表紙案の1つ(『中国新聞』電子版より)

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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