1.『蓮花』
安妮宝貝著 作家出版社 2006年3月初版
『八月未央』『薔薇島嶼』など、その作品が立てつづけにヒットをとばす若手女流作家、安妮宝貝の最新長編。
重い病におかされていた慶昭は、高原へ行き、静かに死を待とうと思った。
事業が成功し、家庭生活も円満だった善生は、物質的な幸せにどこかやりきれなさを覚えていた。あるとき利益追求の日々に別れを告げて、妻とも別れ、単身チベット自治区の墨脱をめざす。旧友の女性、内河を尋ねるためだった。
そんな旅の途中で出会った善生と慶昭。
善生は自分のことや内河との昔話を、慶昭に話して聞かせる。目の前には、蛇行してつづくヤルツァンポ河の流れと急峻な谷が迫っていた。それはまるで、善生の苦痛と変化、離散の人生のようであった……。
現代中国の都会人が模索する愛と信仰、生命の本質をほりさげて描く。以前にもまして美感と筆力、重厚さが加わったと評判の作品に仕上がっている。
2.『印記』(心の記憶)
傅彪/張秋芳著 長江文芸出版社 2006年1月初版
張芸謀監督の『幸福時光』(至福のとき)、馮小剛監督の『天下無賊』など数々の映画やドラマ、舞台に出演。中国映画のオスカー「金鶏賞」の最優秀助演男優賞を受賞するなど幅広く活躍した俳優・傅彪(フー・ビャオ)さんが、昨年8月30日、肝臓がんのために亡くなった。42歳の若さだった。
本書は、その傅彪さんと妻の張秋芳さんの共著による回想録。病床で綴られた本人のエッセイ8本と、張秋芳さんの回想、張芸謀監督や俳優の葛優、歌手の韓紅ら友人たちのことばが収録されている。
「……お腹がすけば、食べればいいさ/眠いときには、眠るのがいい/大きくなったら、子どもをつくり/年をとったら、大事にされる/困ったときには、先生がいて/難しくなれば、友達がいる/病気になったら、健康がいい/不治の病も、行ってしまえば最高だ!/偉大なものに近付いたなら、心は最も美しくなる」(「美と美麗」より抜粋)
演じることへの情熱と、家族や友人へのひたむきな愛。ページを開くと、傅彪さんの短くもすばらしい"芸術人生"がよみがえるかのようだ。
3.『騙局』(デセプション・ポイント)
ダン・ブラウン著(米)朱振武・信艶・王巧俐訳 人民文学出版社 2006年3月初版
世界的ベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』の作者による待望の中国版最新作だ。米国家偵察局員レイチェルは、大統領から直々にNASAの大発見を確認してくるよう命ぜられる。時あたかも大統領選のさなか。レイチェルの父は、なんと現職大統領の対立候補であった。
ホワイトハウスとNASA、国家偵察局の政治的かけひきが絡み合い、その輪のなかにレイチェルが巻き込まれていく。アメリカに実在するという機構や先進技術が随所に織り込まれており、リアリティーも十分。「歴史もの」「宗教もの」で鳴らしたストーリーテラーの現代版ミステリーを堪能することができる。
日本では、角川書店から『デセプション・ポイント』が翻訳出版されている。
4.『Outsider 局外人③』(アウトサイダー)
可愛淘著(韓) 中国城市出版社 2006年3月初版
『局外人』のパート1、2がコンスタントに売れ続けるうちに、早くもその第3部がベストテンの上位に登場。作者はネット世代の若者を中心として、中国でも絶大な支持をほこる韓国の女流作家・可愛淘(中国語訳)だ。
様々な謎につつまれた「江家」にひきとられた孤児の韓雪理の運命は? 時が移り、江家も江家の兄弟の天空、尹湛も変わっていった。そして謎がしだいに明らかになり、彼らが迎える感動の結末とは?
可愛淘の「最高傑作」の呼び声も高い、ミステリータッチの青春小説。ウェブサイトを通じた作品公開やPRが功を奏してか、可愛淘ファン「淘迷」(タオミイ)の心をしっかり掴んだようである。
5.『達・芬奇密碼』(原題『THE DA VINCI CODE』)
ダン・ブラウン著(米) 朱振武・呉晟・周元暁訳 上海人民出版社
6.『藏獒』(ザンアオ)
楊志軍著 人民文学出版社
7.『狼図騰』(オオカミのトーテム)
姜戎著 長江文芸出版社
8.『老店・全聚徳』(老舗・全聚徳)
古榕編著 長江文芸出版社 2006年1月初版
『老店(しにせ)』は、北京ダックの名店・全聚徳を舞台にくりひろげられる人間の悲喜劇を描いたしばい「天下第一楼」の映画版。1990年にフィルム化されて大ヒットした。昨年の中国映画誕生100週年には、「伝統の名作映画100本」の1つに選ばれた。
本書は、その監督・古榕みずからが作品『老店』をふりかえるもの。内容や出演スターの紹介にはじまり、当時のニュースや評論などを余すところなく収録。じっさいの全聚徳の史料や写真なども収められ、読みものとしても、また資料としても十分な価値がある。中国映画ファン必読の一冊だろう。
9.『細節決定成敗』(ディテールが成敗を決める)
汪中求著 新華出版社
10.『一座城池』(THE IDEAL CITY)
韓寒著 二十一世紀出版社 2006年1月初版
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