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中国映画のコラム 第9回 .

東京中国映画週間 今年の見どころ

  加藤浩志
     
 今年も映画祭の秋がやってきた。東京国際映画祭(10月22日~31日。去年より1日長い)、東京フィルメックス(11月21日~29日)の二大映画祭、近隣では釜山国際映画祭(10月1日~10日、相変わらずアジア映画が強い! 賈樟柯の新作もあるし、シンガポールのロイストン・タンの『3688』も来る)、ハワイ国際映画祭(11月12日~22日)、台北金馬国際影展(11月5日~26日)と、映画ファンにはまさに席の暖まる暇もない……などと、昨年の原稿をコピペしている時ではなかった。さあ、今年も東京国際映画祭の裏で(いえ、共催/提携企画でした)東京中国映画週間(10月22日~28日)が開催される。
 昨年の一番の話題と言えば、揺滾教父・崔健の初長篇監督作品『藍い骨』上映だった。改革開放前の中国で圧殺されるロックンロールと、それによって崩壊する家庭、そして今、ロックンロールがふたたび家族を結びつける、という、感動的なストーリー(私見です)。開催間近になって急遽追加されたこの作品だったが、崔健監督もゲストとして来日、オープニングイベントでは、福田康夫元総理と並んで鏡割りを行うという大サービス。さらに上映時には、撮影のクリストファー・ドイルとともに登壇、ファンとの交流も行われた。
 今年のラインナップは、『藍い骨』に匹敵するような問題作はないものの、最新作、話題作が目白押しだ。

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 オープニングイベントを飾るのは、①『モンスター・ハント』〔原題:捉妖記〕。実写とCGアニメーションによるコミカルなモンスターを共演させた時代劇ファンタジーである。この夏休み映画で、記録的大ヒットとなった作品。
 今回は、さらにアニメーションが2作上映される。「黒猫警長」といえば、80年代に一世を風靡した中国国産キャラクターであり、いまだに、中国でテレビをつけると昔製作されたアニメが放送されていたりする。今回劇場版大長編として復活した②『黒ネコ警部 宇宙船グリーンスター』〔原題:黑猫警長之翡翠之星〕では大胆にSF色を加味し、黒猫警長の大活躍が楽しめそうだ。
 黒猫警長が現代中国を代表するキャラクターとすれば、中国の古典ヒーローのトップスターは孫悟空だろう。孫悟空のアニメと言えば、戦時中日本でも上映され手塚治虫が感動したという万兄弟の『鉄扇公主』(日本での公開タイトルは『孫悟空 鉄扇公主の巻』)から、解放後も『大鬧天宮』はじめいくつも作られ、そのキャラクターは日本に渡りサントリーウーロン茶の宣伝にも一役買った。今回上映される③『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』〔原題:西游記之大聖帰来〕も、筆者は実は、また孫悟空か、と見くびっていた。また、あのにょろにょろ動く孫悟空だろ? 21世紀的技術を駆使しながら、どうせ中国アニメの孫悟空だろ? と、たかをくくっていた。すみません! 全面的に謝ります! 世界のアニメーションやハリウッドヒーローの洗礼を受けて、中国アニメ界が黙っているはずがなかった! まず冒頭の「天宮を大いに鬧(さわが)す」のシーンが、ものすごい。赤いマフラーをなびかせた孤高のヒーロー・孫悟空が、天空を縦横無尽に駆け巡りながら、二郎神君やら巨霊神やらナダ太子(三太子)やらを叩きのめしていく。この息もつかせぬアクションシークエンスがいい。で、もちろんお釈迦様によって山に封印されるわけだが、五百年後に解放された悟空、もううらぶれたおっさん状態。過去の栄光にしがみつきながら、やさぐれている負け犬になってしまった。はたして悟空に復活の日が来るのか? 中国では7月に3Dアニメーションとして公開されると、『カンフーパンダ2』を抜いて、たちまち国内アニメーション史上第一位の興行成績を収め、すでに続編製作が決まっているという。
 さて、いま中国で一番の女優といえば周迅だが(個人の感想です)、今年はその周迅主演のラブコメが2作も入っている。
④『更年奇的な彼女』〔原題:我的早更女友〕は昨年末公開の作品。監督は、韓国のクァク・ジェヨン(郭在容)。そう、チョン・ジヒョン主演の『猟奇的な彼女』(2003)、綾瀬はるか主演の『僕の彼女はサイボーグ』(2008)に継ぐ“彼女”シリーズなのだ。失恋が原因で若年性更年期障害になってしまった周迅。ぶち切れ気味の彼女に当たられるのが草食系男子・佟大為。はたして二人の間に愛は芽生えるのか。
 もう一本は、香港の人気監督・彭浩翔(パン・ホーチョン)がメガホンを執った⑤『愛のカケヒキ』〔原題:撒嬌女人最好命〕。原作は、某マスメディアの記者兼コラムニストの羅夫曼が書いたライフスタイル本『会撒嬌女人最好命Everyone Loves Tender Woman』。しかし、もちろん彭浩翔だから単なるHow to映画にはしていない。大陸作品ゆえ毒は控え目だが、アイロニーをたっぷりと効かせた作品に仕上がっている。やり手経営コンサルタントの周迅は、学生時代からの友人で会社では部下の黄暁明を密かに愛し、仕事上でも引き立てたりしているが、黄暁明は周迅を友人としか思っていない。出張で台北に出かけた黄暁明は、ばりばりのキャリアウーマン周迅とは対照的な、甘え上手でぶりっ子の女の子にひっかかり、たちまち恋に落ちる。ようやく慌てた周迅は、上海の社交界で活躍する友人に相談、友人はさっそく美女軍団を召集、周迅をモテる女に改造するプロジェクトに着手する。男まさりの周迅が、着飾ってみたり、男が守りたくなる女の仕草を練習したりと、周迅ファンにとっては垂涎のシーン満載だ。これも昨年末公開で、クリスマスシーズンは周迅vs周迅の戦いとなったわけだ。
 他の作品もライトなラブストーリーが多いのが今年の特徴だ。
⑥『あの場所で君を待ってる』〔原題:有一个地方只有我們知道〕は、四小名旦のひとり、徐静蕾監督による、プラハを舞台に描いた作品だ。主人公は失恋の痛手をいやすため、プラハへとやってきて、チェロ奏者と知り合う。この古都は昔、祖母(徐静蕾自身が出演)が暮らし、恋をした街でもあった。チェロ弾きの青年を演ずるのは、元EXOメンバーのクリスこと呉亦凡ということで、かなりチケットが取りにくい状態になっているらしい。でも、脚本を王朔が担当した、ということの方が筆者には興味深い。
⑦『ユア・マイ・サンシャイン』〔原題:何以笙簫默〕の原作は、大流行のネット小説で、テレビドラマ化もされた。大学時代、趙黙笙(楊幂)はイケメンの何以琛(黄暁明)に恋していたが、以琛に血のつながっていない妹(アンジェラ・ベイビー!)が出現、恋のライバル登場に黙笙は身を引き渡米する。数年後二人は再会するが、黙笙は自分がまだ以琛を愛していることに気づく。はたして二人の運命は……? 共演に『戦場の花』の(←古い!)陳冲、『ラブソング』の曾志偉、そしてまたもや元EXOのタオこと黄子韜(ということはこれもチケット入手困難?)。また、先頃黄暁明とアンジェラ・ベイビーの結婚も報じられ、話題に事欠かない作品である。
⑧『ひだりみみ』〔原題:左耳〕は、台湾のアイドルグループ小虎隊出身で、近年は『甜密殺手』などで中年の魅力も増してきた蘇有朋の第一回監督作品。左耳の聞こえない少女李珥と不良少女黎吧啦の友情を中心に描く、まぶしくも切ない青春偶像劇。
⑨『君といた日々』〔原題:匆匆那年〕は、張一白監督、主演は『翻滾吧!阿信』で大きな成長を遂げ目下大活躍中のエディ・ポン(台湾)。少し昔の青春を振り返るノスタルジックな作品。といっても、中心となる世代は八〇后なのだが。主題歌は王菲、そのほか蘇慧倫、動力火車、任賢斉、張信哲ら、九〇年代を象徴する楽曲が続々登場する。
⑩『再愛』〔原題:約定倒計時〕は、結婚願望の強いアラサー女子と結婚恐怖症の金持ちイケメン長身男子を主人公にした都会派ラブコメディ。
 以上の作品に加え、あとから追加になったのが⑪『十二公民』〔原題:十二公民〕である。レジナルド・ローズのあまりに有名な戯曲『十二人の怒れる男』を、現代中国を舞台として翻案したもの。某大学の法科の課外授業で、社会を騒がせている富二代の青年による父親殺害の事件の模擬裁判を開くことになる。欧米の陪審員制度を取り入れ、学生の父兄や学校関係者を陪審員に選ぶ。誰もが有罪と思っていた陪審員の話しあいは、ひとりの反対によって、大波乱となる……。監督は中央戯劇学院出身の徐昂(『我愛桃花』などの作演出)。俳優にも、北京人民芸術劇院や中央実験話劇院などから舞台人を多く起用。なんと、NHK中国語講座などで活躍されていた銭波さんも出演! 昨年製作されたが、その後、ローマ国際映画祭で最優秀賞を受賞。今年になって、中国国内で公開された。中国では珍しい異色の法廷映画。今年の映画祭ラインナップの中では最も気になる作品である。
 これらの新作に加え、特集上映として昨年逝去された呉天明監督の作品と、彼が西安製片廠廠長時代に世に送り出した作品、計6本が上映される。呉天明監督作品として、遺作となった『ソング・オブ・フェニックス』(2014)をアンコール上映するほか、いかだで河を行き来する男たちのドラマ『標識のない河の流れ』(1983)、文革後まもない田舎の知識青年の苦悩を描いた『人生』(1984)、朱旭主演で旅芸人の哀しみ描く感動作『変臉 この櫂に手をそえて』(1996)が上映される。いずれも、なかなか観る機会がないが、なかでも『標識』『人生』はレアな作品。お見逃しなく。また、黄建新監督の問題作『黒砲事件』(鈴木清順を彷彿とさせるアヴァンギャルドな画面に酔え!)、何平監督の武俠映画『双旗鎮刀客』(中国ウエスタン!)にも期待したい。
 一方、東京国際映画祭の方でも、気になる作品が多い。まずは、台湾ニューシネマ出身なのにいまやすっかり大陸映画人になってしまった陳国富プロデュース、肖洋陽監督の『少年班』。鬼教師(孫紅雷)の指導の下、全国から選ばれた五人の天才少年少女が数学オリンピックをめざす。主題歌はS.H.E.。キャメラマン出身の相国強監督の長篇デビュー作『少年バビロン』。原作は路内、工場の街を舞台に90年代の青春を描く。フィルメックスで二度にわたり注目を浴びた郝杰監督が、第三作にして東京国際映画祭に進出、コンペティションでさくらグランプリを狙う『ぼくの桃色の夢』。今回も妄想系の映画になっていそうで楽しみである。内モンゴル出身の女性監督デグナーによる『告別』、チベットの遊牧民を描くソンタルジャ監督の『河』も期待大である。
 そして、何よりも楽しみなのが、台湾の巨匠・王童監督の新作『風の中の家族』〔原題:風中家族〕である。台湾でこの夏公開されたばかりの作品、国共内戦の中、3人の若い兵士と彼らに助けられた孤児が台湾へと渡る。戦後台湾の激動の中で、彼らはどう生きていくのか。今回も、台湾現代史に鋭く切り込む作品である。
 そうこうしているうちに、11月のフィルメックスのラインナップも発表になってしまった。こちらではジョニー・トー監督のミュージカル映画やら、シルヴィア・チャン監督や蔡明亮監督の新作まで入っている。
 全くもって、身体がいくつあっても足りない。映画ファンには、嬉しい悲鳴の秋になりそうだ。

   
     
   
     
 
     
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