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日本ビジネス中国語学会
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東京便り―中国図書情報 第15回 .

 村上春樹の代表作の翻訳改訂版がお目見え―中国出版ニュース

   
   

新訳が刊行された『海辺のカフカ』中国版中国でも人気の高い村上春樹の小説のうち、『ノルウェイの森』『海辺のカフカ』など代表的な長編10作品の中国語版が先ごろ全面的に改訂され、中国で発売された――。

今回の「東京便り」は、日本人にとっても気になるこの話題をはじめ、中華民族の名字の文化をまとめた『中華姓氏文化大典』、中国近現代の新語を網羅した『100年漢語新詞新語大辞典』など、注目の中国出版ニュースをお届けする。
 

   
 

■誤訳を正し、時代に即した翻訳作品に――村上作品の中国語版

村上春樹の長編10作品の中国語版が先ごろ全面的に改訂され、中国で発売された(『文匯報』)。いずれも上海訳文出版社刊で、訳者は同社の村上作品を20年余り前から一手に引き受けて知られる林少華氏。

10作品の中国語題(簡体字)、原題は、以下の通り(順不同)。
 
①《且听风吟》    『風の歌を聴け』
②《1973年的弹子球》    『1973年のピンボール』
③《寻羊冒险记》    『羊をめぐる冒険』
④《挪威的森林》    『ノルウェイの森』
⑤《舞!舞!舞》    『ダンス・ダンス・ダンス』
⑥《世界尽头与冷酷仙境》    『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
⑦《国境以南太阳以西》    『国境の南、太陽の西』
⑧《斯普特尼克恋人》    『スプートニクの恋人』
⑨《奇鸟行状录》    『ねじまき鳥クロニクル』
⑩《海边的卡夫卡》    『海辺のカフカ』

今回の全面改定は、上海訳文出版社が林氏にとくに依頼して実現した。
村上作品の林氏訳は、これまでにも台湾版などと比較して、「誤訳、意訳が多い」「訳文が抜け落ちている」などと指摘する声があった。また文学色が強く、あまり適切でない訳文や、中国の成語(四字熟語)、俗語を多用するという特徴もあった。
一方で、「それはすでに林氏テイストの作品になっている」 として、林氏訳を支持する一定のファンがいたことも事実である。

こうした事情を踏まえて今回の改訂は、従来の語彙や文章を改めて添削し、誤訳の修正、訳し漏れの加筆をし、より正確で読みやすく、時代の変化に合わせた翻訳作品となるよう、そのクオリティーをより向上させた(上海訳文出版社)という。

新訳『ノルウェイの森』中国版では、どのような改訂が行われたのか?
たとえば、『ノルウェイの森』の冒頭、着陸態勢に入ったボーイング747から見える風景は、「十一月の冷ややかな雨が大地を暗く染め、雨合羽を着た整備工たちや、のっぺりとした空港ビルの上に立った旗や、BMWの広告板やそんな何もかもをフランドル派の陰うつな絵の背景のように見せて」いたことが記されている。

林氏のこれまでの訳だと「11月砭人肌肤的冷雨,……」(11月の肌を刺すような冷ややかな雨が……)とより文学的にアレンジされていたが、それが今回、「11月的冷雨……」(11月の冷ややかな雨が)と原文に忠実なかたちで訳し直された。

また、90年代に作品が中国語訳された当時、一部の外国人名、外国のブランド名などは中国であまり知られておらず、日本語からの直訳(音訳など)が使われていた。しかし中国で改革開放が進み、急速に経済発展するにつれて、ブランド名などは“定訳”が普及。
今回の改訂では、たとえばスイスの高級腕時計メーカー「ロレックス」は、それまでの「罗莱克斯」から「劳力士」に、スイスの高級時計メーカー「パテック・フィリップ」は、「菲利浦」から「百达翡丽」に、またホンダの乗用車ブランド「シビック」は「西比克」から「思域」に。
ほかにも、たばこの銘柄「LARK」は「百灵鸟」→「云雀」に、
「クッキー」は「甜饼」→「曲奇」に、
「ドーナツ」は「炸面圈」→「甜甜圈」に、
「観覧車」は「空中飞车」→「摩天轮」に、それぞれ改められたという。

いずれにせよ全面改定版の登場は、上海訳文出版社と翻訳家が従来作品を精査した上で、作家と作品をこれまで以上に尊重した結果だと見られる。
時代に即した中国語の“新訳”で、村上作品を味わうのもまた興味深いことだろう。

ちなみに同出版社は2001年に『ノルウェイの森』『風の歌を聴け』などを「村上春樹文集」(シリーズ)の一環として翻訳出版して以来、これまでに村上作品を41作、計650万部発行。
村上作品は、同社の外国文学の中でもイチオシの“主力商品”になっているようだ。

○『女のいない男たち』中国語版が3月に出版へ

上海訳文出版社はこのほど、村上春樹の最新短編集『女のいない男たち』の中国語版を今年3月に出版することを明らかにした。
中国語題は『没有女人的男人们』
同社の村上作品の翻訳はこれまで林少華氏が一手に担ってきたが、『女のいない男たち』では林氏をはじめ、竺家榮、毛丹青、姜建強、岳遠坤、陸求実の各氏が担当。著名翻訳家6人による、多面的な“春樹ワールド”が楽しめるという。
 

■名字の文化まとめる『中華姓氏文化大典』第1巻が刊行

『中華姓氏文化大典』第1巻 「総論」中華民族の数千年にわたる姓氏(名字)の文化をまとめる『中華姓氏文化大典』の第1巻『姓氏文化総論』がこのほど、中国で出版された(中国新聞網)。
河南省炎黄姓氏歴史文化基金会・編、大象出版社・刊。

漢字の国・中国には多くの漢字の姓名がある。一般的には、子どもたちに漢字を教えるための学習書の1つで、中国の代表的な姓を並べた古典『百家姓』などがあるが、姓氏文化を歴史的・体系的にまとめたものはほとんどなかった。
そこで今回、国内の著名な学者や研究者らが集まり、編纂したのがこの大典。第1巻(計35万字)には総論として、「姓氏の起源と形成」「姓氏の発展変化と民族の融合」「現代姓氏研究の概論」などの内容が収められた。

計画では、全12巻(約1億2000万字)、数万枚の写真が使われ、5年がかりで編纂されるという。
大典の編纂にあたる同基金会の趙建軍理事長は、「姓氏には(中国の)特別な文化が込められているが、長い歴史の中で、家系図が欠損したり、途絶えたりしたものは数多い。しかし現在、改革開放から30年余りが経ち、姓氏研究における優秀な人材がそろい、専門書も増えている」として、『中華姓氏文化大典』が時宜にかなった姓氏研究の集大成になることを強調している。
  

■中国近現代の新語を網羅 『100年漢語新語大辞典』が出版へ

清朝を倒し中華民国を樹立した民主主義革命「辛亥革命」(1911~1912年)から2011年までの100年間に生まれた中国語の新語を網羅した『100年漢語新詞新語大辞典』が上海辞書出版社から出版されることがこのほど、明らかになった(『人民日報』)。

中国語の新語は、これまでにも『新華新詞語詞典』『現代漢語詞典』などの一般的な中国語(普通語)辞典に収められてきたが、紙幅の都合で限られていた。その意味で『100年漢語新詞新語大辞典』に収録された新語は、100年の長期におよぶため、語彙数からしても傑出した内容となっている。

辞典は全3巻、計600万字余り。中国近現代の新語1万1410語を収録するほか、その言葉の最早期の典拠や用例が示され、新語が生まれてきた時代背景がわかるしくみになっている(もちろん現在は使われなくなった“新語”を含む)。
またこの100年は、まさに中国語の書き言葉が文語文から口語文へ移行する過渡期であり、外来語が大量に導入された時期でもあった。そのためこの時期の新語を1つにまとめることは、中国語の変化を知る上でも非常に意義深いという。

収録された語彙は、たとえば「上巻」(1912~1949年)には3000語余りある。
「德先生」(デモクラシー)、「赛先生」(サイエンス)といった中華民国初期に導入された西洋の学術思想、また「航空公司」(航空会社)、「冰淇淋」(アイスクリーム)といった西洋の科学技術や新しい事物も。

『100年漢語新詞新語大辞典』1949年の中華人民共和国の建国から1970年代末期には、「大办食堂」(農村の公共食堂)、「打小报告」(密告する)、「大锅饭」(大釜で炊いた飯、みんなが均等の待遇を受けること)、「三年自然灾害」(1959年から3年続いた自然災害)、「抗美援朝」(アメリカに反撃を加え、朝鮮人民を援助するために戦う)など、建国期から文革期までの激動の時代を示す言葉が多くみられる。

70年代末から改革開放が実施されると、この時期だけで新語が2000語余りに上る。
音訳された外来語では、たとえば「的士」(taxi)、「香波」(shampoo)、「托福」(TOEFL)、また意訳された外来語では「热点」(hot point)、「信用卡」(credit card)などがある。

清末から中国建国以前のいわゆる旧社会の言葉であり、改革開放後に“復活”したものとしては、「股份」(株、株式)、「股东」(株主)、「证券交易」(証券取引)、「通货膨胀」(インフレ)、また「老板」(経営者、支配人、店主)、「董事长」(社長、代表取締役)、「太太」(奥さん)、「小姐」(お嬢さん、お姉さん)など。
さらに現代の新語としては「打酱油」(注1)、「俯卧撑」(注2)などのネット流行語が挙げられている。

中国社会科学院語言研究所の唐正大研究員は「言葉は歴史のバロメーター。とくに新語は、社会を端的に反映している」とその特徴を語る。
大辞典は、四川省の学者、学生らにより編纂されたというが、それは辞典としての用途はもちろん、中国語の研究資料として、また中国近現代史の証左としても、多方面から大きな期待が寄せられている。


(注1)「打酱油」=「醤油を買いに来たんだ」。2008年、香港の人気スター、エディソン・チャンの私生活を写した写真がネット上に流れたことについて、テレビの街頭インタビューを受けた男性が、答えた言葉。「私と関係ない。醤油を買いに来たんだ」。ノーコメント、発言拒否の意味で多用されるように。

(注2)「俯卧撑」=「腕立て伏せ」。2008年、貴州省の少女殺害事件で公安当局が「男性が腕立て伏せをしたとき、少女が溺れた」と意味不明な説明をしたことから、ノーコメント、「~についてはよくわからない」の意味で使われる。

 

 
     

 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。12年余り北京に滞在し、2013年7月に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)。
取材編集に携わった『在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由』(阪急コミュニケーションズ)も好評発売中!

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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