オランダ人から漢民族へと為政者が変わる激動の17世紀台湾を、オランダ人マリア、原住民族シラヤの女性ウーマ、鄭成功麾下の漢人・陳澤という三者の視点から描き出す歴史小説。「あとがき」では鄭成功の死因について、医師の視点から興味深い考察がなされている。(原題『福爾摩沙三族記』遠流出版、2012年)
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序
第一章
【関連書籍】『フォルモサの涙 獅頭社戦役』 陳耀昌/下村作次郎 訳 2023年08月
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著者の言葉
日本の読者のみな様が、この四百年前の台湾開拓物語を気に入ってくだされば幸いです。きわめて奇特で曲折に満ちている台湾の歴史に、きっと驚かれることでしょう。
台湾の島に現れた最初の「政府」は、明帝国でも清帝国でもなく、オランダでした。(略)オランダ統治時代、「フォルモサ」(美しい島)と呼ばれていた台湾には主に三つの民族が暮らしていました。台湾原住民族(フォルモサ人)、オランダ人(主としてオランダ東インド会社)、そして対岸の福建地方から移住した漢民族です。
一六六一年、国姓爺とも称される鄭成功が、約二万五千の兵を引き連れて渡来し、オランダ勢力を打ち破って以後、フォルモサは漢民族の統治する社会へと変わります。オランダ人がこの島を去っていったのは一六六二年二月九日ですが、それからわずか四か月の後に鄭成功もこの世を去りました。 本小説は、この一六二四年から一六六二年までの物語を描いたものです。(「序 日本の読者へ」より)
(本書の舞台は)日本では江戸幕府第三代将軍家光から第四代将軍家綱の治世下で、鎖国令が敷かれた頃にあたる。学校の歴史の授業で、オランダと明と朝鮮だけが長崎の出島を窓口として貿易を行うことが許されていた、と習った憶えのある人も多いだろう。大方の日本人のイメージのなかで、この時代における日本と外国のつながりが長崎止まりなのに対し、本作は長崎からヨーロッパに至る、台湾、中国大陸沿岸部、東南アジアを含めた広大な範囲での諸国の活動が折に触れて記されており、読者の知見を大きく広げてくれる。(「訳者解説より」)
●構成 序 日本の読者へ 凡例/登場人物紹介
第一部 一六四六年 生 第二部 一六四九~五一年 望 第三部 一六五二年 絆 第四部 一六五三年~五五年 疫 第五部 一六五六年~六〇年 祈 第六部 一六六一年 交戦 第七部 一六六一年 包囲 第八部 一六六一年 決別 第九部 一六六二年 運命 注
エピローグ あとがき――私はなぜ『フォルモサに吹く風』を書いたか および医師の視点から論じる鄭成功の精神分析と死因について 訳者解説(大洞敦史)
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