【特集1】中国とどう向き合うか
大国化する隣国と、私たちはどう向き合うのか。この問いを避けて通ることは、外交や安全保障は言うまでもなく、政治・経済・社会の広い領域で、もはや不可能だ。日本政府は、アメリカに全面的に依拠してその「脅威」と対峙する道を突き進んできた。とりわけ、日本の中国侵略という史実の否定を根底にたたえた安倍政権時代、その対立は本質的な部分に及んだ。一党独裁の強化、監視社会化、香港「制圧」やウイグル問題に象徴される人権状況に懸念を持つことは当然だろう。だが、だから「中国包囲網」を構築する、のか。アメリカ主導の「リベラル国際秩序」やインド太平洋戦略に追従する以外に解はないのか。私たちは、どのように中国を批判し、どう対話し、どのように東アジアの未来を構想するのか。本特集は、この大きな課題を討議していくための第一歩である。
<表紙写真> ピンク色に染まった畑に寝そべる観光客。中国山東省青島。 2020年10月24日。VCG/ゲッティ/共同通信イメージズ
<デザイン 赤崎正一+佐野裕哉 (協力=国府台さくら)>
目次: 【特集1】中国とどう向き合うか 〈重層的な関係を〉日中関係の現在地と方向性(高原明生) 〈「共同富裕」の正体〉加速する「アジア的な新自由主義」――ポストコロナの中国社会を展望する(梶谷懐) 〈半導体の攻防〉アメリカに翻弄される日中経済関係(丸川知雄) 〈アメリカの視線から離れる〉米中対立と東アジア冷戦――歴史の反復と差異から見る(丸川哲史) 〈インタビュー〉漂流する中国のジェンダー秩序――市場化と権威主義のはざまで(小浜正子) 〈インタビュー〉外交の知恵を尽くせ――国交正常化五〇年の節目を前に(河野洋平) 〈圧政の現場〉香港から中国を知る――「共産党が指導する香港」との向き合い方(倉田徹) 〈特別篇 連載20周年〉資本主義と民主主義の関係性(1)――中国 国家資本主義という擬制(寺島実郎) 〈事態の構造〉ウクライナ侵攻――「勝者なき紛争」がなぜ起こったか(大串敦)
【特集2】コロナ禍と子どもたち 〈インタビュー〉まずは子どもの声をきくこと――「コロナ×こどもアンケート」から(半谷まゆみ) 〈「主体性」の迷宮を抜けて〉新型ウイルスが問う「学校」――選択のロジックからケアのロジックへ(酒井朗) 〈折り重なる歴史〉コロナ禍と子ども観の諸相――歴史から現在地の地図を描く(元森絵里子)
<注目記事> 〈ルポ〉福島の甲状腺がん――声を上げた子どもたち(片山夏子) 〈報告〉ジハード大陸2・0――バージョンアップするイスラム過激派とアフリカの混沌(服部正法) 〈真の問題点とは〉敵基地攻撃能力と安保法制(阪田雅裕) 〈沖縄と向き合う〉沖縄・半世紀の群像 第2回――森口豁(渡辺豪) 〈政治記者の眼〉宏池会の思想とは何か――岸田首相に与う(西山太吉) 〈特別対談〉人新世の環境学へ(第一回)――SDGsは「大衆のアヘン」か?(宮本憲一,斎藤幸平/佐々木実 聞き手/加藤正文 解説) 〈時代の記録〉読者投稿 コロナ禍を生きる(上)(姜秀一,南條恭久,宮原正典,岡田徹也)
<世界の潮> ・北京冬季五輪――人権・ジェンダーは問われたか(來田享子) ・プルトニウム延命?――高速炉開発への日米協力の深層(田窪雅文) ・「教員不足」 初の文科省調査を読む(氏岡真弓)
<SEKAI Review of Books> ・施設で育つ子どもたちへの支援(高橋亜美) ・読書の要諦――SF ブランキと並行宇宙の想像力(酒井隆史) ・【新刊】模索しつつも韓国社会は進む――鄭喜鎭編著『#MeTooの政治学』(古橋綾) ・【連載】本とチェック 第7回 出版都市パジュで(金承福)
<新刊紹介>
<連載> ・【新連載】閉ざされた土地 第1回――出回っていた放射性廃棄物(吉田千亜) ・【短期連載】ルポ フェミサイド――メキシコの女性たちは闘う(後編)根絶を目指して(工藤律子/篠田有史 写真) ・ルーツを巡る旅、ヘイトに抗う道【第2回】家族の軌跡と傷跡(安田菜津紀) ・デジタル・デモクラシー【第4回】ロビイストから民主主義を取り戻す(内田聖子) ・片山善博の「日本を診る」(149)法律を読まない、法律が読めない法治国家(片山善博) ・メディア批評【第172回】(神保太郎) ・いま、この惑星で起きていること【第28回】加速する変動、ヒトの打つ手は?(森さやか) ・但馬日記【第35回】明けない夜はない――池明観先生との思い出(平田オリザ) ・沖縄(シマ)という窓「変わらぬ基地 続く苦悩」――復帰五〇年の現実(松元剛) ・亡所考【第16回】干拓の埋めた葛藤(北條勝貴) ・お許しいただければ――年配者について(A.G.ガードナー/行方昭夫 訳) ・原発月報(22・1~2)(福島原発事故記録チーム) ・ドキュメント激動の南北朝鮮(296)(編集部) ・民話採光(阿部海太)
・読者投句、岩波俳句(池田澄子 選・文) ・アムネスティ通信 ・読者談話室
編集後記
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