社会派ミステリー・ブーム 日中大衆化社会と〈事件の物語〉
上製
尹芷汐
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出版社:花鳥社 |
出版年:2023年02月 |
コード: 294p ISBN/ISSN 9784909832559 |
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犯罪・非行・スキャンダル――事件を描いた物語の流行から、〈生きた戦後史〉が浮かびあがる。
松本清張や水上勉、森村誠一などの社会派ミステリー作品は、日本でブームを起こし、その後中国など海外でも流行。その根底にあるものとは何か。 書籍に留まらず、映像化作品や関連する〈事件〉の報道、同時代の言説など、多角的なアプローチで、ブームの構造的解明をめざす。 東アジア文学の全体像を考える。
(以下、「序章」より) 「……社会派ミステリーと、私小説・社会小説・歴史小説などの同時代のほかの文学との違いは、社会性の程度にではなく、ミステリーという類型、言い換えれば「事件」を構築する物語様式にある。 この物語様式こそ、社会派ミステリーが同時代のメディアと読者、観客の視線を引き寄せた要因だという発想はできないだろうか。(中略) 本書は、従来の「松本清張研究」の成果を踏まえながらも、松本清張文学への評価の更新を目指すのではなく、戦後日本及び東アジアの文化構造的再編成の問題として、社会派ミステリー・ブームを捉え直すことを試みる。」
目次: 序章 〈事件〉を物語る時代 一 「社会派」論を超えて 二 社会派ミステリー・ブーム 三 「社会派」論のパラダイム 先行研究(1) 四 「松本清張研究」の「東アジア」論 先行研究(2) 五 問題点と本書の研究方法
第一部 戦後日本のメディアと〈事件の物語〉 第一章 『週刊朝日』と松本清張―小説「失踪」の語りから考える 一 「週刊誌ブーム」と松本清張 二 週刊誌が作る「知」と読書の形態 三 編集方針と一致する創作 四 ある「失踪」事件をめぐって 五 小説「失踪」と週刊誌記事の語り 六 『黒い画集』が読者に与えるもの 第二章 「事件」とメディア・世論―松本清張「遭難」と井上靖『氷壁』の「登山者」表象 一 松本清張と井上靖 二 『氷壁』と「遭難」の作品と評価 三 「登山ブーム」と山岳小説―「事件」の意味 四 『氷壁』と「遭難」―誰が真実を語るか 五 メディアへのまなざし 第三章 「内幕もの」の時代と『日本の黒い霧』 一 『日本の黒い霧』、賛否両論のノンフィクション 二 「内幕もの」の一九五〇年代 三 松本清張、「一市民」から見た「内側」 四 「内幕もの」と世論 五 ノンフィクションという矛盾 第四章 「悪女」の作られ方―松本清張の小説と映像の交錯 一 松本清張作品の映像化 二 映画と中間雑誌の連携 三 週刊誌による映画の宣伝 四 映像によるイメージの創出 五 「悪女」イメージの生成 六 メディアミックスの前段階
第二部 冷戦期の日中における社会派ミステリーの流通 第五章 新中国の「内部発行」と社会派ミステリー―『日本の黒い霧』と『日本的黒霧』 一 外国書籍をめぐる二つの翻訳と流通ルート 二 「内部発行」で刊行された日本の書籍 三 「松川事件」をめぐる言論の生成と『日本の黒い霧』の翻訳 四 順応と対抗のはざま―「謀略朝鮮戦争」をめぐる翻訳と自主検閲 五 一九八〇年の再版と読者層 第六章 「軍国主義批判」の中の日本文学―三島由紀夫『憂国』と松本清張『日本改造法案―北一輝の死』の翻訳と受容 一 歴史の分節点としての二・二六事件 二 三島事件と「軍国主義批判」―『憂国』、『豊饒の海』の内部発行 三 三島の翻訳における政治と文学の拮抗 四 もう一つの「二・二六事件」―松本清張『日本改造法案―北一輝の死』 五 メタファーとしての「北一輝」像 第七章 「事件」と戦争の記憶―鄧友梅『さよなら瀬戸内海』と森村誠一「七三一部隊」シリーズ 一 戦争をめぐる記憶の困難 二 アメリカ批判と戦後の「日中友好」活動 三 『さよなら瀬戸内海』と「強制労働」の記憶 四 森村誠一と「七三一部隊」 五 「人民」と「人間」という語りの視点 第八章 名探偵の「死」とその後―日本の社会派推理小説と中国の法制文学 一 一九八〇年代の中国と日本の社会派推理小説 二 名探偵の「死」 三 法制文学の新聞・雑誌で連載された社会派ミステリー 四 劉賓雁と王朔からみた法制文学の可能性 五 日中「大衆化社会」と文学との関係 第九章 ナショナルな表象とトランス・ナショナルな記憶―西條八十「ぼくの帽子」と映画『人間の証明』 一 中国と日本映画の主題歌 二 メディアミックス戦略のトランス・ナショナルな欲望 三 西條八十「ぼくの帽子」の「母」と郷愁 四 中国における「母恋い」の再生とイデオロギーへの対抗 第一〇章 松本清張と連環画の遭遇―イメージの増殖と変容 一 連環画と「日本」 二 連環画とは 三 連環画雑誌と日本文学 四 映画連環画と日本映画 五 連環画『砂の器』 六 イメージは誰のものか
初出一覧 あとがき 資料 一 松本清張の映画化作品一覧 二 1950〜1960年代中国で公刊された日本書籍 三 1950〜1980年代中国で「内部発行」により出版された日本書籍 四 1970〜1980年代中国で翻訳された社会派ミステリー 五 日本文学・映画などの連環画化作品の一部(1978〜1989年) 索引
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