東アジアに共有される文学世界 東アジアの文学圏
/東アジア文化講座3
小峯和明 編
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出版社:文学通信 |
出版年:2021年02月 |
コード: 460p ISBN/ISSN 9784909658463 |
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前近代の東アジアの交流を学び、今に活かす!東アジアの文化と文学の交流を学ぶシリーズ、東アジア文化講座第3巻。
中国からひろまった漢字漢文にもとづく思想や文化は、日本だけでなく、各地域でどのように展開し、継承と反発をくり返し、独自のものに再創造されたのか。中国、朝鮮半島、日本、琉球、ベトナムなど、これらの交流圏にあった十九世紀以前の前近代の東アジアを俯瞰し、論じていく。東アジアと日本、世界を接続して考え、問い直していくシリーズ、東アジア文化講座。これからの東アジアを生き抜くヒントがここにある。
第3巻は東アジアの文学圏をテーマに、東アジアの学芸、宗教と文学、侵略と文学、歴史と文学、文芸世界などの問題を設定し、東アジアに共有される文学世界を俯瞰し論じる。「東アジア文学史」の不在により、鮮明にはなっていなかった東アジアの文学を明らかにすべく、その言語表現に即した想像力や思想性、それに基づく形象力、再生力を検証する。ここから「東アジア文学史」がはじまる。
目次: 序 東アジアの文学圏●小峯和明 1 本巻の構成 2 東アジア文学圏の意義 3 東アジア文学史の可能性 4 比較文学と交流文学
第1部 東アジアの学芸 01 儒教の世界―近世日本の場面から●中村春作 1 儒教の風景 2 儒教の包括性 3 読み継がれた経書、『論語』 4 朱子学との邂逅―仁斎、徂徠の『論語』注釈
02 東アジアの注釈学―宋・遼・高麗・日本をつなぐ〈注釈の知〉●小川豊生 1 思想の変革と〈注釈〉 2 東アジアを横断する注釈の諸相 3 遼代仏教を起点とする注釈の波動 4 華厳注釈の席巻と東アジア
03 医学と本草学―十六世紀以前の中国と日本を中心に●岩本篤志 1 はじめに 2 『史記』にみえる医術者の姿 3 中国出土医書から見た秦漢期の医術 4 『漢書』芸文志による医書の分類と本草書の展開 5 日本における医学・本草学の展開 6 おわりに
04 類書の「世界」●井上亘 1 類書とは 2 「類聚の世紀」 3 士大夫文化と国風文化
05 絵と絵師にみる日本と中国●楊暁捷 1 はじめに 2 神々の姿 3 絵師悲話 4 絵が訴える 5 才能への視線 6 よみがえる古典 7 おわりに
06 軍書・軍学・兵法●井上泰至 1 兵学、その多様な側面 2 文芸と兵学―教育と娯楽 3 戦のイメージと兵学―軍記・屛風・絵巻 4 儀礼・有職故実・権力 5 東アジアから、あるいは東アジアへの視点―荻生徂徠
07 中国古代兵学―漢文圏の兵学研究●司志武 1 はじめに 2 兵書の収集・整理と〈兵家〉四種の成立 3 〈兵家〉と諸子百家の関わり 4 学科としての〈兵家〉及びその多元的思想の特徴 5 おわりに―兵陰陽家と漢文圏の学芸
08 占術書―文芸交流の事例として●Matthias Hayek 1 はじめに 2 『周易』と術数 3 日本での展開 4 宋・明の類書と版本 5 江戸時代の出版文化と占い 6 東アジアの絵入り占書
09 盤上遊戯●原克昭 1 盤上遊戯研究の現在 2 文学史にみる〈対局〉の風景点描 3 盤上遊戯のゆくえ
第2部 東アジアの宗教と文学 01 仏伝の変成―浄飯王の物語●趙恩馤 1 はじめに 2 王位継承者の出家―家族の情愛と孝養 3 親心と悟り 4 浄飯王の死と親子の情愛
02 法華経の文学的な営み―『本朝法華験記』を事例として●馬駿 1 はじめに 2 中国における『法華経』 3 朝鮮における『法華経』 4 日本における『法華経』 5 信者らの往生地 6 おわりに
03 道教と神仙―『列仙伝』から『列仙全伝』へ●千本英史 1 列仙全伝という書物 2 劉向『列仙伝』との関係 3 和刻本独自の特徴 4 補・架蔵版本の伝来
04 東アジアと陰陽道●山下克明 1 はじめに 2 陰陽寮と術数・呪術 3 東アジア呪符文化の伝来と浸透 4 陰陽道成立の前提
05 キリシタン文学と東アジア―キリシタン版の一側面●神田千里 1 はじめに―キリシタン文学『平家物語』『太平記抜書』 2 信仰と道徳―削除・改竄の実態(一) 3 遁世と歴史観―削除・改竄の実態(二) 4 「日本人」の探求―『平家物語』『太平記』重視の背景
06 韓国の壇君神話と檀君神話●張哲俊 1 壇君神話と檀君神話の文献 2 壇樹の歴史
07 北部ベトナムの宗教文化―九天玄女信仰の発展●大西和彦 1 はじめに 2 問題の所在 3 正月行事「カイーネウ」と九天玄女信仰 4 考察 5 おわりに
08 須弥山と芥子―極大と微小の反転●高陽 1 仏教の空間―須弥山から「芥子納須弥」のたとえへ 2 「芥子納須弥」への疑問 3 「芥子納須弥」の文学表象
09 仏陀の夢と非夢―西行伝への示唆をもとめて●荒木浩 1 始原としての夢 2 夢告無き子 3 子を残して出家すること―西行伝承への視界
10 神道と東アジア●伊藤聡 1 はじめに 2 古代 3 中世 4 近世 5 おわりに
第3部 東アジアの侵略と文学 01 モンゴルの侵略とその言説―『越甸幽霊集録』を読む●佐野愛子 1 はじめに 2 『越甸幽霊集録』とは 3 国土を守る神 4 侵略と託宣 5 神の冥助の差異 6 おわりに
02 倭寇と文学―中国明清文献にみる秀吉像を中心に●陳小法 1 はじめに 2 引切り無しな「倭警」と関白情報 3 卑賤之身 4 首級懸賞 5 死亡伝聞 6 中国人説 7 異類妖孽 8 好色之魔 9 おわりに
03 壬辰倭乱とその文学●松本真輔 1 はじめに 2 壬辰倭乱に関連する韓国の文献 3 『壬辰録』の概要 4 『壬辰録』の性格について 5 おわりに
04 琉球侵略と文学―〈薩琉軍記〉の世界●目黒将史 1 はじめに―〈薩琉軍記〉について 2 読み継がれた〈薩琉軍記〉 3 創造された世界と現実世界との融合 4 為朝渡琉譚をめぐって 5 おわりに
05 蝦夷と北方の言説●徳竹由明 1 はじめに 2 中世文芸における蝦夷 3 近世文芸の中の蝦夷 4 おわりに
06 亡命・拉致の文学●樋口大祐 1 はじめに 2 境界線の内外で 3 対「蝦夷」戦争における「亡命」 4 『平家物語』と「亡命」「拉致」の記述 5 琉球戦争と「亡命」「拉致」
07 東アジアの鄭成功●韓京子 1 はじめに 2 唐船により日本に伝わった「鄭成功」 3 地理書から見る鄭成功 4 脅威的な海上勢力として朝鮮に伝わった鄭成功 5 南明の重要人物として認識された鄭成功
08 ベトナムの英雄像●髙津茂
09 韓国から見た日本の耳塚●魯 成煥 1 日本における朝鮮人の耳、鼻塚 2 京都の耳塚を見た近世の朝鮮人 3 京都の耳塚を見た朝鮮のお上りさん
第4部 東アジアの歴史と文学 01 琉球の歴史叙述と説話●木村淳也 1 はじめに 2 琉球の歴史と琉球文学 3 『中山世鑑』の歴史叙述 4 蔡温本『中山世譜』の歴史叙述 5 琉球の地誌と家譜 6 『球陽』と『遺老説伝』 7 おわりに
02 朝鮮の野談と歴史書―戦乱ものを中心に●野崎充彦 1 野談・野史・歴史 2 戦乱のはざまで―趙胖の悲恋譚 3 壬辰倭乱の諸事例―宋象賢・李舜臣・惟政 4 歴史と「非」歴史のあいだ
03 歴史と説話との交差―ベトナムの「剣湖伝説」を事例にして●Pham Le Huy 1 はじめに 2 さまざまな教科書、さまざまな「常識」 3 「神剣」の説話と『藍山実録』 4 剣湖伝説の成立とその展開 5 剣湖伝説に潜めた象徴世界 6 おわりに
04 正史と稗史の間隙●洪晟準 1 正史・稗史(野史)とその記述形式 2 日本・琉球国・中国・韓国の主な正史 3 歴史の信頼性 4 琉球国の正史と稗史、そして曲亭馬琴 5 韓国の正史と稗史―歴史を読むということ
05 『三国史記』と『三国遺事』●袴田光康 1 はじめに 2 『三国史記』と金富軾 3 『三国遺事』と一然 4 『三国史記』と『三国遺事』の特徴
06 東アジアの地図を読む―十九世紀大坂商人の東アジア●小林ふみ子 1 はじめに 2 もっともらしくも珍妙な東アジア図 3 中国・朝鮮・琉球の理解 4 本図の刊行をめぐって
第5部 東アジアの文芸世界 01 才子佳人の世界●鄭炳説(金英順訳) 1 東アジアの同時性 2 主人公の性格 3 都市と小説 4 愛情表現の異質性
02 かなとハングル、王朝と女性文学●金鍾徳 1 はじめに 2 かなとハングル 3 かな文字の教育と文学 4 ハングル教育と文学 5 おわりに
03 東アジアの笑話―滑稽の類似と相違●琴榮辰 1 東アジア笑話と滑稽のモチーフ 2 「三人話」に見る「泣く」人物への笑いと滑稽のモチーフの類似 3 「怒る」「恥じる」「驚く」韓国の阿呆と「感心する」日本の阿呆 4 「失敗を恥じるを笑う」韓国人と「失敗の可笑しさを笑う」日本人
04 『剪燈新話』と日本文学―『銭湯新話』から『浮世風呂』まで●近衞典子 1 はじめに 2 書名における『剪燈新話』 3 単朴著『銭湯新話』 4 単朴『銭湯新話』以後の展開 5 おわりに
05 『剪燈新話』の東アジアへの展開と『金鰲新話』●染谷智幸 1 はじめに 2 『金鰲新話』の世界 3 金時習の自我と歴史観 4 朴生の一理論 5 韓生のユートピア 6 おわりに
06 「伝」の世界―『孝子伝』から『阿Q正伝』まで●宇野瑞木 1 はじめに―「伝」とは何か 2 伝統的「伝」の世界―〈主―従〉相互依存の構造 3 孝子伝とその図像―歴史性からの逸脱、瑞祥へ 4 伝統的「伝」の世界への挑戦―魯迅『阿Q正伝』
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