はじめに交流ありき 東アジアの文学と異文化交流
/東アジア文化講座1
染谷智幸 編
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出版社:文学通信 |
出版年:2021年02月 |
コード: 448p ISBN/ISSN 9784909658449 |
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前近代の東アジアの交流を学び、今に活かす!東アジアの文化と文学の交流を学ぶシリーズ、東アジア文化講座第1巻。
中国からひろまった漢字漢文にもとづく思想や文化は、日本だけでなく、各地域でどのように展開し、継承と反発をくり返し、独自のものに再創造されたのか。中国、朝鮮半島、日本、琉球、ベトナムなど、これらの交流圏にあった十九世紀以前の前近代の東アジアを俯瞰し、論じていく。東アジアと日本、世界を接続して考え、問い直していくシリーズ、東アジア文化講座。これからの東アジアを生き抜くヒントがここにある。
第1巻は東アジアの文化と異文化交流をテーマに、まず「交流」「関係」を設定し、そこから生みだされた往還、交易と文化、海域と伝承、聖地、島嶼の文化等を考える。「文化」を先にする発想からは、国家・民族の独我論に陥ってしまう危険性があることに加え、東アジアの海域やその周辺への理解は乏しいものになるであろうという姿勢のもと生み出される、新たな東アジア交流史がここに誕生した。
目次: 総序 東アジアの文化と文学●小峯和明 1 今、なぜ、東アジアか? 2 東アジアというフィールド 3 「東洋」から「東アジア」へ 4 比較文学から共有文学へ・方法論の課題
序 はじめに交流ありき―東アジアの文学と異文化交流●染谷智幸 1 はじめに 2 激動の七世紀と日本 3 交流からみる東アジアの文化と十六世紀 4 中心・周辺・亜周辺 5 表面化しない交流 6 本巻の各テーマについて(一) 7 本巻の各テーマについて(二) 8 おわりに
第1部 東アジアの往還 01 渡海記と漂流記―十六世紀以前を中心に●鈴木 彰 1 渡海記・漂流記という資料群 2 渡海記・漂流記の分布と系譜 3 文芸としての渡海記・漂流記
02 漂流と漂着―『韃靼漂流記』を中心に●水谷隆之 1 はじめに 2 近世前期の漂流 3 漂流文芸の展開 4 無人島への漂着 5 おわりに
03 遣唐使の文学―往来する人々●水口幹記 1 遣隋使・遣唐使概要 2 渡り往く日本人―阿部仲麻呂・井真成 3 往来する日本人―藤原宇合・吉備真備・玄昉 4 渡り来る唐人・天竺人―袁晋卿・鑑真・菩提僊那
04 遣明船と策彦周良―黒衣の交渉人●空井伸一 1 はじめに―策彦の「涙」 2 朝貢・勘合・遣明使禅僧―日元貿易との比較から見る日明貿易 3 策彦の入明体験―黒衣の交渉人 4 謙虚な策彦 5 蓮の葉の上でまどろむ「名僧」―再び策彦の「涙」について
05 大航海時代のキリスト教とアジア―ザビエルの鹿児島伝道●岡 美穂子 1 はじめに 2 坊津一乗院とアンジローのかかわり 3 一乗院と薩摩の交易 4 アンジローの宗教知識 5 「倭寇」アンジロー 6 その後の薩摩のキリシタン 7 十七世紀初頭の薩摩のキリシタン 8 おわりに
06 朝鮮通信使と燕行使の文学●高橋博巳 1 はじめに 2 種種風致の交流 3 成大中と朴斉家 4 孫星衍と伊秉綬 5 おわりに
07 琉球と唐・ヤマトの交際・交叉―一七一四年の江戸立を中心に●島村幸一 1 はじめに 2 近衛家煕と会見した程順則 3 もうひとりの会見者、玉城朝薫 4 朝薫の組踊 5 おわりに
08 崔致遠と東アジア―「補安南録異図記」を中心に●金 英順 1 はじめに 2 叙述の動機と目的 3 安南の獠族と南詔 4 高駢の安南統治 5 おわりに
09 日朝文人の交流―《蒹葭雅集図》の例から●鄭 敬珍 1 はじめに 2 《蒹葭雅集図》について 3 別号図としての《蒹葭雅集図》 4 《蒹葭雅集図》に集った人々 5 崔天宗殺害事件と《蒹葭雅集図》 6 「文芸」を介した東アジア的交流
第2部 海域と伝承 01 黒潮文化圏と新「海上の道」―柳田国男の想像力●角南聡一郎 1 はじめに 2 「海上の道」とは 3 「海上の道」の今日的評価 4 「海上の道」前史 5 寄物と想像力 6 おわりに
02 農業国家アンコールの「航海神」観音●宮﨑晶子 1 はじめに 2 ジャヤヴァルマン七世時代の「航海神」観音 3 アンコールの交易 4 おわりに
03 媽祖と海域の文化●菊地章太 1 われらが御母 2 異郷で暮らす人々の神 3 日本列島への伝播 4 東国から北限の地へ 5 海域世界における伝承
04 日本海海域の文芸―幸若舞曲『笈捜』小考●宮腰直人 1 はじめに 2 海洋文芸としての幸若舞曲 3 地域の幸若舞曲享受―浦人たちの物語 4 おわりに
05 海域生物をめぐる言説―シャチ・クジラを事例として●杉山和也 1 はじめに 2 東アジアの臨海諸地域におけるクジラの認識 3 日本におけるシャチホコの認識 4 東アジアの臨海諸地域におけるシャチに関する記述と、その認識 5 おわりに
06 朝鮮の海域伝承―玉英、東アジアを放浪する●朴 知恵 1 はじめに 2 『崔陟伝』のあらすじ 3 作品に登場する地名について 4 人名について
第3部 島嶼の文化 01 港市と島嶼の文学―北九州海辺の伝承世界から●菊地 仁 1 はじめに 2 マツラサヨヒメと入水譚 3 「させまろ伝説」への分岐 4 北九州の沈鐘伝説 5 カネノミサキと玉取り姫 6 ヒビキノナダに沈む船 7 大陸との交流と結界 8 おわりに
02 中台交流史からみる台湾の宗教文化―三山国王信仰を事例として●志賀市子 1 はじめに 2 三山国王信仰とは 3 台湾への伝播と土着化 4 消えた族群?―台湾の族群分類と潮州福佬 5 おわりに―中台の新たな交流がもたらすもの
03 台湾の鄭成功伝承●小俣喜久雄 1 鄭成功概要 2 開台聖王主神廟 3 台湾各地にみられる鄭成功伝説
04 奄美のユタ伝承と東アジア●福 寛美 1 はじめに 2 オモイマツガネ(思松金) 3 奄美群島と朝鮮半島 4 両性を持つユタ 5 神道具の探索 6 おわりに
05 八重山の文化●澤井真代 1 境域の島々 2 シマへの渡来者 3 八重山の御嶽 4 八重山の芸能 5 おわりに
06 古代中国と済州島の交流●黄 暁星 1 はじめに 2 済州島の地理的位置 3 唐船と済州島 4 蒙古人と済州島 5 おわりに
07 八重山・小浜島の念仏歌●酒井正子 1 はじめに 2 小浜島の旧盆行事 3 ニムチャー(念仏者)衆の家まわり 4 小浜島の念仏歌 詞章五種 5 おわりに
第4部 交易と文化 01 海賊と海商●森田雅也 1 はじめに 2 古代の海賊・海商 3 八〜九世紀の海賊・海商 4 日宋貿易と倭寇 5 勘合貿易 6 博多と堺の海商 7 朱印船・糸割符 8 おわりに
02 東南アジア交易と中国人町・日本人町●松浦史明 1 はじめに 2 東南アジアの交易 3 中国船の東南アジア進出 4 「住蕃」して活動する中国商人 5 華僑社会の発展と中国人町 6 東南アジアの日本人町 7 おわりに
03 明末白話小説と海外貿易●中島楽章 1 三言二拍のビジネス小説 2 物語の舞台と概要 3 貿易船の船主と客商 4 貿易船の経営形態 5 吉零国の銀貨 6 明末南海貿易と銀流通
04 長崎民衆の異国認識●位田絵美 1 異国に開かれた扉―『増補華夷通商考』から見えるもの 2 長崎民衆が持つ異文化情報―「長崎旧記類」から 3 異国人情報が集約される地役人集団の町―長崎 4 海でつながる連帯感 5 おわりに
05 経済小説の胎動と東アジアの交易―経済以前と貨幣の歴史●染谷智幸 1 はじめに 2 日本経済小説史の見取り図 3 『日本永代蔵』にみる商業の胎動 4 東アジアの貨幣流通とその展開 5 日本の貨幣流通と米 6 おわりに
06 文化力〈ソフトパワー〉と政治・経済―朝鮮半島のルネサンスと南北対話●Emanuel Pastreich 1 はじめに 2 朝鮮半島の古い用語・政治体制に目を向ける 3 南北ルネサンス・プロジェクト 4 東アジアへ向けて
07 仏教経典と長者伝承●堀部正円 1 長者とは 2 釈尊への信仰 3 長者窮子の喩 4 中国古典と長者 5 日本における長者 6 近世の長者
08 東アジアの紙銭●森田憲司 1 紙銭とは、そしてその歴史 2 紙銭の今 3 東アジアの紙銭
09 南シナ海の海盗―張保仔と女海賊鄭一嫂●松尾恒一 1 倭寇から海盗へ―明・清代、海賊と日中欧の交流 2 ヨーロッパの東アジア進出と南シナ海海賊―張保仔と女海賊鄭一嫂 3 張保仔―南シナ海漁民の英雄より世界の英雄に
第5部 東アジアの聖地 01 五台山の仏教文化―東アジアが育んだ歴史●小島裕子 1 本朝における仏教の黎明と五台山 2 中国、五台山における文殊菩薩値遇の思想 3 本朝における「五台山文殊」伝承の展開 4 小結 緒としての東大寺草創「四聖」考
02 普陀山と観音信仰●張龍妹 1 はじめに 2 水神信仰と観音信仰 3 大中三年と大中十三年 4 「不肯去観音」と「不肯去観音院」
03 泰山と日本の古典文芸―泰山名句と封禅説話を中心に●李銘敬 1 はじめに 2 泰山の名句 3 泰山封禅説話 4 泰山封禅と日本 5 おわりに
04 金剛山像―金同伝説とその変遷●龍野沙代 1 金剛山紀行文と伝説 2 鬱淵に沈んだ外道 3 懶翁との法力対決 4 鬱淵で泣く金同一家 5 金剛山に命を捧げる
05〈聖地〉の近代化と東アジア●染谷智幸 1 はじめに 2 光圀の媽祖、斉昭の弟橘姫 3 聖地/遊興/交通 4 近代の鉄道と聖地 5 結語
06 反逆者たちの聖地●丸井貴史 1 はじめに 2 中国―水滸伝 3 日本―本朝水滸伝 4 朝鮮―洪吉童伝
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