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21世紀のグローバリズムからみたチンギス・ハーン /アジア研究報告シリーズ No.8 
ボルジギン・フスレ 編
出版社:風響社
出版年:2022年02月
コード:   304p   ISBN/ISSN 9784894898080
 
価格 3,850円
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日蒙で開かれた国際シンポジウムの成果。歴史・社会・政治・文化など最新の研究からチンギス・ハーンとその時代を再評価。

まえがき

ボルジギン・フスレ(Husel Borjigin)

 世界史上で空前絶後の大帝国――ユーラシアをまたぐモンゴル帝国の基礎を築きあげたチンギス・ハーンの生誕850周年にあたる2012年5月、東京大学で国際シンポジウム「21世紀のグローバリズムからみたチンギス・ハーンとモンゴル帝国」(公益財団法人サントリー文化財団、守屋留学生交流協会、モンゴルの歴史と文化研究会後援)がひらかれた。そのつづきとして、同年11月、ウランバートルの国際モンゴル学会会議室で国際シンポジウム「ユーラシア草原の諸民族におけるチンギス・ハーン崇拝の歴史と現状」(公益財団法人サントリー文化財団、国際モンゴル学会、モンゴル科学アカデミー歴史・考古学研究所[現モンゴル科学アカデミー歴史・民族学研究所]後援)が開催された。

 シンポジウムの開催は、公益財団法人サントリー文化財団の助力が大きい。当時、私は同財団の2011年度助成事業「モンゴル諸寺院におけるチンギス・ハーン崇拝に関する国際共同研究」と2012年度助成事業「ユーラシア草原の諸民族におけるチンギス・ハーン崇拝の歴史と現状」の助成をえて、モンゴル国と中国の内モンゴル自治区で現地調査を実施でき、各国の研究者と議論をつみかさねた。その成果として、上記2つのシンポジウムの開催にいたった。

 本書は、この2つの国際シンポジウムでおこなわれた報告や討論を下敷きにして編まれた論集である。本来、翌2013年の出版を予定していたが、翻訳費と出版費が得られず、翻訳や編集などが遅れざるをえなかった。

 幸いにも、私は2016年度昭和女子大学研究助成金を得ることができたので、翻訳と編集を進められることとなった。しかし、経費などさまざまな事情により、本書に上記2つのシンポジウムのすべての報告を収録できなかったこと、また、刊行までにその後5年も要してしまったことは、誠に遺憾である。

 チンギス・ハーンとモンゴル帝国について、かつてはさまざまな偏見や誤解がくりかえされ、歪曲、誹謗もされていた。近年、とりわけ1990年代以降、チンギス・ハーンとモンゴル帝国に対する認識は変わりつづけ、研究、論著の面で大きな成果がえられ、画期的な展開をみせてきた。チンギス・ハーンとその騎馬軍団の挑戦は世界を揺るがしたと同時に、アフロ・ユーラシアの交流の道を大きくひらいたことは、今では、国際的に共通の認識になっている。上記シンポジウムはモンゴルという小さな遊牧の民が、いったいどのような熱情にかられてこのような奇跡をなしとげ、はじめて「ユーラシア」とよびうる歴史的空間を創り出すことができたのか、そのなぞに迫ること、そして21世紀のグローバリズムからチンギス・ハーンとモンゴル帝国、およびその遺産を再評価し、創造的な議論を展開することを目的とした。

 シンポジウムをおえて、9年間あまりもたった。その間、あらたな考古学上の発見や研究成果が世にとわれた。また、イギリスやロシアでは、歴史教科書のチンギス・ハーンおよびモンゴルについての記述をあらたにかきなおすようになった、という情報もあった。本書の出版によって、シンポジウムがかかげた目標がすべて達成されたとは思っていない。本書に収録された、モンゴル、日本、中国、ロシア、ドイツ、トルコの研究者が執筆した18本の論文は、それぞれ歴史学や考古学、文化人類学などの視点からシンポジウムのテーマにアプローチしたものであり、その結果として、本書はより国際的な性格をもつようになったといえよう。

 シンポジウムが成功裏に開催され、本書が出版できたのは、下記の方々からあついご支援とご尽力をえられたからである。すなわち昭和女子大学理事長・総長坂東眞理子先生、学長小原奈津子先生、公益財団法人守屋留学生交流協会理事長守屋美佐雄氏、公益財団法人渥美国際交流財団関口グローバル研究会会長今西淳子氏、同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授(シンポジウム当時は東京大学大学院総合文化研究科教授)村田雄二郎先生、東京大学大学院総合文化研究科准教授杉山清彦先生、中国チンギス・ハーン研究会会長兼フルンボイル歴史文化研究院院長孟松林氏、ノモンハン戦争研究所所長徐占江氏、モンゴル国「バルガの遺産」協会長Ts・トゥメン氏、昭和大学女子総長・学長室長吉田奈央子氏、教学支援センター研究支援課前田由紀氏などである。

 東京外国語大学名誉教授二木博史先生は本書の一部の論文の査読を担当し、また重みのある、魅力的な論文1本を執筆してくださった。三矢緑氏、上村明氏、納村公子氏にはモンゴル語、ロシア語、中国語の論文の翻訳を担当していただいた。風響社社長石井雅氏からは周到なご配慮をいただいた。

 ここに、上記の大学や財団、学術団体およびおおくの関係者にかさねて厚く御礼を申しあげたい。

2021年6月


目次:

まえがき ボルジギン・フスレ(Husel Borjigin)

20世紀:チンギス・ハーン評価をめぐる攻防の時代 田中克彦(Katsuhiko Tanaka)

「チンギス・ハーンの箴言」研究における諸問題 チョイラルジャブ(Choiraljav)

モンゴル軍のドグシン・ハル・スルドの歴史的伝統 ガリンデヴ・ミャグマルサムボー(Galindev Myagmarsambuu)

チンギス・ハーン崇拝について:『白い歴史』を手がかりに ツィムジド・プルブエヴナ・ワンチコワ(Tsymjid Purbuevna Vanchikova)

チンギス・ハーンの記憶の場としての婚姻儀礼:内モンゴルのバーリン地方の資料を中心に 二木 博史(Hiroshi Futaki)

チンギス・ハーンが立法者として果たした役割:ホルチ,アルタン,ホチャル,セチェ・ベヒらがテムジンをチンギス・ハーンとして推戴する以前の時代 ウード・B.バルクマン(Udo B. Barkmann)

現代中国にとってのチンギス・ハーン ボルジギン・フスレ(Husel Borjigin)

ポスト共産主義時代のロシアにおけるチンギス・ハーン:その観点と研究 サンピルドンドブ・チョローン(Sampildondov Chuluun)

モンゴル帝国史とロシアの歴史教科書 チョローン・ダシダワー(Chuluun Dashdavaa)

チンギス・ハーンとその親族,妃,協力者に関するロシア(ソ連)の歴史記述の概観 オーフノイ・バトサイハン(Ookhnoi Batsaikhan)

ロシア連邦ブリヤート共和国におけるチンギス•ハーン シャグラノワ・オリガ(Olga A. Shaglanova)

歴史上の人物チンギス・ハーンの今日的意義 ウード・B・バルクマン(Udo B. Barkmann)

チンギス・ハーンの宗教政策 シャラブ・チョイマー(Sharav Choimaa)

モンゴル帝国の宗教に対する寛容政策:金帳汗国を例として エクレム・カラン(Yekrem Kalan)

大モンゴル国における宗教と信仰について ツェレンバルタブ・ミンジン(Tserenbaltav Minjin)

マハーカーラのトグ・チンギス廟の歴史の問題について ガリンデヴ・ミャグマルサムボー(Galindev Myagmarsambuu)

チンギス・ハーンの肖像と「チンギス・ハーンの軍歌」についての再検討 包美栄(Bao Meirong)

フルンボイル地区におけるモンゴル民族起源に関する考古学的新発見 孟松林(Meng Songlin)
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