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電波が運んだ日本語 占領地、植民地におけるラジオ講座 /植民地教育史ブックレット
上田崇仁
出版社:風響社
出版年:2022年03月
コード:   72p   ISBN/ISSN 9784894894211
 
価格 880円
  <東京店在庫有り>
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国家が日本語教育にかかわった時代。

帝国日本が外地で行ったラジオ「国語講座」とは……。南方・マレー半島・インドネシア・華北そして朝鮮でのテキストを探り、シラバスやコースデザインを復元。その中から教員の苦悩と熱意、工夫を見出す。


以下、本書より

「戦前、戦中を通じて、日本は植民地とした地域や、占領した地域で日本語教育を行っていた」ということは、多くの方がご存知のことだと思います。しかし、具体的にどのような教材を使って、どのように教えていたのか、何を教えていたのか、という点については、あまり知られていないのではないでしょうか。本書では、学校教育や地域で行われていた日本語学校での教育ではなく、一九二六年に日本に登場した「ラジオ」というメディアを利用した日本語教育がどのようなものであったのかについて、収集できたテキストなどを基に、繙いていきたいと思います。

(中略)

本書では、ラジオ講座のテキストを取り上げ、そのラジオ講座を聞いて日本語を学ぼうとしていた人たちと、そのラジオ講座を通じて日本語を学ばせようとしていた人たちについて、後者の側、学ばせたい側の意図を中心に戦前戦中の日本語教育について解説します。とはいえ、今日でも、ラジオ語学講座のテキストを何年も何十年も大切に取っている人は少ないように、戦前戦中は、その発行部数の少なさもあり、資料の収集が非常に困難です。

例えば、筆者が主なフィールドにしている朝鮮半島での「国語講座」の記録については、朝鮮放送協会で働いていた方々の親睦団体である朝放会(ちょう ほう かい)の関係者の方の回顧録や、戦後に出された文献はもとより、当時の『ラジオ年鑑』、筆者が独自に入手した『朝鮮放送協会報(*)』などにも掲載されておらず、当時を知る人に話を伺うことができたのも一度だけです。その中のひとり、当時朝鮮放送協会の記者であった韓国人のM氏(**)も「国語講座」という放送があったことは覚えていて、担当されていた方についても断片的な記憶はありましたが、その後の筆者の調査で詳細を突き止められない状況です。そのほかの地域でも、それぞれ一種類のテキストしか発見できていません。そのため、本書では、筆者の収集した資料の分析を通し、講座の送り手の意識から考えます。

講座の送り手の意識、学ばせたい側の意図に関しては、使用された教材がどのような目的をもって、どのような内容で作成されたのかの分析に、今日の日本語教育(のみならず、外国語教育一般)で言われている「シラバス」という視点を取り込んで検討します。「シラバス」を含め、今日の日本語教育の基本的な用語を第二節で解説していきます。そのうえで、第三節において当時のラジオ日本語講座が、何を目指していたのか、考えていきます。読者の皆さんも、ご自身が外国語を学ぼうとされるときにどんなことを考えて始めようとするのか、また、外国人に日本語を教えてほしいと頼まれたときに、どうするのか、具体的に考えながら読んでいただくと、漠然と、「戦前、戦中を通じて、日本は植民地とした地域や、占領した地域で日本語教育を行っていた」というだけでなく、そこに、日本語教育のプロが関わり、当時、様々な圧力や事情、制限がある中で、矛盾に苦悩しつつも、プロとしての矜持を保って時代の求めた内容を先端の教授方法で教えようと努力していた私たち日本語教員の大先輩たちの仕事を教材から感じ取ることができると思います。


目次:

一 戦前戦中の日本語教育は何を目指していたのか
 1 テキストを「繙く」
 2 困難な資料収集

二 「言葉を学ぶ」「言葉を教える」ということ
 1 コースデザインのために――ニーズ調査
 2 コースデザインのために――レディネス調査・学習ストラテジー
 3 コースデザイン
 4 シラバス
 5 「言葉を学ぶ」「言葉を教える」ということ

三 ラジオ講座は、どんな日本語を教えたのか
 1 南方の場合……『にっぽんご』
 2 マレー半島の場合……『日本語講座』
 3 インドネシアの場合……「NICHI-DJO NIPPONGO RADJIO KOZA」
 4 華北占領地の場合……『初級日語廣播教授課本』
 5 朝鮮の場合……『初等国語講座』1
 6 朝鮮の場合……『初等国語講座』2

四 誰のニーズに応えたのか――おわりに
 1 テキストと地域の特性
 2 使命に燃える日本語教員

参考文献
資料
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