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日本統治時代・朝鮮の「国語」教科書が教えてくれること /植民地教育史ブックレット
北川知子
出版社:風響社
出版年:2022年03月
コード:   74p   ISBN/ISSN 9784894894204
 
価格 880円
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幻の教科書「朝鮮読本」と芦田惠之助。

植民地・朝鮮で「国語」として教えられた日本語。その教科書は通称「朝鮮読本」と呼ばれた。「同化」と「外国語教育」の両面を担ったその内容を詳解しながら、編纂者・芦田の「優れた」制作理念と時代性にも迫る。


以下、本書より

みなさんは小学生のとき、どの教科が好きでしたか?

私は「国語」が得意でした。物語を読むことが好きだった私にとって、「国語」の教科書はさまざまな作品を一冊で読める楽しい読み物でした。子どものために物語を選んでくれる大人が周りにあまりいなかったので、未知の作品や作家に出会う扉として「国語」の教科書の存在は大きかったのです。

そんな私が大学で、日本統治時代の朝鮮で使用された教科書『朝鮮総督府編纂(へん さん) 国語読本』に出会ったのは、今から三〇年ほど前のことです。朝鮮(現在の朝鮮民主主義人民共和国・大韓民国のエリア)が日本の植民地でなくなってから四〇年以上が経っていました。一九八五年に一九二二~一九二八年(第二次朝鮮教育令期)に使用された朝鮮人学童向けの全教科の教科書が復刻され、その解説書である『日本は朝鮮で何を教えたか』(旗田巍編著)を、たまたま図書館で見つけたのがきっかけでした。

(中略)

ここに書いたことは、朝鮮読本のほんの一面です。まず入門的なものをということで、各朝鮮読本が使われた時期の統治政策の概要や、そもそも日本の「国語」という教科がどのようにスタートしたのかといったことも紹介することにしました。そして芦田惠之助と第二期朝鮮読本のことを中心に、朝鮮読本の特徴といえる部分をピックアップして紹介することに努めました。

私は修士課程を終えた後、私立高校に就職し一二年間、「国語」の教員として働きました。その後、その職を辞し、いまは地域の国際交流/在日外国人の人権の問題に取り組んだり、大学で人権教育の授業をさせてもらったりしています。高校で教員をしていたころも、いま小中学校の現場の先生方と人権理念を生かした学級経営や授業づくりを考える仕事をしているときも、いつも思うことが、「子どもの側に立つ」とはどういうことなのだろうという問いです。

芦田は朝鮮や南洋群島での教科書編纂という公職を退いた後、授業行脚と称して日本各地を回りました。芦田を慕う教員のいる学校で授業を行い、現場教員たちとの交流を通じて研鑽を続けたのです。授業行脚には速記者が同行し、芦田の発問や子どもたちの応答といった授業内のやりとりがすべて記録として残っています。「同志同行」という雑誌で、授業記録を掲載し、全国の芦田門下生からの実践上の悩みや報告を誌面交流する活動も主宰しました。録画・録音といったことが困難な時代の実践記録が詳細に残っているのは稀有なことです。そういった記録や研究論文を読んでいても、芦田が国語の授業、教育に対してストイックで誠実であったことは疑う余地がありません。だからこそ、「子どもの側に立つ」とはどういうことなのだろう、と考えさせられるのです。



目次:

はじめに

一 日本統治下朝鮮の教育について
 1 近代国民国家と学校と「国語」
 2 朝鮮における教育政策の展開と「国語」教科書
 3 三一独立運動のインパクトと同化教育

二 朝鮮の子どものための「国語」教科書/朝鮮読本
 1 日本語を教える語学教科書として−−文字と発音の指導
 2 教科書の使い方−−読解指導と表現指導

三 芦田惠之助を考える
 1 芦田惠之助の功績−−随意選題主義綴り方
 2 芦田惠之助の人間観・社会観

四 朝鮮読本に描かれた朝鮮と朝鮮の子どもたち
 1 挿絵の特徴と変化
 2 学校生活を描いた教材−−ロールモデルの存在
 3 現地取材された教材(古代王の伝説)
 4 朝鮮統治政策の影響−−稲作に関わる教材

むすびにかえて
参考文献
年表 朝鮮・日本教育関係史
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