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羊と長城 草原と大地の〈百年〉民族誌 /静岡大学人文社会科学部研究叢書
楊海英
出版社:風響社
出版年:2023年02月
コード:   766p   ISBN/ISSN 9784894893467
 
価格 3,300円
  <東京店在庫有り>
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1年に及ぶオルドス高原調査日誌。その時空は19世紀のイスラーム教徒蜂起まで遡り、カトリック世界と中央ユーラシアを跨ぐ。

本書は1991年から1年に及ぶ、著者のオルドス高原での調査日誌である。しかし、その時空は19世紀後半のイスラーム教徒の蜂起まで遡り、西のカトリック世界と中央ユーラシアを跨ぐ。この越域な視点が織り成すところは、モンゴル人と中国人の盛衰百年であり、異形の民族史=民族誌となる。(静岡大学人文社会科学部研究叢書No.76)

(以下、本書「プロローグ」より)
本書はモンゴル人の視点から中国の民族問題、それもモンゴル民族問題の深層を究明しようとするものである。遊牧民のモンゴル人と農耕民の中国人は対立しながら、交易を進め、共生して来た。共生しているからこそ、民族問題は生じる。中国人は自身が営む農耕を至上の生業と位置づけ、遊牧の民を差別する。騎馬の遊牧民は長城以内の世界で冒険し、政権を建てることもあったが、近世以降は衰退の一途をたどった。それは、中国人が「進歩」し続け、遊牧民が「奴隷社会」や「封建社会」に留まっていたからではない。イスラームをめぐる宗教間の対立とカトリックに代表される西洋勢力の介入が原因である。いわば、モンゴル人と中国人の民族関係史が世界史の一部になり、世界史の舞台となったからである。そういう意味で、本書は民族誌であると同時に、民族史の性質をも帯同しているのである。もっとも、それはあくまでもモンゴル人と、部分的には中国人が語った世界史である。


目次:
凡例

プロローグ
 民族誌は民族史
 犠牲の羊と長城
 歳時記的記録

●第Ⅰ部 短い夏から不穏な秋へ

第一章 家路から世界史を体得する
 自文化への帰還
 歴史は固有名詞からなる
 長城南北の哲学的風土 ほか(全13項)

第二章 中国に呑み込まれたモンゴル人達
 移動する境界
 世界史の中の激動
 貧困を創出する共産革命 ほか(全11項)

第三章 独自の暦を生きる人間と家畜
 近隣同士で「スープを飲む」
 草原に伝わる国内外の状勢
 オルドス暦と政府の横暴 ほか(全14項)
 
第四章 社会主義を生きる「天神」とネストリウス教徒
 郷愁の長城
 天神の祭祀者
 調査地の人口と家畜 ほか(全14項)
 
第五章 中国共産党の罌粟栽培とモンゴルの没落
 父系親族集団と清朝の行政組織
 長城は中国人の逃亡を防ぐ為の壁
 共産党の罌粟栽培と移民 ほか(全10項)

第六章 遥拝する聖地
 流転の聖地
 「民族右派」と中国との抗争
 「帝国主義の手先」を利用した中国人 ほか(全5項)

第七章 長安で聞くキリスト教とイスラームの歴史
 秘密の文書館
 中国人強盗の天下
 長城に建つ「駱駝の町」 ほか(全11項)

●第Ⅱ部 白い冬

第八章 「沙を混ぜられた」自治区
 陥落したモンゴルで跋扈する匪賊の後裔
 南国からの浙江省人
 戸籍制度と「闇チルドレン」 ほか(全5項)

第九章 失われた草原を取り戻す「真の英雄」
 王様の旗長
 オルドスの宮廷文化
 逮捕された青年の出自 ほか(全9項)

第十章 復活した結婚式
 贈答される乳製品
 宵の献立
 略奪に行く武装者集団 ほか(全10項)

第十一章 家族の中国革命史
 近代化の振動
 現代の李陵
 豚を屠る ほか(全18項)

第十二章 伝説のホトクタイ・セチェン・ホン・タイジ
 雪中の琴
 モンゴル帝国の旗手
 貴族の菩提寺の興亡と僧侶の受難 ほか(全10項)

第十三章 失地と王制の語り方
 ネオンと羊
 猛禽類の絶滅と調査の倫理
 呪われた草原開墾 ほか(全7項)

第十四章 歴史の郷愁
 「天の宗教」をめぐるトラブル
 民謡の記録
 アルタイ山とハンガイ山からの民 ほか(全8項)

第十五章 草原の「フランス革命」
 情報収集
 草原に建つ紫禁城の一角
 自死した輔国公 ほか(全8項)

第十六章 群雄割拠
 王家と公家の婚姻
 王の結婚式
 王印と武器密輸事件 ほか(全8項)

第十七章 貴族達の革命と「反革命」
 政略結婚
 「抗日」という名の権力闘争
 国共両党に従う分裂 ほか(全9項)

第十八章 体験する略奪婚
 「随旗モンゴル人」との通婚
 悪霊祓いの儀式
 「略奪」に出る「武装者集団」 ほか(全6項)

第十九章 中国人が売春するモンゴル人の自治区
 農村の陣地を守る社会主義教育
 「風の馬」の掲揚
 破壊と暴力を謳歌する生き方 ほか(全12項)

第二十章 冬の草原の政治
 燃える車と拝火祭
 占いの実践
 羊の管理と吉日選び ほか(全12項)

第二十一章 縁起の良い白い月
 正月の挨拶と食事
 中国に警戒されている宗教界
 絶滅に追い込まれた野生動物と猛禽類 ほか(全15項)


●第Ⅲ部 黄色い長城

第二十二章 神々の戦い
 長城までの失地
 中国の穀倉地帯になったモンゴルの処女地
 対ユーラシア遊牧民の最前線 ほか(全10項)

第二十三章 物理的防塁と心の壁
 中国が引いた心のライン
 生理的に受け付けない文化の溝
 世界史の動乱を伝える城の石碑 ほか(全11項)


●第Ⅳ部 抑圧の春

第二十四章 養女を迎える
 頭蓋骨と売られる中国娘
 草原のモンゴル医学者
 平原の樹木信仰 ほか(全12項)

第二十五章 王様がいた頃の歴史
 軍用犬泥棒
 万戸の由来と父系親族集団
 ウーシン旗内部の東西間の政治的対立 ほか(全5項)

第二十六章 農村に住む農民モンゴル人
 沙漠内の農村
 身体言語と日常生活の中国化
 中国化による生活の困窮 ほか(全7項)

第二十七章 廃れていくモンゴル語教育
 モンゴル語教育が軽視され続けた歴史
 同化政策との戦い
 性善説が招いた中国人の侵入と革命史観の定着 ほか(全6項)

第二十八章 聖主チンギス・ハーンの御前にて
 沙嵐の旅路
 モンゴル人参拝客
 監視される闇の中で ほか(全12項)

第二十九章 黄金オルドの祭祀
 一個中隊の秘密警察
 活きた羊を用いた占い
 荒野の戦士達の鎮魂 ほか(全13項)


●第Ⅴ部 世界宗教の初夏

第三十章 モンゴルに伝わって来たヨーロッパの「洋教」
 草原のクリスチャンを探す意義
 「青い宗教」の天主徒の過酷な運命
 「経典の民」たるモンゴル人 ほか(全13項)

第三十一章 帝国の白い旗
 春のモンゴル娘
 帝国の「白い旗」と人体由来の地名
 悪化した環境に住む祭祀者 ほか(全8項)

第三十二章 草原に育まれた人類学者と中国が創成した民族主義者
 大小二つのオンゴン
 オンゴンの祭祀と日本軍の記憶
 調査の終盤時の資料隠し ほか(全10項)

エピローグ 狼の心を持つ羊と崩落した長城

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索引
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