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詳細情報
ウイグル人と民族自決 全体主義体制下の民族浄化
サウト・モハメド
出版社:集広舎
出版年:2022年10月
コード:   346p   ISBN/ISSN 9784867350355
 
価格 2,999円
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「私は中国に戻れば、間違いなくすぐ拘束されます。故郷にいる家族に連絡もできません。日本以外に行くところはありません」。
中国政府によるジェノサイド(民族の破壊)が進む東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)。
絶望的状況を伝えるべく来日したウイグル人研究者による
ウイグルの「独立国」としての歴史、現状、そして未来への考察。


目次:
はじめに
第1章 ウイグル略史
 第1節 認められない遊牧民の歴史
 第2節 ウイグルの発祥
 第3節 ウイグルと匈奴
 第4節 ウイグルと突厥
 第5節 ウイグルとモンゴル
 第6節 ウイグルと清朝
 (1) 清朝に編入された経緯
 (2) ヤクブ・ベグ王国の樹立
 (3) 清朝の東トルキスタン再征服
 (4) 「新疆省」の誕生
 第7節 清朝の崩壊
 (1) 辛亥革命
 (2) 「藩部」の動き
 (3) 漢人軍閥の跋扈の東トルキスタン
 (4) 第1次東トルキスタン共和国
 (5) 第2次東トルキスタン共和国
 第8節 「新中国」に併呑
第2章 中国の民族政策
 第1節 現代中国の形成
 (1) 「中華民族」の創出
 (2) 革命派の領土意識
 (3) 「五族共和」体制の確立
 (4) 「五族融和論」への変遷
 第2節 中共の民族政策Ⅰ(建国前の時期、1921~1949年)
 第3節 中共の民族政策Ⅱ(「新中国」成立後、1949~2021年)
 (1) 建国初期(1949~1957年)
 (2) 民族政策の転換(1958~1976年)
 (3) 改革開放以後(1977~2021年)
 (4) 民族識別工作
 (5) 「中華民族」の多元一体構造
 第4節 「少数民族」に関わる国際的要因 
第3章 ウイグル自治区における諸問題
 第1節 人権侵害
 (1) 国際社会からの非難
 (2) 強制収容
 (3) 強制労働
 (4) 出産制限
 (5) 宗教弾圧
 (6) 差別
 第2節 同化政策
 (1) 漢語教育の強要
 (2) 漢人の入植
 第3節 搾取政策
 (1) 資源、エネルギー
 (2) 核実験
 (3) 環境破壊
 第4節 経済格差 
第4章 民族自決の法的概念
 第1節 民族自決の起源
 第2節 マルクス主義における民族自決
 (1) レーニンの民族自決
 (2) スターリンの民族自決
 第3節 第1次世界大戦後の民族自決
 第4節 第2次世界大戦後の民族自決
 第5節 冷戦後の発展
 第6節 現代国際法における諸原則 
第5章 「少数民族」弾圧の根源
 第1節 「中華大一統」という観念
 第2節 地政学上の考え 
第6章 対応策と今後
 第1節 現体制下での方策
 (1) 国際社会の世論に訴える
 (2) 漢人社会に訴える
 (3) 中共に訴える
〈民族意識の不滅性〉
〈民主主義の普遍性〉
〈漢族の民族主義のジレンマ〉
 第2節 中共が変わらない場合
 (1) 消極策
〈同化に応じる〉
〈政治体制の変革を待つ〉
 (2) 積極策
〈武力闘争〉
〈非暴力闘争〉
〈非暴力の限界〉
 第3節 平和的な解決方法を探る
おわりに
解説(饗場和彦)
索引
ウイグル関係年表

参考文献一覧


本書解説より:
饗場和彦(徳島大学総合科学部・教授=政治学・国際関係論)
ウイグル人の長い歴史と固有の文化、国際法の民族自決権、人権保障の普遍原則からして、今、中国内でウイグル人が置かれている状況は明白に不当である。他方、中国側にある、華夷秩序による固有の世界観と、欧米列強による屈辱の記憶、国益を最優先する統治心理などは、政治・国際関係をリアリズムでみるとき、ある種、当然ともいえ、その点で中国のウイグル人の状況に諦観を禁じ得ない。とはいっても、このシニシズムも「程度問題」という反論からは免れない。ウイグル人の実態がもはやジェノサイドに当たる可能性がある以上、甘受できる「程度」は超しているだろう。日本をはじめ国際社会としてウイグル人と連帯して問題解決に当たらねばならない必要性は、本書の読了後、いっそう得心できるはずである。

書評 出版社HPより:
中国に侵略されたウイグル人の現実は、将来の日本人の姿
 現在の中国(中華人民共和国)地図に新疆ウイグル自治区と記された箇所がある。その周辺には、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、パキスタン、アフガニスタンという国々があり、それぞれの国名の後ろに「スタン」という文字が確認できる。もともと、新疆ウイグル自治区は、東トルキスタンといって、現在の中国とは異なる民族、文化、歴史を持つ国だった。それが、なぜ、中国の領土に組み込まれているかといえば、石油などの地下資源があるからだ。地下資源のみならず、品質の良い綿花も栽培されており、潤沢で無償のウイグル人という労働力もある。更には、核実験場として、中国人からすれば都合の良い「実験動物」のウイグル人もいる。実験動物といえば、綺麗な内臓を持つと評判のウイグル人の腎臓、網膜などは、中国の輸出産品として移植を求める地域へと送られる。
 本書は、東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)が、いかにして中国に侵略されたかを証明する書である。330ページ余、全6章、27節からなる本書は、家族も故郷も捨てた代償として著者が後世に遺したいとして書き上げた大部だ。平常、アメリカの動向ばかりを窺っている日本からすれば、東トルキスタンの現実は他人事かもしれない。
 日本の敗北後、占領軍はプレスコード(検閲)によって、日本の歴史のみならず、他国の歴史も歪曲して日本人に伝えた。しかも、内政不干渉というルールも設定し、人道的な忠告も不可能。その結果、巷間、私たちが教わってきた歴史からは知りえない史実が本書に綴られている。それはそのまま、中国にとって都合の悪い歴史であり、日本人には決して伝えてはならない史実でもある。
 ちなみに、独裁政治に反対する方々にも本書は必携の一書だ。なぜならば、ウイグル人の悲劇を世界に伝えた四コマ漫画の作者・清水ともみ氏(『ウイグル人という罪』(清水ともみ、福島香織、共著)も著者のサウト氏に頻繁にアドバイスを求めたほどだからだ。
 しかし、日本にとっても、本書で見逃してはならない箇所がある。それが第五章「『少数民族』弾圧の根源」の第二節「地政学上の考え」だ。今も日本と中国、韓国、ロシア(ソ連)との間では領土問題が取りざたされる。その根源が述べられているからだ。この節には、イギリス、アメリカ、ソ連(ロシア)、中国という超大国の都合によって領土分割、切り取りを決めた「ヤルタ密約」が示されている。この「ヤルタ密約」によって、日本のみならず、大国に挟まれた東トルキスタンが中国に侵略された根源があるのだ。欧州大戦こと第一次世界大戦後、ベルサイユ条約が締結された。その際、国家間の秘密外交は禁止との話し合いがなされたにも関わらず、「ヤルタ密約」のように、目の前に獲物があればルールを無視するのが大国の常。
 東トルキスタンの現実を対岸の火事と見るか、はたまた自国に降りかかる災難と予見するか。本書を熟読して考えて欲しい。
令和5年(2023)1月4日
浦辺登
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