映画館のなかの近代 映画観客の上海史
上製
菅原慶乃
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出版社:晃洋書房 |
出版年:2019年07月 |
コード: 302p ISBN/ISSN 9784771031326 |
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座って静かに映画を見る観客はいつ、どのように成立し、どんな社会的役割を担ったか。上海の映画鑑賞と観客をめぐる歴史を紐解く。
遅刻やおしゃべりはご法度。途中で席を立つのは芸術が分からぬ「田舎者」。 そんなモダンな映画鑑賞マナーが、1920年代の上海で定着した。 座って静かに映画を見る中国人観客はいつ、どうやって成立したのか。 知られざる上海の近現代文化史を紐解く。
目次: 序章 映画観客とは誰か? 一 ヴァナキュラー・モダニズムとしての映画鑑賞 二 「発展史」という問題 三 本書の構成
第一章 上海の遊歩者――映画観客はいかにして登場したか 一 散漫な映画鑑賞 二 上海における遊歩――路上の近代体験 三 遊歩と庭園 四 遊歩と観劇の近代化 五 遊歩の拡大と盛り場の変容――茶園・遊楽場・映画館 六 知的な映画空間――ヘテロトピアの誕生
第二章 「理解する」娯楽――映画説明成立史考 一 「理解する」という鑑賞の美学 二 「格致」という名の科学の受容――映画前史として 「格致」の臨界――物理学から殭屍まで/科学パフォーマンスと「格致」の文体 三 教養/ 遊興空間の創出――楽しい知識としての幻灯・映画 格致書院と幻灯上映/映画という「格致」――映画鑑賞と説明 四 映画説明書の誕生――知的遊戯の「教科書」
第三章 闇のなかの知的なささやき――肉声による映画説明 一 映画を「聞く」ということ 二 「文明」の翻訳者 三 お節介な啓蒙者――新興中間層と映画鑑賞マナー 四 トーキー到来と映画説明の変容 五 「理解する」鑑賞美学と肉声による映画説明
第四章 「猥雑」の彼岸へ――「健全」なる娯楽の誕生 一 上海YMCAの映画上映実践 「魔都」の「猥雑」な映画上映?/新興エリートの文化サロン――上海YMCAの成立/ 「有益で健全なる」娯楽――上海YMCAの幻灯・映画上映/映画産業の濫觴として ニ ヘテロトピアの映画館――YMCAとその周辺 曽煥堂と上海大戯院・何挺然と北京大戯院/盧寿聯と滬江影戯院/程樹仁と孔雀電影公司
第五章 刺激の近代――『閻瑞生』の変奏 一 「刺激の近代」と長篇劇映画の誕生 二 『閻瑞生』の物語の成立――ジャーナリズム、演劇、映画 事件の経過と報道/黒幕小説/演劇における『閻瑞生』/映画『閻瑞生』の登場――リアリズムと扇情 三 視覚メディアの多様化と「事実」の演出 報道写真/幻灯とノンフィクション映画/視覚的刺激への耐性 四 ボディ・ジャンルと文化規律
第六章 映画館への通い方――映画鑑賞の成立 一 遊歩から映画鑑賞へ 二 陸澹安――忠実な遊歩者 陸澹安と『澹安日記』/早熟な遊歩者/映画鑑賞の目的化/定刻化する映画鑑賞 三 「進歩」的な映画鑑賞の実践――陸潔と郁達夫 陸潔の場合/郁達夫の場合 四 見えざる観客――女性と子ども
第七章 「肉感」と「健康美」のはざま――ポルノグラフィと「良き観客」 一 道徳規範としての鑑賞マナー 二 「肉感」イメージの氾濫――女体ヌード表象と取締 三 国産「肉感」映画の登場 四 「良き映画観客」と「良き国民」 五 アングラ化するポルノグラフィ市場 六 「健康美」と女体の科学
終章 映画観客史はどこへ向かうか?
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