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梁の蕭兄弟 昭明太子・簡文帝・元帝 上製
福井佳夫
出版社:汲古書院
出版年:2024年03月
コード:   618p   ISBN/ISSN 9784762967368
 
価格 16,500円
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六朝文学を彩った三人の皇子の数奇な運命――本邦初の評伝風研究!

【まえがきより】(抜粋)
 本書は、梁武帝(蕭衍)の三人の息子、蕭統、蕭綱、蕭繹をとりあげ、その生涯や人となり、さらに詩文の特色等について、叙したものである。この三人は、政治史でも登場する人物であるが、本書ではもっぱら文学史の立場から記述してみた。
 六世紀中国、蕭衍が樹立した梁朝は、南朝文化の最盛期を現出させた。この梁は、仏教が弘通したことで著名だが、文学もたいへん盛行し、この三人の兄弟は、詩人としても、また文人としても、よくしられている。長兄の蕭統(昭明太子)は、『文選』編者としてとくに著名だし、ふたりめの蕭綱(簡文帝)は宮体詩を唱道し、『玉台新詠』編纂を命じたひとである。また最後の蕭繹(元帝)はたいへんな学問ずきで、隻眼でありながらおおくの著作をつづった人物としてしられる。
 私はこれまで、六朝やその周辺の文章や文体(ジャンル)などの、作品論あるいはスタイル論ふうの研究に従事してきた。それらのテーマは、やりがいがあり、たいへん興味ぶかいものだったが、しょせんはものに関する研究であり、ひとを相手にしたものではなかった。……今回は研究テーマをすこし変更し、ものでなくひと、とくに文人のほうに移行させてみた。甲という文人が、この世にうまれ、なにごとかをなし、褒貶さまざまに評され、そして死んでいった事跡をたどりつつ、おりおりにつづった詩文を引用して、文学史的な意義や価値を論じてゆく――そうした「ひととその文学」ふうの研究に、はじめて挑戦してみたのである。
 最初に手をつけたのは、蕭繹だった。蕭繹は三人中、もっとも劇的な生涯をおくった人物だが、私には、彼の言動やそれをなした理由が理解しやすく、かきやすかったからである。つづいて、蕭統こと昭明太子をとりあげた。彼については、以前から「文選編纂の実態はどうだったのか」の問題に関心があったので、それを中心にかいてみた。三人目の蕭綱には、当初かなり苦労した。彼の人物イメージがつかめず、叙述の方向性がきまらなかったからだ。ただ、彼の晩年(侯景の乱の時期)の事迹をしらべるうちに、「運のわるいひと」という蕭綱像が脳裏にうかんできた。この人物イメージがきまると筆がすすみだし、一気にかきあげることができたのだった。
 本書がとりあげた三兄弟は、いずれも文学史上で著名な人物であるが、日本語で手がるによめる評伝ふう研究は、まだ出現していないようだ。本書が、その欠をうめることができれば、たいへんしあわせにおもう。


目次:
まえがき

昭明太子
Ⅰ 評伝
 第一章 天下は仁に帰す
 王筠「昭明太子哀策文」/美的行文/過褒ぎみの美文
 第二章 寛容な人がら
 乾坤一擲の大勝負/監国撫軍の日々/弟たちとの交流/東宮の老師たち/気くばり名人/曹丕への敬慕/文雅をたのしむ貴公子
 第三章 君子の文学
 「示徐州弟詩」/とぼしい個性/七ジャンルの娯楽性/「七契」のかたさ/君子然とした作風/哀悼書/翰の卓越/君臣をこえた哀悼
 第四章 中庸の文学観
 文質彬彬/常識的な発想/風教を助くる有り/明哲保身/明をみて暗をみない
 第五章 「文選序」の主張
 沈思翰藻/出色の選集序/選録の偏向
 第六章 『文選』の編纂
 王筠のかたり/編纂の開始/太子のそばで/おしよせる困難/完成前夜 
 第七章 とつぜんの死
 蠟鵝事件/玄圃園の後池
Ⅱ 附篇
 第八章 「沈思翰藻」の典拠をめぐって
 文学非文学の弁別/卞蘭「賛述太子賦」/蕭統の曹丕比擬/蕭綱の曹丕比擬/創作心理
昭明太子略年譜 

簡文帝
Ⅰ 評伝
 第九章 土をのむ夢
 あせる侯景/王偉の入れ知恵/天子の廃立/土嚢による圧死/壁にかかれた詩文/褒貶決しがたし
 第十章 わが家の東阿
 蕭綱の生まれ/少年時の詩文/幼にして出鎮/徐摛の補佐/七励の創作
 第十一章 雍州刺史の日々
 はりきる新刺史/北伐の勝利/辺塞詩をつくる/辺塞詩と艶詩/望郷の情
 第十二章 とつぜんの立太子
 友于兄弟/廃嫡立庶/立太子の内幕/班剣をわたす/快活な皇太子/亡兄の集序
 第十三章 精力的な活動
 政務への尽力/学問への関心/永明体への共感/戯れとしての艶詩/『玉台新詠』の編纂/兄弟の文学志向
 第十四章 不運な晩年
 侯景の乱/蕭綱の奮闘/兄弟の不和/さまざまな野心/艶詩と亡国/胆力ある主従/運のわるいひと
Ⅱ 附篇
 第十五章 息づく叙景─蕭綱詩の美質
 清麗な叙景/雍州での戦争体験/息づく詩句/艶詩中の叙景/息づく美女
簡文帝略年譜

元帝
Ⅰ 評伝
 第十六章 文武の道は絶えたり
 江陵をめざせ/梁廷の油断/市内突入/書物炎上/陥落の夜/甥の罵倒/最期の日々/元帝の処刑
 第十七章 隻眼の劣等感
 蕭繹の生まれ/母阮修容/優秀な兄弟/片目の失明/隻眼へのからかい/つよい劣等感/母子一体
 第十八章 貪欲な読書魔
 上昇意欲/熱心な読書/地方官の日々/湘東苑の遊び/詩文の腕も達者/蕭績への哀悼/蕭綱との親交
 第十九章 名声と野心
 名声をめざす/著述をめざす/劉敬躬の乱/母の死/野心きざす/蕭綸の狼藉/西帰内人
 第二十章 即位と骨肉の争い
 救援軍の混乱/鬱勃たる野心/二甥との戦い/西魏の参入/蕭紀の野心/兄弟対決/兵威を逞しくせよ
 第二十一章 なぜ書物をやいたか
 根源は劣等感/体面をかざる/被害妄想/衝動的な焚書/名声をあげる道具/書物への怒り/文化史上の蛮行
Ⅱ 附篇
 第二十二章 玄覧賦─あざとい巨篇
 野心勃々たる巨篇/十の章段/紀行賦の流れ/自信満々/国家的規模の自慢/漢賦ふう雄大さ/ごった煮/紀行から言志へ/あざとい印象
元帝略年譜

参考文献一覧/あとがき/索引
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