都賀庭鐘における漢籍受容の研究 初期読本の成立
/研究叢書
上製
劉菲菲
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出版社:和泉書院 |
出版年:2021年03月 |
コード: 290p ISBN/ISSN 9784757609846 |
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江戸時代中期の読本作家・都賀庭鐘の読書の実態や学問の内実を具体的に考察、作品の典拠や生成過程、創作意図、創作方法などを解明。
本書は、江戸時代中期の読本作家である都賀庭鐘についての初めての研究書である。庭鐘の読本は、白話小説から得た素材を日本の歴史譚や伝説の世界に織り込むことを基本的な創作方法とする。一篇の作品を創作する際に、複数の和漢の文献に取材し、予想以上に広範な和漢の文献を駆使しており、その創作の技法も彼の知的レベルを反映して難解で、いまだ明らかにされていない部分も多く残されている。本書の研究目的は、幸いにして残された庭鐘の自筆読書筆記『過目抄』を最大限に活用することにより、庭鐘の読書の実態や学問の内実を具体的に考察し、その読本作品に潜む数々の謎(作品の典拠や生成過程、創作意図、創作方法など)を解明することである。それを通して、庭鐘がいかに勤勉に白話小説、その他の漢籍を読みこなしていたのか、そしてどのように工夫を凝らして吸収した知識を創作に生かしていたのか、その知識の再生産のプロセスを再現し検証する。
目次: 凡例 序章 一 初期読本の成立背景 二 都賀庭鐘とその著述 三 本書の目的 四 本書の構成
第一部 都賀庭鐘読本の典拠研究 第一章 『英草紙』第六篇「三人の妓女趣を異にして各名を成す話」典拠考 はじめに 一 「三人の妓女」の梗概 二 第二話、第三話の典拠―王穉登「馬湘蘭伝」― 三 第一話の典拠―李師尹「王幼玉記」― 四 冒頭文と清代白話小説『照世盃』巻一「七松園仮を弄して真と成す」 おわりに
第二章 『莠句冊』第五篇「絶間池の演義強頸の勇衣子の智ありし話」典拠考 はじめに 一 「絶間池の演義」における強頸・衣子築堤譚 二 第二話の木菟宮怪異譚と明代白話小説『禅真逸史』 三 第三話の大隅宮怪異譚と明代白話小説『禅真後史』 おわりに
第三章 『通俗医王耆婆伝』典拠考 はじめに 一 『通俗医王耆婆伝』の梗概 二 『通俗医王耆婆伝』と明代白話小説『金瓶梅』 三 『通俗医王耆婆伝』と明代白話小説『禅真逸史』『禅真後史』 おわりに
第四章 『義経磐石伝』典拠考 はじめに 一 『義経磐石伝』と明代白話小説『金瓶梅』 二 『義経磐石伝』と明代白話小説『拍案驚奇』 おわりに
第五章 都賀庭鐘読本における『水滸伝』の受容 はじめに 一 先行研究 二 『繁野話』と『水滸伝』 三 『莠句冊』と『水滸伝』 四 『通俗医王耆婆伝』『義経磐石伝』と『水滸伝』 五 都賀庭鐘読本における『水滸伝』語彙・表現の利用 おわりに
第二部 都賀庭鐘読本の新解釈 第六章 『繁野話』第三篇「紀の関守が霊弓一旦白鳥に化する話」新論 はじめに 一 『任氏伝』、「人妻」、「紀の関守」の梗概 二 小蝶の人物造型 三 庄司次郎の人物造型 四 雪名の人物造型 おわりに
第七章 『繁野話』第八篇「江口の遊女薄情を憤りて珠玉を沈る話」新論 はじめに 一 「杜十娘」と「江口の遊女」の梗概 二 「江口の遊女」の創作動機―冒頭文を通して― 三 小太郎の人物造型 四 白妙の人物造型 おわりに
第八章 『垣根草』新論 はじめに 一 書物の体裁 二 語彙・表現 三 典拠 四 翻案手法 五 作品の根幹にある作者の価値観 おわりに
第三部 都賀庭鐘の読書と習作 第九章 都賀庭鐘の読書筆記『過目抄』とその読本創作 はじめに 一 『過目抄』の抄録書目 二 『過目抄』に見える白話小説に関する抄記 三 『過目抄』と庭鐘の読本創作 おわりに 付録 『過目抄』各冊の抄録書目一覧
第十章 都賀庭鐘の白話運用―『通俗医王耆婆伝』を中心に― はじめに 一 『通俗医王耆婆伝』白話語彙の使用実態 二 『通俗医王耆婆伝』白話語彙の出拠 三 『通俗医王耆婆伝』白話語彙の運用手法 四 『通俗医王耆婆伝』白話語彙の誤用や理解不足 おわりに
終章 一 各章のまとめ 二 今後の課題
初出一覧 あとがき 索引(人名・書名)
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