●編著者のことば
「世界の屋根」といわれるチベット高原が、もとは、ほんとうに一面の大海原だったのだろうか？ そんなことは、現代の先進的で、科学的な測定方法がなければ、誰もが信じられないことである。だが、チベット族のあいだに広くつたわる故事のなかに、次のようなヒマラヤについての伝説がある。……（本文より）

●構成
日本の読者へ（チレ チュジャ）
第1章 神秘的で、人を魅了する世界
伝説では、滄海が桑畑に変わった／秀麗で、多彩なチベット各地／チベットの悠久の歴史と民族／最初の王ツェンポが出現した／300年にわたる吐蕃の興亡／蔵漢の友情は古くからあった
第2章 チベット族の発祥の地サンナン
五つの頭の龍とタントク寺／ユンブ・ラカンと仏教の伝来／金城公主が暮らした場所／チベット最古のサムエ寺／古代チベット王たちの陵墓
第3章 チベットの原始宗教と仏教
神に祈り悪魔を降したボン教／仏教が大いに栄えた二つの時代／チベット仏教の四大宗派／ツォンカパの宗教改革と政権／パンチェン・ラマと転世の霊童
第4章 都ラサの過去から現在まで
ソンツェン大王のラサ遷都／湖を埋めて、大昭寺を建てる／世界的に注目されるポタラ宮／ノルブ・リンカは「宝の花園」／ラサにある三つの大寺院／歴史を語る四つの記念碑
第5章 珠玉のような自然と建築物
聖なる水域ヤムゾク湖／古城ギャンツェの十万仏塔／ツォン山にある抗英戦の跡／チベット第二の街シガツェ／荘厳きわまりないタシルンポ寺／サキャ寺は仏教芸術の宝庫
第6章 東チベットの中心チャムド
チベット最古のガル遺跡／古来、チャムドは兵家必争の地／黄帽派の拠点チャンバリン寺／新たな変容をとげるチャムド
第7章 西南の辺境で暮らす人たち
少数民族の伝説とその舞台／メンバ族たちの暮らしぶり／少数民族の宗教と冠婚、葬祭／チャンタン高原には無数の湖が／華麗にして豊饒なる無人区／カンリンポチェ峰は神山の王／古代グゲ王国は神山のふもとに
第8章 チベットの祝祭日と風俗
チベット暦の年末と年始は／ショドン祭りは宗教から娯楽へ／郊外で夏を楽しむリンカ遊び／水とたわむれるシャプシュク祭り／豊作をまえ祝いするオンコル祭り／チベットの誕生祝いとその前後／大きく変化した結婚のやり方／葬儀のやり方には五種類ある
第9章 チベットの文化と芸術
チベット高原に根づいた民間故事／世界最長の史詩「ケサール王物語」／海や空ほどもあるチベット民謡／不可分の関係にある歌と踊り／チベット劇アチェラモと代表作
翻訳をおえて（池上正治）／索引