天網―天罰
/中国現代小説系列
鄭万隆 著/青野繁治 編注
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出版社:東方書店 |
出版年:1998年01月 |
コード:00506 120p ISBN/ISSN 4-497-97532-0 |
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辺境の労働改造所に繰り広げられる戦慄の人間ドラマ! 文化大革命以後の現代中国の中・短編小説を、原文と詳細な注釈を対照しながら読む好評シリーズ。舞台は大興安嶺山脈に作られた労働改造所。塀の中のひとくせもふたくせもある人々が織りなす戦慄のドラマ。マジック・リアリズムの手法を駆使した傑作。詳細な注を施し、教室用のテキストにも、自習用、速読教材にも使用できる語学テキスト。 一般用・学校用テキスト(中級以上)/講読。●編著者のことば 主人公の若い女性安寧が冤罪で「労働改造」に送られる場面から始まるこの小説は、一見「文化大革命」の時代を若い独身女性の視点でイモーショナルに描いたリアリズム小説のように見えるが、車の中での運転兵とのやりとり、「廟地」と呼ばれる労働改造所に着いてからの様々な事件、「廟地」に生きる様々な囚人たちのエピソードと、次第に超現実的な色合いを帯びてきて、怪奇幻想小説の様相を呈する。……それにしても、朝鮮戦争帰りの命知らずの運転兵を心底怯えさせ、最後に人々が挑んで酷い目にあわされる巨大な山のような「やつ」の正体は一体何なのであろうか。「天網」という題名はもちろん「天網恢恢、疏にして漏らさず」という成語からきている。これは天道が公平で悪人には必ず罰を下す、ということを意味するが、山のような怪物とは、この「天道」をさすのではあるまいか。(「まえがき」より)
●構成 まえがき(作者について/作品について)/天網
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■編著者紹介
鄭 万隆(てい ばんりゅう):1944年黒竜江省愛輝生まれ。1974年から北京出版社で編集の仕事に従事するかたわら作品を執筆。81年に発表した中篇「年軽的朋友們」は『当代』文学奨を受賞。80年代半ばから黒竜江を舞台に「異郷異聞」シリーズを執筆。70年代以前の社会主義中国の価値観とは異質の世界を描き出し、新境地を切り拓いた。本書『天網』は「異郷異聞」の視点を中国の現代社会に移した「東西南北」シリーズの一編で、『中国作家』1988年第1期に発表された。 青野 繁治(あおの しげはる):大阪外国語大学助教授。
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