●編著者のことば
言語を分析する技術の獲得に加えて、なによりも「ことば」というものを人間という存在を形づくる風景の核と捉え、真摯な探求心をもって深く思索することを、大河内先生は自らの実践を通して私たちに教えられたと考えます。この論文集は小さいながらも、大河内先生が蒔かれたそのような種の実りの一つです。「本とは考えるための道具である」と言われます。この論文集が多くの読者の探求心を刺激する新たな種となってまた別の実りへとつながり、先生の学恩に少しでも報いることができればと念じてやみません。（「編集後記」より）

●構成
序（大河内康憲）／まえがき（中川正之）／大河内康憲先生略歴
漢語語法研究的三個平面説（胡裕樹・戴耀晶）／句法、句型範畴（李臨定）／中国語、日本語、英語における共同行為者と道具をめぐって（中川正之）／相手格の「と」とその周辺（沈国威）／中国語疑問詞の不定用法と日本語の不定指示詞（大西智之）／処所賓語初歩考察（史有為）／「在大阪住」と「住在大阪」（盧涛）／論漢語方位参照系統中的対立平行現象（方経民）／“処所”範畴（張黎）／動詞接尾辞“了”の意味と表現機能（木村英樹）／「Ｖ的Ｎ」における已然と非已然（楊凱栄）／漢語並列構造における連合と選択（中川千枝子）／<一個什麼様的人>と<什麼様一個人>（原由起子）／数量詞限定名詞句の認知文法（古川裕）／談談“有+些+Ｎ”与“有+Ｎ+些”結構（靲衛衛）／名詞性連体修飾語と構造助詞“的”（杉村博文）／国俗語義縦横談（王徳春）／漢語罵人話簡論（胡士云）／連環画から見る中国人の「非言語コミュニケーション」について（奥田寛）／試論「大人」和「小人」、「男」和「女」的比較表達（蘇桂荂）／擬音語と音韻史（森博達）／日中オノマトペ助詞の比較（中西正樹）／日本語・中国語中立文の文アクセント（朱春躍）／文字改革から文字整理へ（朱一星）／『新華詞典』における親字の増減について（黄當時）