著者の実体験に基づき、私費留学生の悲哀を描いた社会派小説! その留学生は希望と不安を胸にひとり東京へやってきた。新聞記者の職を捨て、妻子を残し、華やかな生活を夢見て。しかし、彼の出会った現実は、上海で耳にした「夢の東京」とはあまりにかけ離れていた。すさんだ先輩留学生や、弱みにつけこみ金をむしり取る雇い主の間で、彼もしだいに変わっていった。そんな彼の心を癒してくれたのは息子のピアノ教師。だがささやかな安らぎさえ長くは続かなかった。……日中合作のドラマが中国で高視聴率を記録し、日本でも放送を計画中。今なおさまざまな外国人が新しくやってきては去るこの日本で、国とは何か、人とは何かを問いかける話題の小説。●編著者のことば 作品の背景には、世界有数の物価高をほこる日本と発展途上にある中国との経済的格差、日本における外国人労働者の問題や外国人差別の問題などが重層的に横たわっている。……日本と外国の関係を考える際、われわれはとかく外の世界へと目を向けがちだが、足元にある混沌とした現実だけでも十分、示唆に富んでいるという思いを新たにする。(「訳者あとがき」より)
●構成 1 旅立ち/2 悪い予感/3 暗中模索/4 日本語学校寮/5 野性の目ざめ/6 労働改造犯/7 ラブレター/8 労働災害/9 慰謝料/10 ビザの更新/11 職探し/12 再会/13 新しい女/14 南米逃亡計画/15 上海貴族/16 運命の行方/訳者あとがき
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