太平洋戦争末期、ある中国人作家の生と死の真実! 郁達夫(1896~1945年)はかつて東京帝国大学経済学部に学び、後に中国で一時は魯迅と並び称される人気作家となる。日中戦争勃発後、シンガポールへ渡り、日本軍による同地陥落後は、身分を隠しスマトラ島に潜伏。日本憲兵の通訳をさせられたほか、多くの日本人とも親交を持ったが、日本降伏直後失踪。日本憲兵による殺害説はじめ諸説が流れるなか、その真相は長らく謎につつまれてきた。本書は、著者執念のフィールドワークによって、郁達夫の晩年の生活、そしてその死の真実を明らかにする衝撃の書である……!●編著者のことば 郁達夫の殺害命令を下した人物をどのように割り出したか、どのようにして自供を導き出したかは、今回初めて詳述した。この元憲兵をそれと特定するに当たっては、第十一章で述べたように信じがたいほどの幸運がいくつも重なった。……そうした偶然をあれこれ考えると、当座は郁達夫の霊が乗り移って、そんな結果がもたらされたのではという気分にさえなったものである。……郁達夫の避難生活と失踪については、つい最近も目にしたが、ひどい異説も存在し、誤解も少なくない。……なによりもまず正確な事実を把握した上で、郁達夫を死にいたらしめたあの戦争や、日本軍の占領政策や、日本人の国民性などが論じられることを願う。(「あとがき」より)
●構成 まえがき/序章 太平洋戦争勃発とシンガポールでの活動/第一章 シンガポール脱出と逃避行/第二章 「乱離雑詩」の執筆/第三章 パヤクンプー定住/第四章 通訳時代(日本占領時代のブキチンギ)/第五章 パヤクンプーでの生活/第六章 結婚/第七章 日本人の見た「趙廉」/第八章 身分の発覚/第九章 身分発覚後/第十章 失踪/第十一章 失踪の真相/終章 棺を蓋いで……/あとがき
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