中国人の宇宙観を解明 文学とは、言語・思想と一体化した秩序(コスモス)の全体の名称に他ならず、それは一つの宇宙を形成するものといえよう。本書は、中国文化の重要な構成要素である中国的宇宙観を文学言語―詩語の中から抽出し、その特質を明らかにしようとする論文集。中国文学における人間と宇宙の問題、文学の基礎となる言語自体の持つ構造、文学作品の形式自体に包含される宇宙、という三つの柱に対応して設けられた三つのパートに、計4篇を収録。●編著者のことば 1980年代はコスモロジーの時代であったといっても過言ではない。……権威への反抗は、反抗すること自体が権威化するというパラドックスを常にはらんでいる。このパラドックスから逃れる一つの方法は、カオス自身を反抗の対象とすることである。カオスへの反抗、言い換えればコスモス志向への転換の中に否定の情熱を再生することによって、新しい秩序を構築する動向が生み出されたのである。1980年代がコスモロジーの時代であったのは、まさにこのような理由によるものと言えよう。そして、私達の研究もまた、このような時代の動向の中に位置する試みなのである。(「あとがき」より)
●構成 まえがき I 李賀の詩をめぐる宇宙論的考察(松本肇) 1 シャーマン詩人 2 空間の視点から―「南山」考 3 時間の視点から―飛躍・逆行・停止 4 馬と剣のシンボリズム(1)―「馬詩二十三首」の構造 5 馬と剣のシンボリズム(2)―剣のシンボリズム 張読『宣室志』に表れた晩唐人の宇宙観(内山知也) 1 序 2 『宣室志』について 3 『宣室志』に表れた宇宙観 (1)天 (2)上帝 (3)神人 (4)赤水神―漂泊する神 (5)瀵水神 (6)娥皇女英 (7)神仙 (8)太歳 (9)錬丹 (10)定命の変更 (11)冥界 (12)鬼 4 張読と宇宙観 (1)張読の生涯 (2)張読の宇宙観 II 四声から平仄へ(樋口靖) 1 序 2 四声 (1)四声の発見 (2)四声の性質に関する諸説 (3)四声の弁別 (4)四声の運用 3 平仄 (1)平声の重視 (2)平仄の確立 4 平仄の基盤 (1)音声学的性質 (2)平仄と現代声調 5 結語 III 『詩譜』のコスモロジー(堀池信夫) 上篇 『詩譜』の背景 序 1 鄭玄の学問形成 2 『三礼注』と『詩箋』 3 『詩譜』の注釈および「譜図」の復原 (1)徐整の注 (2)欧陽修の「譜図」復原 (3)朱鶴齢の復原 (4)戴震の復原 (5)呉騫の復原 (6)丁晏の復原 (7)胡元儀の復原 (8)補 下篇 「譜説」の考察 1 「詩譜序」の検討 2 「風譜」の検討 (1)「周南召南譜」 (2)「邶鄘衛譜」 (3)「王城譜」 (4)「鄭譜」 (5)「斉譜」 (6)「魏譜」 (7)「唐譜」 (8)「秦譜」 (9)「陳譜」 (10)「檜譜」 (11)「曹譜」 (12)「豳譜」 3「雅頌譜」の検討 (1)「小大雅譜」 (2)「周頌譜」 (3)「魯頌譜」 (4)「商頌譜」 あとがき
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