張謇伝稿―中国近代化のパイオニア
上製
章開沅 著/藤岡喜久男 訳
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出版社:東方書店 |
出版年:1989年10月 |
コード:00251 408p ISBN/ISSN 4-497-89276-X |
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近代中国の教育・実業を担った遺賢の生涯 実業家・教育家として救国に心を砕き、共和制中国を夢みて孫文と袁世凱の間を取り持った人物として知られる張謇。彼こそは中国近代化の影のパイオニアであった。本書は、清末民初という時代を駆け抜けた張謇の伝記である。農民の子に生まれ、幼くして学に志し、40歳代にして「状元」となるも官界に入らず、以後30年を「郷紳」として生きる一方で、実業と教育に力を注ぎ、中国近代化の一端を担ったその卓抜なる生涯を、日本未紹介の資料を用いて詳細に跡づける。中国近代史の裏面を理解するために必読の一冊。●編著者のことば 中国近代化の困難な道程の中で、張謇はきわめて重要な早期開拓者の一人である。彼は荊棘の道を切り開き、苦労して、わが国の実業・教育発展のために、偉大な貢献をした。……わたくしが張謇伝を書こうと考えたのは、もう二十数年も前のことである。彼は科挙の試験にしばしば挫折を繰りかえした旧時代の知識人で、齢不惑をこえて状元の成績で進士になったが、官爵には恬淡たるもので、転じて全精力を近代的実業と教育に傾注し、死して後已むという風で、倦むことがなかった。いかなる歴史的機縁がかかる立派な人間を生んだのか、またいかなる力が彼をかかる艱苦奮闘の一生に駆りたてたのか、それはわたくしにとって魅力尽きぬ問いかけであった。(「自序」より)
●構成 日本語版への序言/自序/引言/凡例 第1章 年少にして風霜を凌ぐ 第1節 游幕の生涯 1 少年時代/2 帰籍問題/3 入幕/4 慶軍に投ず 第2節 郷里の経営 1 科挙につまずく/2 社会活動/3 教育と著述 第3節 状元合格の裏に 1 状元に及第す/2 帝后の党争 第2章 商を言い仍お儒に向かう 第1節 状元にして廠を弁ず 1 転変の契機/2 困難な出発/3 大生紗廠とその工場主 第2節 両世紀の狭間で 1 「認捐」を行う/2 維新変法/3 政変前後/4 「東南互保」 第3節 実業と教育 1 『変法平議』のこと/2 宏図初めて展ぶ/3 学校の興弁 第3章 再び張琴改絃す 第1節 立憲の倡導 1 『東游日記』/2 立憲運動に身を投ず/3 預備立憲公会 第2節 諮議局と請願運動 1 江蘇諮議局/2 国会請願運動 第3節 地方自治 1 「村落主義」/2 蘇省鉄道/3 勧業会と国民外交 第4章 人海戦たけなわ 第1節 辛亥前後 1 「最後の忠告」/2 共和への転向/3 滬鄂の争い/4 南北の調和/5 革命の終局 第2節 農商部総長 1 宋案の調停/2 張勲を追う/3 総長としての業績/4 最後の決裂 第5章 死愁休まず 第1節 大生集団の興衰 1 鼎に盛んなる春秋/2 好景常ならず 第2節 苦難の晩年 1 さらに奮闘す/2 開拓者の足跡 付録:大事年表・主要参考文献 訳者あとがき
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■編著者紹介
章 開沅(しょう かいげん):1926年中国浙江省生まれ。南京金陵大学歴史系卒業。華中師範大学教授、同学長の他、中南地区辛亥革命研究会理事長、湖北省社会科学連合会主席などを歴任。『辛亥革命史』全3巻(共同主編)、『辛亥革命と中国社会』『離異と回帰―伝統と近代化の関係試析』など編著書多数。 藤岡 喜久男(ふじおか きくお): 1921年北海道生まれ。北海道大学文学部大学院(旧制)修了。北海道大学文学部助手、北海学園大学法学部教授を歴任。『張謇と辛亥革命』、スタイガー『義和団―中国とヨーロッパ』(翻訳)、ブランド・バックハウス『西太后治下の中国』(翻訳)など著訳書多数。
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