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歴史と文学のはざまで 唐代伝奇の実像を求めて /東方選書61
高橋文治
出版社:東方書店
出版年:2023年10月
コード:22316   240p   ISBN/ISSN 9784497223166
 
価格 2,640円
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中国幻想小説 読み方指南

今日のわれわれがフィクションとして読みがちな中国古代の幻想小説は、元来「事実の記録」として書かれ、読まれてきたものである。12篇の唐代伝奇を取り上げ、「理想の世界」「結婚観」「夫/男性の処世術」「狐や物の怪」を当時の知識人たちはいかに描き、受け止めたのかを読み解いていく。

今日のわれわれは中国の幻想奇譚をフィクションとして読みがちである。だが、それらはもともと〈事実の記録〉として書かれ、伝統中国に生きた読者たちもそれを〈事実の記録〉として読んだ。
唐代の知識人は〈楽園〉にどんな理想を込めたのか。〈陰間(あのよ)〉からいっとき戻った妻の語りから見える結婚とはいかなるものか。狐や物の怪にできなくなったことからは武人の出世と文人の不遇が透けて見える。神秘や怪異を語っているようで、じつは当時の社会や風俗を記した実録なのである。
当時の視点で〈唐代伝奇〉を読むとなにが見えてくるのか。中国の幻想奇譚をより深く楽しむための読み方指南。

著者の言葉
〈ものがたり〉を生まなかった中国にあっても、〈仮想世界への衝動〉は文学の中に確実に息づいていた。(略)だが中国にあっては、文筆は公的な社会生活のためにあって、個人のロマンのためにあるのではなかった。(略)そのため、中国の古典小説が描こうとしたのも、幻想の甘い陶酔ではなく、野望や闘争の苦い幻滅だった。
本書は元来、幻想文学のすべてがその根底に帯びるであろう〈フィクションへの衝動〉を前提にして、唐代の知識層がなぜそれから乖離して〈伝奇〉を育んだのか、彼らが抱えた〈大人の事情〉をなるべく実情のままに掘り起こしてみたい、との野心から生まれたものである。私が問題にしたかったのは幻想それ自体ではなく、幻想の奥にひそむ記述者の意識であり、彼らが抱いた世界観や人間観であった。(「あとがき」より)

構成
序章 〈異記〉〈雑伝〉と〈実録〉
一 はじめに
二 『桃花源の記』を例にして
三 まだ見ぬ世界への憧れ

第一章 君臣たちの楽園
一 中国の〈楽園(パラダイス)〉
二 耳の中の異境

第二章 死んだ妻が語るには
一 〈君臣〉〈父子〉と〈夫婦〉
二 唐晅の妻が語るには
三 『唐晅』が語ること
四 馮婆さんが語るには

第三章 妻の実家と夫の処世
一 木偶が語ること
二 韋皋と玉簫の物語

第四章 柏林の奥にひそむもの
一 〈狐神〉の詐術
二 〈天機〉を盗むもの
三 〈天〉の衰微に乗じるものたち
四 〈狐魅〉に侮られるもの

終章 「人虎伝」の系譜が語ること
一 「人虎伝」の系譜
二 〈唐代伝奇〉が語ること

あとがき
図版一覧
■編著者紹介
1953年、佐賀県生まれ。京都大学、同大学院で中国語学中国文学を専攻し、追手門学院大学文学部や大阪大学大学院文学研究科等で中国文学を講じた。現在、大阪大学名誉教授。中国文明論の構築を遠い目標にして、華北で生まれた隋・唐・宋・金・元期の戯曲小説等文学資料を、主に社会史的な観点から読んでいる。主な著作に『成化本『白兎記』の研究』(共著)(汲古書院、2006年)、『中国文学のチチェローネ―中国古典歌曲の世界―』(共著)(汲古書院、2009年)、『モンゴル時代道教文書の研究』(汲古書院、2011年)、『元典章が語ること』(共著)(大阪大学出版会、2017年)、『元好問とその時代』(大阪大学出版会、2021年)等がある。


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