アウトサイド三国志
中国世界の統一をめざす曹魏、孫呉、蜀漢の三国に周縁の諸勢力はどのように対峙したのか。烏桓、山越、鮮卑、高句麗、氐、西南夷、クシャン朝、倭について、史料を徹底的に読み込んで考察する。
秦の始皇帝から後漢の献帝まで450年近く続いた統一が瓦解し、曹魏、孫呉、蜀漢に分裂した三国時代と、これに続く両晋・南北朝時代は中国史上でも有数の分裂時代であった。実質的には300年近くに及んだ政治的な分裂は、中国世界の内部だけではなく、外部すなわち周縁に位置していた諸種族や諸国家に対してもさまざまな影響を与えることになった。ある勢力はこのような状況を利用して中国王朝との関係を強化し、また中国王朝の側でも周縁の勢力との関係強化につとめる動きが活発化していった。倭王卑弥呼による曹魏への遣使や、倭の五王による南朝への遣使もこの時代のことである。しかし周縁にあった全ての勢力がこの分裂の時代をしたたかに生き抜いたわけではない。本書は、三国時代の非漢族のうち、烏桓、山越、鮮卑、高句麗、氐、西南夷、クシャン朝、そして倭を取り上げ、それぞれにとっての三国時代について、『三国志』に代表される史書を読み込みながら考えてみたものである。
【関連書籍】
『三国志の考古学 出土資料からみた三国志と三国時代 /東方選書52』 関尾史郎 2019年06月 東方書店
●著者の言葉
漢族と非漢族とを問わず、曹魏、孫呉、蜀漢の三国を取り囲むように存在していた諸勢力が有する政治的、軍事的な力量(時としては経済的な力量も)がにわかに注目を浴びることになり、その重要度が倍増したのではないだろうか。その諸力を統一事業に動員するためである。(略)
とすれば、周縁の諸勢力から見た場合、中国世界の政治的な分裂は必ずしも歓迎すべき事態というわけではなかったことになる。自らが保有する諸力の提供を求められることにもなりかねないからである。(略)
本書は、その「大小強弱」や「正負」の違いを、曹魏、孫呉、蜀漢の三国すなわち中国王朝の側ではなく、周縁諸勢力の側から問い直すささやかな試みである。
(「序章 「東アジア世界」と三国時代」より)
●構成
凡例――まえがきにかえて
序 章 「東アジア世界」と三国時代
第一章 三国鼎立と非漢族
はじめに
一 烏桓
二 山越
おわりに
第二章 鮮卑と高句麗
はじめに
一 鮮卑
二 高句麗
おわりに
第三章 諸葛亮の「隆中対」
はじめに
一 「隆中対」を読む
二 氐
三 西南夷
おわりに
第四章 クシャン朝と倭
はじめに
一 クシャン朝
二 倭
おわりに
終 章 非漢族にとっての三国時代
あとがき
引用史料
参考文献
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