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詳細情報
中国の知的障害者とその家族 「新しい社会性」のエスノグラフィー 上製
奈倉京子
出版社:東方書店
出版年:2023年02月
コード:22301   304p   ISBN/ISSN 9784497223012
 
価格 4,950円
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ケアは家族へ回帰するのか、社会に頼ることができるのか

民間組織「機構」の役割を当事者の目線で検討し、また複数の障害者家族への聞き取りを通して、中国西北部に暮らす知的障害者とその家族の生の営みを映し出す。

「新しい社会性」とは、家族もしくはその他の社会集団の代表ではない、一人の人間が、個人と個人の間で、社会における活動を通して互いに影響を与え合うことを特徴とする、新たな個人とその結びつきのありかたである。2000年代の中国は、中国共産党の管理と指示に従って行動する必要があり、かつ個人化という「新しい社会性」が生まれている社会状況である。
本書では、家族以外の多様な他者とのかかわりが必要とされる障害者とその家族を対象に、障害のある家族成員のケアは家族以外の社会関係(中間的領域/組織)に頼ることができるのか、あるいは家族へ全面的に依存せざるを得ない状況にあるのかといったことを考察する。
第一部では法整備や中間的領域/組織の成り立ちなど、社会の面から障害者家族とのかかわりを見る。第二部は知的障害の子をもつ家族の聞き取りをもとに、個人の側から障害者とその家族の「新しい社会性」の内実を見る。

著者の言葉
中国の障害者とその家族を考察対象にする理由は二つある。一つは、彼/彼女らが支援を必要とする社会的弱者であり、他者とのつながりの諸相が中国の社会・文化的な特徴を照射すると考えるからである。中国の障害者とその家族の生き方を通して、現代中国で包容力のある社会の形成は可能なのかということについて探究したい。もう一つは、中国の市場化、グローバル化は、社会的に弱い立場にある集団のなかでも、とりわけ障害者に対して大きな影響を与えたと考えられるからである。これまで中国政府は、少数民族、女性、移住者等、社会で周縁化された人々を、国家統合の観点から包摂しようとしてきた。これに対し、障害者については、国際社会からその動向が注視されており、政府は国際的評価にかかわる集団の問題と捉えている。(「まえがき」より)

構成

まえがき

序 章
第一節 問題意識と本書のテーマ
第二節 先行研究、当該テーマの位置および独自性
(一)中国の障害/者を対象とした研究
(二)障害者家族の社会学的研究
第三節 分析の視点
(一)「新しい社会性」の実証的考察
(二)中間的領域/組織
第四節 研究の方法
(一)調査地の選定理由
(二)調査の対象と内容
(三)調査者の立場性
第五節 本書の構成

第一部 中間的領域/組織の役割からみる「新しい社会性」

第一章 中国政府の障害認識と政策理念
第一節 障害の概念形成
(一)障害の可視化と定義
(二)人口統計調査
第二節 政策理念からみる障害認識
(一)中国型社会主義的福祉における障害
(二)障害者福祉政策
第三節 法整備にみる政府の障害認識
第四節 障害者社会保障管理体制と中国障害者連合会
小括

第二章 中国的ソーシャルワークと民間組織
第一節 「社会工作」
(一)中国におけるソーシャルワークの起源、特徴とその断絶
(二)一九四九年以降の「社会工作」
第二節 「機構」について
第三節 「社会工作」と「機構」のかかわり
小括

第三章 高等教育機関の教員による「機構」の中間的領域/組織の役割
第一節 大学における「社会工作」教育の困難
第二節 高等教育機関の教員による「機構」
(一)高等教育機関の教員による「社会工作機構」
(二)甘粛北辰社会工作サービスセンターによる障害のある子どもの支援事例
小括

第四章 知的障害者支援組織「慧霊」の中間的領域/組織の役割
第一節 知的障害者支援組織「慧霊」
第二節 蘭州市の「慧霊」
小括

第五章 知的障害児教育支援センターの中間的領域/組織の役割
第一節 X知的障害児教育支援センター
(一)創設の経緯と運営の困難
(二)公的教育とのかかわり
(三)啓発活動からみる希薄な横断的関係
第二節 親の立場からみるX知的障害児教育支援センターの役割
(一)親がXセンターを知るまでの経験
(二)Xセンターの役割
(三)Xセンターの限界
小括

第一部小括
第一節 中間的領域/組織としての「機構」の役割
第二節 中間的領域/組織の共生論理
第三節 中国の障害/者を対象とした研究への新たな知見


第二部 障害者家族の「新しい社会性」

第六章 中間的領域/組織の経験―母親の回復と専門家の役割―
第一節 Aさんの語り
(一)専門家が障害の受容に与えた影響
(二)家族(夫・長男)との関係
第二節 考察

第七章 「家族回帰」と個人の自立―自己実現を追求する母親―
第一節 Bさんの語り
(一)家族(夫・義父母)との関係
(二)教師であること
(三)母親であること
第二節 考察

第八章 「家族回帰」と個人の犠牲―祖父母の関与をめぐって―
第一節 祖母Cさんと主夫となった父親の語り
第二節 祖父Dさんの語り
第三節 祖父母との複雑な関係を語る母親
第四節 考察

第九章 「家族回帰」と中間的領域/組織のはざま―混沌と期待を語る母親―
第一節 Mさんの語り
(一)「不幸な家庭」
(二)家族関係
(三)家族以外の社会関係
第二節 考察
(一)「混沌の語り」
(二)中間的領域/組織の意味づけ

第二部小括
第一節 当事者の他者とのかかわりからみる中間的領域/組織の経験、意味
第二節 中国の障害者家族の「家族回帰」の多面性
第三節 障害者家族の社会学的研究への新たな知見

終章 知的障害者とその家族の「新しい社会性」
第一節 「新しい社会性」の検討
(一)中間的領域/組織の役割と「家族回帰」の多面性
(二)閻の「中国社会の個人化」論との対話
第二節 ポスト社会主義人類学への新たな知見
(一)ポスト社会主義的状況にある中国の特殊性
(二)中国的なソーシャルワークの含意
第三節 本書の限界と今後の課題

あとがき

参考文献
注釈
索引


■編著者紹介
奈倉 京子(なぐら きょうこ)
1977年 静岡県生まれ
2007年 中国中山大学大学院人文学院(現社会学与人類学学院)博士課程修了・博士(法学、文化人類学専攻)
2022年 一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了・博士(社会学)
現在 静岡県立大学国際関係学部・教授
専攻 文化人類学、中国地域研究
主要著書
『帰国華僑――華南移民の帰還体験と文化的適応』(単著、風響社、2012年)
『中華世界を読む』(編著、東方書店、2020年)
『中国系新移民の新たな移動と経験――世代差が照射する中国と移民ネットワークの関わり』(編著、明石書店、2018年)
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