妻と娘の唐宋時代 史料に語らせよう
/東方選書55
大澤正昭
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出版社:東方書店 |
出版年:2021年07月 |
コード:22110 296p ISBN/ISSN 9784497221100 |
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史料の奥の女性たち
「男耕女績(織)」といわれるが、女性も農作業や商売に従事していたし、一家を支え、地方豪民の親分になることだってあった。恐妻家エピソードは笑い話ではなく、嫉妬を武器にみずからの地位を守ろうとする妻の真剣な抵抗ではなかったか。統計ではない史料から抽出した家族規模からはどんなことがわかるだろう。歴史のなかで、名前やときには存在すら見えなくなっている女性の姿をどうとらえ、実像にせまっていくのか。史料の選択と扱い方を唐代、宋代の妻と娘の生き方を例に示す女性史・社会史研究入門書。先行研究ガイドつき。
●著者の言葉
本書は中国の唐宋時代(七~一三世紀)を舞台に、妻と娘の歴史に焦点を当てた研究の紹介です。全体で七章からなっていますが、これはいわば七通の招待状でもあります。宛先は、中国史に興味のある方、そしてもう一歩踏み込んで中国史を勉強してみたい方です。(略)本書では、中国史という分野の研究に足を踏み入れるきっかけを提供したいと思っています。そのためにここでは二点に焦点を絞りました。一つは唐宋時代の女性史、家族史、とくに妻と娘の生き方の問題で、もう一つは彼女らに関わる当時の史料の紹介です。(「まえがき」より)
>>>本書のまえがき(WEB『東方』にて公開中)
●目次: まえがき
序章 働く女たち――唐宋時代史料論も兼ねて はじめに 一 唐宋時代の史料――その限界と可能性 二 女性が従事する生業(1)――生業、家業一般について 三 女性が従事する生業(2)――女性の農業労働 四 女性が従事する生業(3)――農家経営、商業と女性 おわりに コラム1 「織女(おりひめ)」の行方――明清時代の農書にみる女性の労働
1章 女が三度も結婚するとは!――南宋の裁判記録から はじめに 一 再婚する女たち 二 唐代の離婚と再婚 三 宋代の女性の位置 おわりに コラム2 夫は「痴愚(アホ)」か?――社会史研究 はじめの一歩 コラム3 中国映画の「黄金時代」
2章 無能な夫を持つ妻は……――『袁氏世範』の女性観 はじめに 一 『袁氏世範』について 二 袁采は「第一個女性同情論者」? 三 袁采の女性観 四 袁采の現実をみる眼 おわりに コラム4 『袁氏世範』の「超訳」に挑戦(大澤正昭・今泉牧子)
3章 「酢を飲む」妻と恐妻家――唐宋時代の「小説」史料から はじめに 一 『太平広記』にみる家族および妻と母 (1)唐代の家族 (2)「酢を飲む」妻――妻の抵抗 二 『夷堅志』にみる家族および妻 (1)『夷堅志』の家族 (2)嫉妬する妻、強い妻の行方 おわりに
4章 女親分(ボス)もいた――南宋豪民の実態 はじめに 一 判決文に記された豪民 二 豪民の経済的活動 三 豪民の地域支配 おわりに
5章 娘たちに遺産はいらない?――女性に関わる「法」と現実 はじめに 一 男性原理の法 二 女性の財産権に関わる法 三 「女子分法」をめぐって おわりに
終章 唐宋時代は何人家族?――史料から数値を読み取る はじめに 一 家族規模に関する史料 二 唐代の家族規模 三 宋代の家族規模 四 「溺女」あるいは産児制限の方法 おわりに
結びに代えて 研究ガイド――コメントをつけて あとがき
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■編著者紹介
大澤正昭(おおさわ・まさあき) 一九四八年仙台市生まれ。一九七〇年京都大学文学部史学科東洋史学専攻卒業。一九七五年同大学院文学研究科博士課程単位取得退学。一九九七年京都大学博士(農学)。専門は中国前近代史、農業史、唐宋時代の社会史。奈良大学文学部講師、埼玉大学教養学部助教授、上智大学文学部教授などを経て、名誉教授。現在(公財)東洋文庫研究員。主な著書:『陳旉農書の研究』(農山漁村文化協会)、『唐宋変革期農業社会史研究』(汲古書院)、『唐宋時代の家族・婚姻・女性』(明石書店)、『南宋地方官の主張』(汲古書院)、共著『主張する〈愚民〉たち』(角川書店)、共編著『春耕のとき――中国農業史研究からの出発』(汲古書院)など。
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