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漢帝国の遺産 道教の勃興 /東方学術翻訳叢書 上製
姜生/三浦國雄,田訪 監訳
出版社:東方書店
出版年:2020年10月
コード:00896   708p   ISBN/ISSN 9784497220165
 
価格 8,800円
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漢代の墓室を、死者が仙人として再生し昇天する「生命転換装置」と位置づける著者は、各地の漢墓から出土した膨大な量の画像資料を用いて死者の成仙過程の再構築を試みる。それは、漢代人の信仰心、宗教観を探るものであり、初期道教の形成という漢帝国の文化遺産を提示するものでもある。

著者の言葉
……かくして、かつては漢人の崇拝した神々や仙人は伝世文献から削除され、ただ画像として漢墓中に残存することになった。あれらの雄大な墓のなかに「漢鬼」(漢代の死者)は一つの時代の重みを背負って存在している。漢鬼はその墓葬とともに一種とこしえに放棄できない夢想を黙示している。彼らは、人生の信仰化の構築において意味を獲得し、理想国家の追求の実践において世界から離れ、さらに死後において信仰によって一個の完美なる「国家」に入っていった。そういうわけで、墓葬には漢人の生命の理想と熱情とが凝結しており、過ぎ去った光輝を記録しているのである。(「序説 漢帝国の信仰の構造」より)

本書は、葬られた墓室空間において「漢鬼」が「煉形」を果たし、不死のカラダを具えた仙人として再生し昇天する過程を詳細に跡付ける。それを立証する第一資料が、両漢時代、全国的に大量に制作され、墓室に納められた画像石である。著者は今に伝えられている文献と画像との「互証」を目指すと言っているが、むしろ文献は画像資料の補助資料として使われており、本書を一見するだけで分かるように、その特色はおびただしい画像の採集と独特の解読にある。むしろ、限られた文献を使うのが主流だった従来の研究を、豊富な画像資料ならびに考古資料を駆使して是正し、漢という時代を再構成するところこそ本書の特色と魅力のありかなのである。(三浦國雄『漢帝国の遺産――道教の勃興』解題 より)

目次:
『漢帝国の遺産――道教の勃興』解題(三浦國雄)

序説 漢帝国の信仰の構造
一、信仰と儀式の装置としての漢墓
二、漢鬼――漢墓の精神的実体
三、尸解――戦国両漢の信仰の内実
四、本書の立場、資料そして方法について
(一)墓葬はすべて宗教――本書の基本的立場
(二)経典を以て画を解し、画を以て経典を証す――資料の使用問題
(三)宗教から古代史を理解する――方法論の検討

上篇 「煉形の宮」――漢墓の時空と神々と仙人の系譜
第一章 漢墓時空考
第一節 漢墓における仙界の時空の構築
一、六博図と漢墓の仙境化
(一)関連する研究と問題
(二)漢墓中の「儀礼言語」としての六博図
(三)六博は仙窟の比喩
二、「穿胸国」、「羽民国」と「軒轅の国」の画像が示す不死の世界
三、墓室――煉形の宮
第二節 画定するもの――漢代画像石縁飾りの寓意
一、縁飾り――空間の性格を画定するもの
二、斜線紋、菱形紋、銅銭紋――土、石、泉の象徴
三、鴞(フクロウ)と柏――冥府を代表するもの
四、魚と柏樹と鋪首との組み合わせ紋様
五、「垂帳紋」――宮府空間の表現形式

第二章 漢代神祇考
第一節 対となる子路と西王母
一、西王母との組み合わせの変化に関する研究
二、子路と西王母の組み合わせ
三、西王母の組み合わせ序列発見の思想史的意義
第二節 両漢老君「真形」考
一、両漢に老君像はあったのか
二、両漢文献中の老子の神格化形態
三、両漢の「老君真形」
附録 「道遣奚仲造車」図考
第三節 徐州の元和三年漢墓祠堂画像石に見られる神々
一、四つ首の怪物――房中術に精通した黄帝老子の師・容成公
二、牛頭の「羅緪」――天下鬼神の主・炎帝神農氏
三、鳥面の「霊鶬」――太上老君
第四節 漢墓画像中の老君、炎帝の組み合わせパターンおよびその神格
一、いわゆる「鶏頭」、「牛頭」の問題
二、北太帝君の牛頭、太上老君の鳥面――漢・晋の六天信仰

第三章 漢代仙譜考
第一節 「万齢を視ること旦暮の如し」――世俗的時空秩序に対する神仙世界の超越
第二節 漢画中の仙鬼体系――武梁祠東、西、後壁画像を中心として
一、「三代より以来、賢聖および英雄は仙となる」――帝王と刺客図
二、「孝悌の至りは神明に通ず」――忠臣、孝子と烈女図
第三節 至愛もまた仙となる――韓憑夫婦仙話の図像による証明
第四節 鎮星は「二十八年で天を周る」――仙鬼が昇進する標準的な古代天文学の根拠
第五節 『真誥』の漢画仙鬼体系に対する保存と改変
第六節 信仰構造の変遷と仙鬼系譜の佚と存

下篇 「太陰煉形」――尸解成仙儀軌之展開
第四章 「陰陽は死せず」――前漢「道者」の尸解仙術
第一節 馬王堆漢墓――研究の現状と問題
第二節 九天信仰――T型帛画解読の突破点
一、帛画の九日研究における問題
二、「九天が開くと、九つの太陽がともに東方を照らす」――対応する文献の発見と解読
第三節 帛画に見える漢初の「道者」の尸解成仙信仰
一、神薬を服用する――蓬萊仙島、海神の薬献上
二、崑崙に登る――道書を受け、玉漿を飲む
三、九天に昇る――霊門で帝に朝見する
四、形を変えて仙人になる――人面蛇身
第四節 馬王堆一号墓の四重棺が示す死後仙人に変わる順序
一、錦飾内棺(L1)――九泉の冥界、土に帰って鬼となる
二、朱地彩絵棺(L2)――崑崙、「そこに登って不死とな」り仙となる
三、黒地彩絵棺(L3)――九天、「そこに昇って神とな」り真人となる
四、黒漆素棺(L4)――大道、「天地を包み、玄のまた玄」
第五節 前漢中期の様相
一、金雀山漢墓群およびその帛画
二、楊王孫と黄老道の死して真に帰る思想
三、「速変を尊ぶ」――後漢の趙咨の呼応
第六節 「陰陽の大順に基づき、儒家、墨家のよいところを採る」―前漢「道者」の「陰陽は死せず」という信仰

第五章 神薬と天厨――漢墓の煉度科儀
第一節 「神薬」と「易貌」変仙信仰の表れ
一、「太陰にて煉形し、三官にて貌を易える」――死後の生命転換の論理
二、「生物行精」――仙界の「神薬」、「丹水」を得て不死となる
(一)神鳥携丹と「生物行精」
(二)鼎と神薬
(三)壺と玉漿
三、「酒と歌劇」――死者の昇仙を祝う
第二節 「大同」の降臨――漢代の天厨貽食信仰と、道教の施食煉度科儀の起源

第六章 道書を奉じ王母に朝見する――漢画「孔老相見図」に見る登仙儀礼
第一節 漢画「孔老相見図」をめぐる研究状況と課題
第二節 先秦両漢における「孔老相見」をめぐる文献上の記載
第三節 漢墓「孔老相見図」研究におけるいくつかの障害
第四節 「道は甚だ大、孔丘を教えて知と為す」――老子から「太上老君」への神格化
一、孔子の地位の変遷
二、讖緯神学と孔子の神格化
三、「老子とは道なり」――老子に会うことはすなわち道を得ること
四、「鬼聖」項橐の神格とその古代信仰における継承
附録一 「子貢画像石」と六天宮
附録二 滕州西戸口の画像石――鬼から仙へ
(一)太山君、東王父、「孔老相見」の画像石――泰山君に帰服し道書を受ける過程
(二)西王母画像石――死者が冥界で仙人となり歓迎を受ける場面
第五節 老君を拝し「道を得て書を授かり」、西王母に「崑崙の闕」に朝す――厳密な登仙儀礼
一、「老君に見えれば則ち年命延長す」――老君への拝謁と道書の伝授
二、「老子は仙籙を把持す」
三、「凡そ道を得て書を授けられし者、皆王母に崑崙の闕に朝す」
四、車馬出行――死者は往きて老君を拝し、崑崙に赴いて西王母に朝す
(一)車馬の名称および車馬の制度
(二)図像とその意味の分析

結論 漢の伝統の形成
一、神化史観と漢帝国の意味システムの構築
二、鬼の雄、人の傑――漢帝国の背骨
三、漢の伝統――中国の根幹の造成

訳者あとがき
総合索引
■編著者紹介
姜生(きょう せい)
1964年、河北省昌黎生まれ。山東大学・歴史学学士(1987年)、復旦大学・歴史学修士(1990年)、四川大学・宗教研究所哲学博士(1995年)。2002年、山東大学・宗教、科学と社会問題研究所所長、同博士生指導教授、2013年、新設された四川大学・文化科技協同創新研発センター所長、同・歴史文化学院・長江学者特聘教授を兼任して現在に至る。専門は考古学、歴史学、道教学、宗教学、宗教と科学との交差研究、図像学等々、多方面にわる。主な著作として『漢帝国的遺産――漢鬼考』(単著、科学出版社、2016年)のほかに、『中国道教科学技術史』漢魏両晋巻(姜生・湯偉俠主編、科学出版社、2002年)、同・南北朝隋唐五代巻(同、2010年)などがある。

監訳者・翻訳者
三浦國雄(みうら くにお)大阪市立大学名誉教授 *序説、結論の訳、全体の監訳
田訪(でん ほう)湖南大学岳麓書院講師 *本翻訳プロジェクトの統括責任、全体の監訳
鈴木舞(すずき まい)東京大学大学院人文社会系研究科助教 *第一章第一節
矢島明希子(やじま あきこ)慶應義塾大学附属研究所斯道文庫助教 *第一章第二節、第二章第三節、同第四節
富田美智江(とみた みちえ)流通経済大学法学部准教授 *第二章第一節、同第二節
名和敏光(なわ としみつ)山梨県立大学国際政策学部准教授、山東大学儒学高等学院国際漢学研究中心兼職教授 *第三章
森和(もり まさし)成城大学民俗学研究所研究員 *第四章
宮島和也(みやじま かずや)東京大学大学院人文社会系研究科助教 *第五章
内山直樹(うちやま なおき)千葉大学大学院人文科学研究院教授 *第六章
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