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抑圧されたモダニティ 清末小説新論
/台湾学術文化研究叢書
上製
王徳威/神谷まり子,上原かおり 訳
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出版社:東方書店 |
出版年:2017年06月 |
コード:00831 528p ISBN/ISSN 9784497217103 |
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従来、中国文学史において「近代(モダン)」の起点は魯迅を代表とする、伝統批判と文学革命を旗印に西洋写実主義を旨とした「五四」新文学に置かれてきた。一方、清末小説(本書では19世紀半ばから1911年までの世紀末文学を指す)は、創作だけでも七千種以上が出版されながらも、梁啓超らの提唱した「新小説」を除いて文学史においてはほとんど顧みられることのない、「排除/抑圧」されたジャンルであった。本書ではこの時期の小説を、西洋との出会いのなかで伝統/モダニティが互いに拮抗し、複雑かつ豊かな「多層性のモダニティ」を見せた特異なジャンルとして評価する。具体的には、花柳小説、俠義公案小説(武侠・裁判もの)、暴露小説(社会風刺もの)、科学幻想小説(サイエンス・ファンタジー)および二〇世紀末の中国語小説を再読し、バフチン、フーコー、ギアーツらの諸理論を用いてその「抑圧されたモダニティ」を論じることで、中国のポストモダニティについて再考を行うものである。著者は現代文学理論を用いながら独自の視点で中国語圏文学を読み解く、今日を代表する研究者の一人であり、その代表作という意味でも本書は重要な著作であると言える。また、上述のように清末小説についての研究は国内外でも少なく、本書は日本においてほとんど専著のない分野の研究書であるため、中国文学研究または東アジアのモダニズム研究の分野において必読書であると思われる。
【原書】(中文版) 386917 被壓抑的現代性:晚清小説新論 /麥田人文 王德威 著/宋偉杰 譯 麥田出版股份有限公司 2003年08月
●構成 日本語版序 (王徳威) 凡例 序 第一章 抑圧されたモダニティ 一、啓蒙と頽廃 二、革命と内に向かう発展 三、合理性と情感の過剰 四、ミメーシスとミミクリ 第二章 悪を誨える――花柳小説 一、仮装された異性愛/同性愛 二、愛と欲の氾濫 三、欲望の都市 四、妓女から救国のヒロインへ 第三章 空虚な正義――俠義公案小説 一、『水滸伝』を書き直す 二、空虚な正義 三、女俠の服従 四、罪、それとも罰? 第四章 卑屈なカーニヴァル――グロテスクな暴露小説 一、亡霊の価値論 二、荒唐無稽なる世界 三、モダニティの市場 四、中国版グロテスク・リアリズム 第五章 混乱した地平線――サイエンス・ファンタジー 一、奔雷車、参仙、乾元鏡 二、補天 三、大気圏内/外の冒険 四、バック・トゥー・ザ・フューチャー 第六章 回帰――同時代の中国小説および清末の先例 一、新花柳小説 二、窮地のヒロイズム 三、「大嘘つき」たちのパレード 四、『新中国未来記』はどこに? 訳者解説 一、清末小説――中国モダニティの起点 二、「抑圧」と「継承」の中国文学史 三、本書の訳語および著者との調整などについて 参考文献 索引(人名・人物索引、書名・篇名索引、事項索引)
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■編著者紹介
王徳威(おう とくい) 1954年生まれ。台湾大学外文系卒業、ウィスコンシン大学マディソン校にて比較文学の博士号を取得、現在はハーバード大学東アジア言語・文明学科エドワード・C.ヘンダーソン講座教授、比較文学科教授。台湾・中央研究院院士。専門は中国文学、比較文学理論・批評。主な著書に、『小説中国――晩清到当代的中文小説』(麦田出版、1993)、『如何現代、怎様文学?――十九、二十世紀中文小説新論』(麦田出版、1998)、The Monster that is History : History, Violence, and fictional writing in twentieth-century China, University of California Press, 2004、The lyrical in epic time : modern Chinese intellectuals and artists through the 1949 crisis, Columbia University Press, 2015、A New Literary History of Modern China, Harvard University Press,2017(編著、近刊予定)。また日本語訳されている単著に、『叙事詩の時代の抒情――江文也の音楽と詩作』(三好章訳、研文出版、2011)がある。
■訳者紹介 神谷まり子(かみや まりこ) 東京都立大学大学院博士課程満期退学。博士(文学)。現在、日本大学文理学部准教授。専門は中国近現代文学、清末民初小説。主な著書(共著)に、南雲智編著『中国現代女性作家群像』(論創社、2008)、中国モダニズム研究会編『中国現代文化14講』(関西学院大学出版会、2014)等。主な訳書(共訳)に、林白著『たったひとりの戦争』(勉誠出版、2012年)、齊邦媛著『巨流河』(作品社、2011)等。
上原かおり(うえはら かおり) 首都大学東京大学院博士課程満期退学。現在、首都大学東京客員研究員。専門は中国現当代文学。主な業績:「文革期における張抗抗の創作を読む」(『野草』第69号、中国文芸研究会、2002)、「顧均正における米国SFの受容――『在北極底下』を中心に」(『現代中国』第89号、日本現代中国学会、2015)等。主な翻訳に、徐則臣著「グスト城」(『新潮』2011年6月号)。
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