前2世紀から後1世紀にかけて、北アジア史上最初に登場した騎馬遊牧民の勃興から分裂・衰退までをたどるとともに、考古学的知見をもとにその社会・文化を紹介。さらに匈奴の歴史を通じてユーラシア内陸部の遊牧民が東西の歴史に及ぼした影響をも考察する。1996年の刊行以来、地道に版を重ねてきたロングセラーの新訂版。 ●編著者のことば 初版(1996年)の『匈奴』が東方書店より出版されて、やがて20年になろうとしている。この間、読者の方々から多くの激励を受け、いつのまにか10刷にも及んだ。2007年には韓国版が出版され、2010年には中国版が出版された。(略) 誰もが、匈奴はその後のユーラシア大陸部族の政治・経済・文化の原点でもあり、重要なことはわかっているのだが、文献学的には史料も少なく、研究には一定の限界がある。だが近年、中国やモンゴル国では数多くの匈奴の遺跡が発見され、研究が進められている。とりわけ、モンゴル国では研究者の数も少ないため、ロシア、中国、ハンガリー、韓国、日本の研究者との共同調査を期待しており、若い興味のある学生諸君は是非挑戦していただきたいものである。(「新訂版あとがき」より)
●構成
まえがき
第一章 匈奴の登場 一 匈奴の源流 モンゴル高原の暮らし/北方異民族の系譜/匈奴の登場/司馬遷の匈奴観と華夷の差別意識/匈奴の源流とその故地/匈奴人の容貌/匈奴民族とは何か 二 匈奴の勃興 匈奴の戦法/匈奴と始皇帝/万里の長城 三 匈奴遊牧国家の成立と発展 冒頓の登場/前三世紀の北アジア情勢/冒頓の雄飛/平城の恥/漢と匈奴の関係/月氏の原住地/月氏討滅と西域支配
第二章 匈奴と漢の攻防 一 漢との対立 武帝の即位/張騫の遠征/伊稚斜単于の登位/馬邑城事件/漢の河西攻撃/霍去病の活躍/匈奴渾邪王の投降/匈奴の北方撤退/漢の西域進出/漢の大宛遠征/名馬来たる 二 匈奴内の漢人と匈奴の内紛 匈奴内の漢人/李陵と蘇武/衛律の暗躍/匈奴の内紛と衰退 三 匈奴の東西分裂 日逐王の投降/五単于の並立/郅支と呼韓邪/郅支の西方移動 四 異域に送られた女性たち 和蕃公主の始まり/烏孫公主細君/烏孫公主解憂/王昭君の降嫁/王昭君の事績/王昭君の物語 五 匈奴の中興期 長城の和平/匈奴と新の対立/匈奴の最後の黄金時代
第三章 匈奴の文化 一 匈奴文化の特質 匈奴文化の編年/オルドス青銅器文化/匈奴の鉄器文化/ノイン・ウラ文化 二 経済と産業 遊牧と狩猟/農業/商業と手工業 三 匈奴人の衣食住 匈奴の衣類/匈奴の飲食/匈奴の住居 四 匈奴人の風俗、習慣 貴壮賤老/婦人の地位と嫂婚制/匈奴の葬礼/法律/祭祀 五 匈奴の文字 漢字借用説/文字か? 記号か?
第四章 匈奴の社会 一 匈奴の部族組織 種の意味/匈奴という名称/部の概念/部の構造/氏の性格/氏と氏族の関係/氏は政治的産物/攣鞮氏と匈奴の関係/特別家族の出現 二 政治権力の発生 冒頓のクーデター/竜城の会議 三 行政の仕組み 行政機構は軍事組織/「二十四長」 四 匈奴君長権の性格 単于の称号/単于位と攣鞮氏/単于権の限界/暗躍する姻戚氏族/骨都侯/貴姓氏族の伸張 五 中国侵入の真相 掠奪に関する諸学説/掠奪の実態/人民拉致の意図/掠奪品の分配/一般牧民の地位/君長は軍事指揮官/単于権と掠奪 六 匈奴遊牧国家論 従来の匈奴遊牧国家論/匈奴遊牧社会の歴史的規定/単于と各氏族長の関係/手工業支配と単于権/政治権力と国家権力
第五章 匈奴の分裂とその後 一 匈奴の南北分裂 烏桓の興起と匈奴の飢饉/単于位争い/比の決起と南北分裂/南匈奴と後漢の関係/南匈奴の領域/後漢の異民族政策/北匈奴の民の南下/逢侯の反乱 二 北匈奴の動静 交易と掠奪/車師経営/班超と班勇/北匈奴の西移/北匈奴呼衍王/北匈奴の行方 三 匈奴・フン同族説 匈奴とフンは同族か/ド・ギーニュの提唱/匈奴・フン同族説の展開/同族論争の問題の所在/「民族」と「人種」 四 五胡の動乱と匈奴 後漢末の南匈奴/南単于権の崩壊/南匈奴の五部分割/匈奴王朝前趙の成立/石勒の後趙/その他の匈奴系王朝/北魏鮮卑族/北魏支配下の匈奴/匈奴独孤氏の中国貴族化/匈奴部衆の農民化
あとがき 新訂版あとがき 匈奴史年表 主要参考文献
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