現代世界では、グローバリゼーションにより、生み出されようとする「一元化」の流れのなかで、それぞれの国家、地域あるいは個人は、自己の存立をはかるために、その「固有性」の形成力を強める。そこには多元的世界構築の契機と可能性を内在していると言える。本書は、中国、日本、韓国、北朝鮮における、「西洋からの近代化」の受容を見つめ直し、グローバル化による「一元化」に対し、東アジアからの「多元的世界」構築への可能性を考察する。 ●構成 はじめに 〈序論〉アジアとヨーロッパの相互補完の時代へ ――グローバル・ヒストリーの方法論に寄せて 宇野 重昭 Ⅰ アジアのアイデンティティ グローバル・ヒストリーのなかのアジアのアイデンティティ 濱下 武志 はじめに:グローバリゼーションとアジア研究の新たな契機 1.グローバリゼーションとグローバル・ヒストリーの課題 2.グローバリゼーションとグローバルヒ・ストリーの課題 3.グローバル・ヒストリーの中からのアジアのアイデンティティ構築 4.明治知識人のグローバルアイデンティティ世界像――選択された脱亜論 5.琉球・沖縄知識人の七世代・150 年――琉球・沖縄をどう見てきたか 6.中国の「脱亜」とアメリカ経由の日本文化論 7.グローバルに中国・東アジアをどう認識するか――開と閉の歴史サイクル 8.グローバルヒストリーによる中国・東アジア認識 9.ディアスポラ現象の進行 10.歴史認識のディアスポラ化 おわりに――近未来のアジアと中国
中国から見える世界像と複合的アイデンティティ ――「中国の夢」と中国式「民主主義」の可能性 宇野 重昭 はじめに――日中の衝突回避をめざして 1.理念としての「中国の夢」の意義 2.「中国の夢」の仕組みにたいする見方について 3.中国民主主義の独自性の背景 4.歴史的経験のなかの中国民主主義 5.中国民主主義のむつかしさ 6.中国民主主義の漸進性 おわりに――普遍性と民族性の複合的アイデンティティ Ⅱ 中国から日本へ アジアから世界へ アジアの近代化と日本 光田 剛 はじめに 1.アジアの近代化をめぐる諸問題 2.東アジア近世の成立 3.東アジア近世の変容 4.東アジアの近代化 5.アジアの近代化のなかの日本 戦後日本思想史における“中国革命” 孫 歌(湯山トミ子訳) 1.戦後初期の日本の知識状況と思想状況 2.中国革命に遭遇した日本左翼と日本の知識人 3.革命の方向性:二つの民主主義に関する討論 4.思想契機として“中国革命” 5.戦争と平和:中国革命の思想と世界秩序再編の政治的要求 中国から世界へ ――もう一つの魯迅像、“マルチチュード”の時代に向けて 湯山 トミ子 はじめに 189 Ⅰ 魯迅における「弱者」観――二つの形成基盤 1.少年期における弱者体験:生家の没落と家族体験、ジェンダー観の形成 2.青年期における弱小民族としての体験: 被圧迫民族としての弱者観と民衆観の形成 Ⅱ 初期魯迅――“人”なき中国に“人”を求めて 1.中国旧社会の人間存在――儒教社会と負の民衆像 2.“人”の世界の創造――“人”の誕生と社会変革のプログラム5 3.社会変革論としての子女解放論の特徴と意義 Ⅲ 社会権力との闘い――奪権なき革命と文学者魯迅の使命 1.転換期の思想形成 ――戦闘的文学者としてのアイデンティティの確立に向けて 2.1927 年言説――背景と内的基盤 3.“生”を希求する抵抗主体と権力 Ⅳ 民衆の時代――「弱者」の力と支配的権力との闘い 1.“マルチチュード”とは何か? 2.魯迅と“マルチチュード” 3.“愛”と“共”の世界へ 終わりに――中国から世界へ Ⅲ 朝鮮半島から世界へ 植民地朝鮮における「宗教」と「政治」 ――天道教の動向を中心に 川瀬 貴也 はじめに 257 1.東学(天道教)の概略――三・一独立運動まで 2.「文化政治」下の天道教 3.天道教の「対日協力」 おわりに 275 通底する「朝鮮半島問題」の論理 ――朝鮮民主主義人民共和国の核兵器開発と竹島/独島 福原 裕二 はじめに:問題の所在に代えて 1.竹島/独島問題における韓国の「論理」 2.核開発問題における北朝鮮の「論理」 おわりに:通底する「論理」 おわりに
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