文学キャンプとは、作家・文芸編集者・読者ら文学愛好者が一堂に会する文学研修合宿のことをいう。50年に及ぶこの一種独特の文学活動を実際に文学キャンプに参加した著者が分析し、現代台湾文学の一側面を論述する。 ●編著者のことば 戒厳令期(一九四九~八七年)における文学教育は、中華人民共和国に対抗する反共教育の一環として展開されたため、国家規模で行われた。その中心的役割を担ったのが中国青年反共救国団である。……やがて反共という初志が形骸化した後も、この救国団による学校教育と連結した組織的な文学教育機能は維持され、現代文学の読書体験、創作、発表の機会は青年たちに提供され続けたのである。救国団による全青年への創作、発表の機会が維持されたことによって、文学への覇権意識、エリート意識といった幻想も保持され、広汎な読者層・作家層を基層とする「文化資本」たる文学が成立するに至ったと筆者は考えている。(本書「終章」より)
●構成 推薦のことば (東京大学文学部教授・藤井省三) 序章 台湾文学は夏に作られる 第一章 台湾青年の総作家化計画――救国団の文芸活動と『幼獅文芸』編集者瘂弦 学内の文学教育――逸脱の日本文学と正統の台湾文学/救国団の文芸活動――文学の数と力/『幼獅文芸』――全台湾青年の愛読書 第二章 台湾文学の夏――五〇年の文学キャンプ史 文学キャンプとは何か――台湾文学、三〇〇〇人の夏/文学キャンプの歴史――文学場の力学 文学キャンプ体験記 第三章 台湾の芥川賞――『聯合報』『中国時報』二大新聞の文学賞 二大新聞の副刊――台湾文学のトップメディア/二大新聞の文学賞/「政」の「時報文学賞」と「性」の「聯合報小説賞」――作られる文学思潮 第四章 戒厳令解除後の「私たち」の台湾文学――李昂と朱天心 李昂作品に見る戒厳令解除――「迷園(迷いの園)」、『自伝の小説』における「他者」なる主人公/朱天心「想我眷村的兄弟們(眷村の兄弟たちよ)」に見る限定的な「私たち」 終章 文学大国台湾の実像 参考文献/付録 戦後日本における台湾文学出版目録
【書評情報】 「戒厳令解除後の台湾文学を読むための新しい研究書」 下村作次郎(天理大学) 〔『東方』386号〕 「エリート青年に対する反共教育サマーキャンプが創造の場へ」 管啓次郎(詩人・比較文学者・明治大教授) 〔『読売新聞』2012年12月16日〕
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