3世紀末から5世紀半ばにかけて、中国北部は匈奴を始めとする諸民族の政権が並立する大分裂時代を迎えた。本書は、この「五胡十六国時代」に光を当て、中国社会が多民族の融合の上に形成されたことを史料のみならず墓室画像などの出土品も用いて明らかにする。2002年刊行書籍の新訂版。 ●編著者のことば 初版の文章の全面的な修正、一〇年間の研究の進展による内容の修正を施したうえで、次の四点の変更を行なった。 ①系図に在位年を加えた。 ②写真の一部差し替えと追加を行なった。 ③初版第五章第一節~第三節を第五章「人の移動」とした。 ④第六章「『五胡』と漢族の融合」を新たに設け、初版第五章第四節を第一節「融合の過程」とし、第二節「壁画墓・画像磚墓に見られる『五胡』と漢族」を加えた。 ここ数年、私は遼寧省・甘粛省等で発掘された二~五世紀の墳墓の画像を主な研究対象としてきた。主に編纂史料によって執筆した初版の反省である。また発掘調査が急速に進む今日、墓室画像や墓誌などの文字、土器・金属器などの遺物、あるいは墳墓自体など、出土資料を活用することは、「五胡十六国」研究にとっても必須であると認識したからでもある。第六章第二節は最近の研究の成果の一部を反映させたものである。(新訂版あとがきより)
●構成 序章 民族の時代
第一章 後漢~西晋時代の少数民族 一 少数民族の中国移住 匈奴/烏桓/鮮卑/羌族/氐族/丁零/夫餘・高句麗 二 中国王朝の少数民族への対応 官爵の授与/異民族統御官/徙戎
第二章 「五胡」とは何か、「十六国」とは何か 一 『晋書』と『魏書』と『十六国春秋』など 『晋書』/『魏書』/『十六国春秋』 二 「五胡」 数字と少数民族/「五胡」の出現/「五胡」の具体化 三 「十六国」 『晋書』載記冒頭記載の諸国/『晋書』載記本文の諸国/『魏書』・『宋書』・『北史』の諸国/「十六国」の定着化
第三章 「十六国」の興亡 一 五胡十六国時代の全体像 八王の乱/西晋の滅亡と東晋の成立/「十六国」興亡の梗概 二 五胡十六国時代前期 成漢/前趙/後趙/冉魏/前燕/前仇池/前涼/代 三 前秦の華北統一と淝水の戦い 前秦の華北統一/淝水の戦い/淝水の戦い後の前秦 四 五胡十六国時代後期 西燕/後燕/南燕/北燕/翟魏/後秦/西秦/夏/後涼/南涼/北涼/西涼/後仇池/北魏
第四章 「十六国」の国際関係と仏教と国家意識 一 朝鮮半島との関係 高句麗への亡命者/遼西・遼東と朝鮮半島の関係 二 西方・北方との関係 西域経営/トゥルファン/吐谷渾/柔然 三 仏教の展開 涼州の仏教/仏図澄/釈道安/鳩摩羅什/現世利益的様相/敦煌 四 東晋との関係と国家意識 「十六国」の東晋対策/君主の称号/国家意識
第五章 人の移動 一 遷都 遷都の実態/遷都の目的/遷都に伴う人間の移動 二 流民 流民の発生/塢/僑州郡県 三 徙民 徙民の目的/徙民の方向と規模/徙民の全貌
第六章 「五胡」と漢族の融合 一 融合の過程 「五胡」君主の漢文化受容/漢人士人の「五胡」政権参加/王猛/軋轢と衝突 二 壁画墓・画像磚墓に見られる「五胡」と漢族 壁画墓と画像磚墓/甘粛の画像磚墓/地埂坡三号墓/丁家閘五号墓/朝陽の壁画墓
終 章 南北朝から隋唐帝国へ
おわりに
改訂版あとがき
写真出典一覧 主要参考文献
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