本書は、各界の専門家20数名が行った書誌学に関する連続講座をまとめたものである。その内容は、漢籍版本概論、漢籍の調査と鑑定、書物の流動史、図書分類法、地方文献などと多岐にわたり、その対象は中国の漢籍はもとより韓国・朝鮮の版本、日本の和刻本、ヴェトナムのハンノム本にまでおよんでいる。 ●編著者のことば こんな時代に書誌学をテーマにしてアナログの最たる紙の本をあれこれと語るものが受け容れられるのだろうかと思う。しかし、こんな時代であればこそ語っておきたいものも存するという気もする。(「あとがき」より)
●構成 (一) はじめに 大澤顯浩(学習院大学)
序章:「漢籍を学ぶということ」大澤顯浩
第一章 書籍の調査と鑑定 「明清時代の稿本・写本と校本の鑑定について」陳 先行(上海図書館)[翻訳:倉嶋真美] 「中国古籍版本学新探 ―版下作成から試印まで―」陳 正宏(復旦大学)[翻訳:林雅清・鳥海奈都子] 「和刻本漢籍の多様性」高津 孝(鹿児島大学) 「漢籍の版本調査と鑑定について ―その常識と非常識―」王 瑞来(学習院大学)
第二章 海を渡った書籍(書物流動史) 「中国、日本、台湾、アメリカ所在の宋、元版漢籍の概況」安 平秋(北京大学)[翻訳:中嶋諒] 「清代における日本への漢籍輸出に関する基礎的研究」周 振鶴(復旦大学歴史地理研究センター)[翻訳:村上正和] 「古籍流通の文化史」高橋 智(慶應義塾大学) 「近代における日中間の古典籍の移動について」陳 捷(国文学研究資料館) 「図書館で漢籍はどのように収集されたか ―国立国会図書館の場合―」土屋紀義(大阪学院大学)
第三章 学習院大学コレクションの世界 「旧学習院所蔵漢籍について」大澤顯浩(学習院大学) 「蔵書印から見た学習院大学所蔵漢籍」坂田 充(東京女学館高等学校) 「書と人―学習院大学所蔵『焚書』『続焚書』『李氏文集』」松野敏之(国士舘大学) 「書籍と文物がつなぐ日本と東アジアの近代―学習院大学コレクションから」村松弘一(学習院大学) 付録:旧学習院所蔵書展示一覧(付:「亀田記念図書」漢籍一覧)
(二) 第四章 東アジアの文献―朝鮮本・満洲語文献・越南本・和刻本 「清代満洲語文献の特徴と重要性」石橋崇雄(国士舘大学) 「朝鮮本の世界」吉田光男(放送大学) 「ヴェトナムにおける漢喃(ハンノム)本の研究と収集の現状」八尾隆生(広島大学) 「慶長年間における古活字版刊行の諸問題」小秋元段(法政大学)
第五章 研究のための書誌学―思想・文学・歴史・地理 「『三国志演義』テキストの演変―中国国家図書館蔵二種の湯賓尹本『三国志伝』を例として」金 文京(京都大学) 「白話小説・戯曲版本の分化と特徴」笠井直美(名古屋大学) 「陽明学研究における文献学の意義―『王文成公全書』所収の「年譜」への挑戦―」永富青地(早稲田大学) 「書誌学からみた仏書と儒書」林 鳴宇(学習院大学) 「中国地方文献の交際術―地方志、判牘、筆記―」山本英史(慶應義塾大学) 「イエズス会の極東関係史料―「大発見の時代」とその後」中砂明徳(京都大学) 「ミル『自由論』における“individuality”概念の日本と中国への導入について―中村正直『自由之理』と厳復『群己権界論』の場合」高柳信夫 あとがき 大澤顯浩 索引
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