本書は、長年にわたり、張愛玲を研究・翻訳してきた著者が、初期の作品から『小団円』まで、張愛玲作品の特徴や時代背景などについて様々な視点から書き表した文章を収録し、20世紀を代表する中国文学作家のひとりである張愛玲とその文学作品の面白さを紹介する。 ●編著者のことば 「八〇年代の改革開放政策のなかで解禁になった、四〇年代の代表作小説集『伝奇』やエッセイ集『流言』を読み、大きな衝撃を受けた。磨き上げた文体、凝った修辞、そして何よりもこれまでの現代中国文学に不可欠だった道徳観の押し付けがなかった。現代文学にもこんな文学があったのか!」(「まえがき」より)
●構成 まえがき Ⅰ:張愛玲と上海-人と時代 中日戦争期の中国文学-北京・上海 張愛玲-愛と生と文学 阿部知二と張愛玲-日本占領下の上海にて 着・語る作家張愛玲 田村俊子と関露-華字雑誌『女声』のことなど Ⅱ:華麗と蒼涼と-作品と技巧 張愛玲と『伝奇』-中国と西洋の接点 『流言』考-張愛玲・一九四三~四五年 張愛玲「留情」について 張愛玲文学に見る絹の諸様相と〝恋衣〝-「金鎖記」/「更衣記」/「CHINESE LIFE AND FASIONS」 張愛玲文学技巧小考-〈香港伝奇〉における花木の象徴 Ⅲ:上海以後 張愛玲における時代と文学 張愛玲と白先勇-〝失落〝の時機をめぐって 文学作品に見る「スージー」と香港 Ⅳ:書評など 台湾で見る張愛玲研究のことなど 張愛玲死す 張愛玲逝きてなお-国際シンポジウムのことなど 張愛玲研究の現状と課題 アイデンティティ二重奏を聴く-劭迎建著『伝奇文学と流言人生-一九四〇年代上海・張愛玲の文学』 変動する中国に〝住まう〝人たち 映画「赤い薔薇 白い薔薇」と張愛玲 張愛玲のこと-映画『ラストコーション』によせて 張愛玲の遺作『小団円』の出版から あとがき
【書評情報】 「日本でも、この先もっと紹介されてよい作家」――蜂飼耳(詩人)(読売新聞 2011年6月5日) http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20110606-OYT8T00660.htm
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