国際シンポジウム「東アジアの陽明学」および学習院大学東洋文化研究所で実施された「陽明学の現在」プロジェクトの成果を収めた論文集。本書では、「最高の本物」(中国)と「それより劣るもの」(周辺地域)のような二分法にとらわれず、「脱中心化」された視点から、日中韓それぞれの陽明学が持つ多面的な側面を描き出す。 ●編著者のことば 一方的に中国という中心から「文化産品」が水の流れのように外の地域へ流れ出た「結果」として、その文化交流のあり方を見るべきではない(略)それぞれの供給・受容の場において(略)そのコンテクストの中での各主体の意図的・選択的、或いは戦略的選択として起こったものであった、と考えて、…その実態を明らかにしてゆくべきだ…(「はじめに」より)
●構成 はじめに(馬淵昌也) 第一部 シンポジウム論文集 一.「地域史としての東アジア交流史―問題意識と研究テーマ―」黄俊傑(藤井倫明訳) 二.「『一段の深情在る有り』―中江藤樹『論語郷党啓蒙翼伝』における孔子」陳昭瑛(大場一央訳) 三.「朝鮮陽明学の特質について」中純夫 四.「朝鮮陽明学派の形成と展開」辛炫承(大多和朋子訳) 五.「一六世紀中韓使節の陽明学にかんする論争とその意義:許篈と袁黄を中心に」張崑將(阿部亘訳) 六.「李卓吾と朝鮮儒学」李昤昊(李正勲訳) 七.「十八~十九世紀朝鮮性理学の心学化傾向についての考察」崔英辰(辻正範訳) 八.「李士実及び宸濠反乱の故事」楊儒賓(倉嶋真美訳) 九.「陽明学と明代中後期における三教論の展開」蔡振豊(松野敏之訳) 十.「中日陽明学の交流と非交流について」永冨青地
第二部 プロジェクト論文集 十一.「天津図書館所蔵『鄒東廓先生文選』について」永冨青地 十二.「李贄『九正易因』について」三澤三知夫 十三.「周汝登と功過格と」渡邊賢 十四.「明代後半期儒学思想における“恕”概念の位置初探」馬淵昌也 おわりに(馬淵昌也)
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