「善本」の価値観と見方を懇切に講義。書物の誕生から終焉、再生と流転までの生涯とともに、中国歴代の書物文化史を概観。現代書誌学による調査の実例や、「中華再造善本」「古籍普査」など中国の最新動向も伝える。 ●編著者のことば 書誌学はけしてすすめられるようなものではない。書物に接して何かの感触が心の琴線に触れたとき自ら学んでみたいと思うのがその出発点だからである。価値を定める鑑定人はたくさんいる必要はない。ただ、その鑑定に至る学問の経緯を理解できる人はいればいるほどよい。書物にとってそれは何よりの大きな味方となるからだ。……大切なことは、中国で生まれた書物は中国人の感覚で捉えなければならないことであり、それが日本に渡って来たら、日本人の感覚で捉えなければならないということである。書物の運命と生涯である。これを考え続けて行くときに古籍はそれにまつわる事跡・人物などさまざまな過去を語り続けてくれるのである。(本文より)
●構成 【第Ⅰ部】書誌学のすすめ 一 「書誌学」とは何か 近代中国における「書誌学」の復興/「書誌学」と「文献学」 二 中国「文献学」の現況 原本に学ぶ――書影と影印/中華再造善本 三 「善本」の意味するところ 「善本」の価値観/「善本」を求めた蔵書家たち 四 書物の離散と完璧 零本と足本/日本の古写本の離散と再会/書物は人を呼ぶ 五 善本への道 本の大きさと色/本の重さ/序文と跋文/本の封面(表紙)/行数と字数(一)――江標の発想転換/行数と字数(二)――その文献学的意味 六 善本の美 印記(一)――蔵書印の美/印記(二)――文人たちの美観の淵源/批校(一)――その隆盛と印刷術の発達/批校(二)――受け継がれる営為と最終目的/宋版の美(一)――中国印刷史上の位置/宋版の美(二)――時代鑑定の厳しさ/宋版の美(三)――字様の美 七 書誌学を支えるもの 夢と現実/ささやかな友好
【第Ⅱ部 書物の生涯】 一 書物と旅 北平から基隆へ――一九一一~四八/台中から北溝へ――一九四九~五四/北溝から台北へ――一九五五~六六/台北故宮博物院の発展――一九六六~八三/書物と旅(一)楊守敬・観海堂旧蔵書ほか/書物と旅(二)瞿鏞・鉄琴銅剣楼旧蔵書/書物と旅(三)日本に流伝した『論語』『尚書』 二 書物の誕生 「書」の誕生と「本」の誕生/書物と著者/書物と序文・題跋/「本」の生年月日と戸籍/写本の誕生/日本の写本 三 書物の終焉と再生 書物の年齢とは/書物ばらばら事業――類書の編纂/書物のデータ保存――版木/版木による研究/書物の変身 四 再造と鑑定 「再造」は複製か、偽物か/融和する「再造」と「鑑定」
【第Ⅲ部 書誌学の未来】 一 楊守敬の購書 二 典籍の聚散(一)焚書から『四庫全書』の受難まで 焚書から黄巣の乱まで/宋・元・明代/『永楽大典』と明代蔵書の受難/『古今図書集成』と『四庫全書』/『四庫全書』の災難/禁中の失火――「天禄琳琅」など/私家の災厄――絳雲楼など 三 典籍の聚散(二)日本に渡った典籍の帰郷 幸運と帰郷/楊氏から名家へ(一)――李盛鐸蔵書/楊氏から名家へ(二)――潘氏宝礼堂・曲直瀬家養安院蔵書/得難き出会い/六合徐氏の購書(一)――徐承祖使東所得/六合徐氏の購書(二)――印記が示す流転の実態/荊州田氏の購書――伏侯在東精力所聚 四 古籍の流通史研究と古籍普査 古籍の流通史――蔵書印の功用/古籍普査(一)――広大な視野/古籍普査(二)詳細な身元調査 五 書誌学の志 書誌学の実現――総体と詳細と/書誌学の未来――読書と校勘
あとがき
【附録】 関係年表/中国皇帝年代表/参考図書/漢籍公開機関・ホームページリスト/中国の刊本の名称/清末北京城/紫禁城平面図/索引
●第6回ゲスナー賞 (主催 雄松堂書店)銀賞受賞
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